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ヤット タビニデル
ミッション1-5 なるほどどうしてくれようか
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こじんまりとした部屋のベッドに放り投げられた私。バツの悪そうな顔で私を見ているおじ様。
なるほど。これってアレだな、ライトノベルの王道か?
「おじ様、あなたが情報屋なんですか?」
違ったらどうしようか。実は隠し扉があっておじ様は案内役で情報屋が出てきたりするの?
「……ああ。つっても、そこらのやつより持ってるモンの正確さが違うだけだ」
ガシガシと乱雑に頭を掻く仕草に、どことなく色気を感じるのはカミサマが選んだ相手だけある。ということなのかもしれない。
「で?おガキさまは」
ベッド放り投げられたままの体勢でいる私に、おじ様がゆっくり歩み寄ってくる。
「何のハナシをご所望で?」
ギシ、とベッドが音を立てる。おじ様が私に覆い被さってきたからだ。
身体が緊張にこわばるのと、おじ様が妖艶な笑みを見せたのは同時だった。
あー…。これが迫られる、というやつかー。うんー。…なぜかな?ときめかない。
いや、突然のことに声は出ない辺り緊張はしているんだ!してはいるの!だけど、その先が…やけに静かだ。
これがライトノベルなら、今頃ヒロインはドキドキと胸を高鳴らせたり、顔を赤くして相手にからかわれたり、むしろいきなり襲われてヒーロー参上!とか、そんな感じになるはずだ。
なのに、私にはそのどれもが当てはまらない。
おじ様の顔をしっかり確認して、状況も分かっているつもりで、ここはベッドで。
甘い期待も、ライトノベルのような展開にしてみようなんて好奇心もない。
ただ。あ、こういうものなんだ。
それがもっとも正しくこの場における私の心情を表す言葉だ。
◆ ◆ ◆
さすがにコーヒー4杯は止めよう。
そう思った俺は飲食代を支払って、王子一行のいる屋敷への坂を登り始めていた。
魔法書によれば期限は1週間。王子が街に到着した日を含めてるんなら、あと6日。
まずは接点を作らにゃなあ。
とは思うが、最初の作戦は成功の失敗。王子に妹の印象を強く?与えられたかもしんないが、おっさん騎士に敵視されてしまった。
あの手のは最後まで疑ってきて煩わしいか、案外コロッと手のひらを返すのがラノベ的には定石だ。
「ふーん」
ゆるゆると坂道を登っていくと、ふと拓けた場所があった。
昨日は夜だったし、屋敷にしか興味がなかったせいだろうけど、屋敷より2つか3つ低い場所にそこそこの広さを持った広場?といえばいいか。んまあ、そんな感じのスペースがある。
そして、そこでおっさん騎士が街を見下ろしていた。
え、何してんの?警備?警備だよね?もしかしなくても俺のこと見てたんだろ?なのにどうしてこっちを見ない?
実は見ているようで見ていなかった、とか?…ハシビロコウかあんたは!
ハシビロコウは置き物と間違われちゃうくらい動くことが少ない鳥類、だったかな!ちょっと有名なんだぞ!
「やはり、来たか…」
もんのすごく重そうな溜息を吐いた後、おっさん騎士は俺の方へ向き直る。
何だよ、動くのかよ。そこは俺が話しかけるまで待っててよかったのに。
「目的は分かっている。そんなに妹を王子『俺は執事さん狙いなんだ。あと妹はやらん』
おっさん騎士のセリフに割って入って、俺はドヤ顔で腕組みをしてみせた。
「そういうわけで執事さんの好みなど、聞かせてもらおうか」
「……………………は?」
は?じゃねえよ。妹はやらんぞ!!
