カミサマは新しいチートの楽しみ方をミツケマシタ

肉球は正義

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ヤット タビニデル

ミッション1-2 王子とエンカウント

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あっという間に過ぎた数日。
悩みに悩んだ俺のワンポイントアクセサリーは、ブルーローズを描いたステンドグラス風のブローチ。小ぶり。
旅人キャラがよく着てそうなマントの内側、けどチラッと見えそうな胸元につけてる。

妹には同じもののペンダントタイプを買って、服の中にしまわせた。

「んー、そろそろかな?」
「ええ。予定では」
ソワソワとした素振りを見せながら、女の子は時々ぴょこっと跳ねて最前列を窺う。
「…馬車が見えたら、抱っこしたげようか?」
イタズラの前振りのように言えば、女の子は頬を染めて困ったように笑った。
「もうっそれは恥ずかしいですってば!」
「えー?だいじょぶだよ♪みんな気にしないよ♪」
王子様の馬車に気取られてね♪と付け足せば、女の子の頬はさらに赤くなる。

仕草といい、表情といい…ほんっとにカワイイなあ!と叫びたいのは心の中だけにしておいて、俺は女の子の答えを待つ。
「それでも、ダメ、ですっ」

はい、かわいー。両手で頬を押さえて上目遣いとか、俺のハートをキャッチでーす!


◆  ◆  ◆


…兄と女の子と一緒に来たはずの王子御一行の馬車が来るという街の広場。

気付いたら、私は1人で最前列に流されていた。
いや、兄がそうなるようにしてくれたのかもしれないが…。
王子の到着を待ちわび、キレイな化粧と衣装で飾る女性たちの中、旅人です!とひと目で分かるような格好の私は浮いている。すごく…!

たまに感じる視線。小声なのに耳に届いてくる、どいてくれないかしら?的な言葉の数々。

どっ、退けるもんなら退いてるから!
一歩でも前に出たい他の人たちからギュウッギュウ!に!押されているのを、カミサマから教わった神力発現の初歩・自己強化で耐えてる最中なんだよっ!
こんなんで退けるか!むしろ後ろから順に一歩ずつ下がって!
ええいっ女子力(物理)はバケモノかっ!

あ、神力発現っていうのは、ファンタジー用語の魔法と同じ意味でいいらしい。だけど、一応『神力』って名前だから、ちょっとだけ変えてみたらしいっ!

うん!押しに耐え過ぎてひとりごとを言ってないとやってられない!…とか、余計なことを考えてはいけなかったようです。

集中力と自己強化が同時に切れて、私の身体は女子力(物理)によって前方へ飛ばされ、運悪くやって来た王子の馬車に轢かれそうになった。

いや、正確には王子の馬車は異変に気付いて止まってくれたし、私自身はすっころんだお陰で馬車がかすったわけでもないから無事なわけだが…。

「貴様!列を乱すとか何事か!分別をわきまえよ、との御触れを忘れたか!」
「よせ。女性を怒鳴るものではない」
「王子、しかしっ」

気まずくて起きたくない!!いっそ気絶するくらいの勢いで地面に頭突きすればよかった!


◆  ◆  ◆


「あらやだ」
一部始終を見ていた俺の口から出たのは、驚きとも呆れとも聞こえる声音だった。

だが計画通りだ。
女の子のことはさりげなく俺が捕まえているし、妹には馬車を止めてもらえたし。あとはこの展開でどう話を広げるか、だな。

魔法の本だと、この時に王子が怪我をして治るまでの間、女の子にメイド役を勤めさせて恋が芽生える…だったか?
ほんで幼馴染男子が置いてかれて、妹を怒鳴ってるおっさんが失恋する騎士、か?

って、ああ!

「い、妹さん、馬車に乗せられてしまった、の?」
俺の隣でぴょんぴょん跳ねていた女の子は、微妙に事態を把握できておらず、去って行く馬車と俺を交互に見た。
「みたいだ。俺、追いかけるよ!」
女の子に、お出迎えの邪魔しちゃってゴメンな!と言い残して、俺は走る。

幸い、街を歩き回ってる時に、王子御一行が滞在する屋敷の場所を教えてもらったから、追いかけるのは難しくない。
身体能力強化を発現させれば、神力の使い方の肩慣らしにもなる。
問題は…。

妹の処遇と、騎士のおっさんの顔が好みじゃなかったことくらいだ!


◆  ◆  ◆


本当に、気絶すればよかった。
「すぐに医者が来る。それまで横になっているといい」
「ごめぃっ」
噛んだよ…。
「ごめいわくを、おかけします」

デコから血が出ているってだけなのに、私は王子の好意によって、お屋敷まで連れて来てこられてしまった。
これがライトノベル的でくすぐったい。

部屋までは銀髪緑眼の執事さんにお姫様抱っこしてもらった。
視界の揺れの中でも分かる。執事さんのイケメンっぷり。

ごちそうさまです。ありがとうございました。
でも、ちょっとかんがえるのにつかれたので、まぶたとじます。
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