◆ ◆ ◆
「ただいまー」
「おかえりー」
夜、宿の部屋に戻って来た兄を、一足先に戻っていた私が迎える。
「どしたー?なんか、ぐったりしてるぞ?」
兄は上着を脱いでハンガーに掛けながら、ベッドに大の字になっている私に声をかけてくれる。
「情報屋のおじ様にさー。押し倒されたんだけどさー。…ときめかなかったんだよ」
王子様も執事さんもおじさま騎士も、情報屋のおじ様だって、見ているだけなら格好いいとかステキとか、色んな感情がわいた。なのに、いざその人と私個人だけで心を向き合わせようとした途端、私の心は拒否してしまった。
「ちぃょっとまてぇい!」
「なに?」
「なに?じゃないだろ!何で押し倒されたりなんかっ」
あ、うん。言い方が違った。実際には覆い被さられただけだよ。
どうしたら的確にこの面白さをつたえられるんだろうって顔をしたあと、兄はよろよろとベッドに腰掛けた。
「…印象は?どうだった?妹的には」
「良くも悪くも、誰もが鑑賞。こう、乙女?女?として見られたい!っていうのが、ない…」
でも、情報屋のおじ様に酒場の手伝いをする約束なんかは取り付けてみた。なんでも女の子がお使いで来たり、臨時のバイトに入ることがあるそうな。
これは居座って動向を探ったりするのがお得でしょう。
◆ ◆ ◆
ぐったりしながら、それでも何かをしようとする妹。俺は見栄切ったし、妹には妹なりの最初の恋ってものをしてもらいたいから、無理させてるのが心苦しい。
まあ、俺の恋もまだといえばまだかもしんないが。俺は、カミサマを見た時に魅入られた。このヒトになら、いい。カラダを許してもいい。そう思ったから、多分、恋はしたと思う。
その後あれよあれよと言う間に関係まで持ったし、それを気持ちいいとも感じた。
あー、ニンゲン、ああいうのを貪るっていうのかね。あの時の熱はしっかり覚えてる自分がちょっとだけ悔しい。
気持ち良すぎるのも問題だよ。何度、意識飛ばしたか、わっかんないんだもんなあ…。
「そっか、そんじゃ女の子の情報が入ったら教えてな♪」
俺はニカッと笑って、妹の頭を撫でる。
「俺も、よう分からんが、おっさん騎士と剣の稽古するとこになったからさ」
「なんで?」
そう言った妹の顔は、怪訝そうだった。
なるほど。これってアレだな、ライトノベルの王道か?
「おじ様、あなたが情報屋なんですか?」
違ったらどうしようか。実は隠し扉があっておじ様は案内役で情報屋が出てきたりするの?
「……ああ。つっても、そこらのやつより持ってるモンの正確さが違うだけだ」
ガシガシと乱雑に頭を掻く仕草に、どことなく色気を感じるのはカミサマが選んだ相手だけある。ということなのかもしれない。
「で?おガキさまは」
ベッド放り投げられたままの体勢でいる私に、おじ様がゆっくり歩み寄ってくる。
「何のハナシをご所望で?」
ギシ、とベッドが音を立てる。おじ様が私に覆い被さってきたからだ。
身体が緊張にこわばるのと、おじ様が妖艶な笑みを見せたのは同時だった。
あー…。これが迫られる、というやつかー。うんー。…なぜかな?ときめかない。
いや、突然のことに声は出ない辺り緊張はしているんだ!してはいるの!だけど、その先が…やけに静かだ。
これがライトノベルなら、今頃ヒロインはドキドキと胸を高鳴らせたり、顔を赤くして相手にからかわれたり、むしろいきなり襲われてヒーロー参上!とか、そんな感じになるはずだ。
なのに、私にはそのどれもが当てはまらない。
おじ様の顔をしっかり確認して、状況も分かっているつもりで、ここはベッドで。
甘い期待も、ライトノベルのような展開にしてみようなんて好奇心もない。
ただ。あ、こういうものなんだ。
それがもっとも正しくこの場における私の心情を表す言葉だ。
◆ ◆ ◆
さすがにコーヒー4杯は止めよう。
そう思った俺は飲食代を支払って、王子一行のいる屋敷への坂を登り始めていた。
魔法書によれば期限は1週間。王子が街に到着した日を含めてるんなら、あと6日。
まずは接点を作らにゃなあ。
とは思うが、最初の作戦は成功の失敗。王子に妹の印象を強く?与えられたかもしんないが、おっさん騎士に敵視されてしまった。
あの手のは最後まで疑ってきて煩わしいか、案外コロッと手のひらを返すのがラノベ的には定石だ。
「ふーん」
ゆるゆると坂道を登っていくと、ふと拓けた場所があった。
昨日は夜だったし、屋敷にしか興味がなかったせいだろうけど、屋敷より2つか3つ低い場所にそこそこの広さを持った広場?といえばいいか。んまあ、そんな感じのスペースがある。
そして、そこでおっさん騎士が街を見下ろしていた。
え、何してんの?警備?警備だよね?もしかしなくても俺のこと見てたんだろ?なのにどうしてこっちを見ない?
実は見ているようで見ていなかった、とか?…ハシビロコウかあんたは!
ハシビロコウは置き物と間違われちゃうくらい動くことが少ない鳥類、だったかな!ちょっと有名なんだぞ!
「やはり、来たか…」
もんのすごく重そうな溜息を吐いた後、おっさん騎士は俺の方へ向き直る。
何だよ、動くのかよ。そこは俺が話しかけるまで待っててよかったのに。
「目的は分かっている。そんなに妹を王子『俺は執事さん狙いなんだ。あと妹はやらん』
おっさん騎士のセリフに割って入って、俺はドヤ顔で腕組みをしてみせた。
「そういうわけで執事さんの好みなど、聞かせてもらおうか」
「……………………は?」
は?じゃねえよ。妹はやらんぞ!!
◆ ◆ ◆
「ただいまー」
「おかえりー」
夜、宿の部屋に戻って来た兄を、一足先に戻っていた私が迎える。
「どしたー?なんか、ぐったりしてるぞ?」
兄は上着を脱いでハンガーに掛けながら、ベッドに大の字になっている私に声をかけてくれる。
「情報屋のおじ様にさー。押し倒されたんだけどさー。…ときめかなかったんだよ」
王子様も執事さんもおじさま騎士も、情報屋のおじ様だって、見ているだけなら格好いいとかステキとか、色んな感情がわいた。なのに、いざその人と私個人だけで心を向き合わせようとした途端、私の心は拒否してしまった。
「ちぃょっとまてぇい!」
「なに?」
「なに?じゃないだろ!何で押し倒されたりなんかっ」
あ、うん。言い方が違った。実際には覆い被さられただけだよ。
どうしたら的確にこの面白さをつたえられるんだろうって顔をしたあと、兄はよろよろとベッドに腰掛けた。
「…印象は?どうだった?妹的には」
「良くも悪くも、誰もが鑑賞。こう、乙女?女?として見られたい!っていうのが、ない…」
でも、情報屋のおじ様に酒場の手伝いをする約束なんかは取り付けてみた。なんでも女の子がお使いで来たり、臨時のバイトに入ることがあるそうな。
これは居座って動向を探ったりするのがお得でしょう。
◆ ◆ ◆
ぐったりしながら、それでも何かをしようとする妹。俺は見栄切ったし、妹には妹なりの最初の恋ってものをしてもらいたいから、無理させてるのが心苦しい。
まあ、俺の恋もまだといえばまだかもしんないが。俺は、カミサマを見た時に魅入られた。このヒトになら、いい。カラダを許してもいい。そう思ったから、多分、恋はしたと思う。
その後あれよあれよと言う間に関係まで持ったし、それを気持ちいいとも感じた。
あー、ニンゲン、ああいうのを貪るっていうのかね。あの時の熱はしっかり覚えてる自分がちょっとだけ悔しい。
気持ち良すぎるのも問題だよ。何度、意識飛ばしたか、わっかんないんだもんなあ…。
「そっか、そんじゃ女の子の情報が入ったら教えてな♪」
俺はニカッと笑って、妹の頭を撫でる。
「俺も、よう分からんが、おっさん騎士と剣の稽古するとこになったからさ」
「なんで?」
そう言った妹の顔は、怪訝そうだった。
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