狂ったセカイで踊りましょ☆

肉球は正義

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どっかのセカイで

どこか かこで

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「ごめんなさい…約束、したのに」
ガタンと音がして、女性は倒れた。
「もう、時間がないみたい」
振り絞る声がかすれて、小さくなっていく。
「もう1度、あなたの声を聴きたかった…謝り、たか、た」
目蓋を閉じた女性。
その目蓋が開くことは、ない。

時は遡る。
彼女がまだ若く、美しかった時代まで。
彼女は優秀な科学者だった。

◽︎  ◽︎  ◽︎

「おはよう!今日もいい実験日和ね♪」
満面の笑みを見せた彼女に見惚れつつ、おはようと返せば、彼女に腕を掴まれて実験室へと連れて行かれる。

「まずは、日課のサンプルチェックでしょ?それから検体の培養液の改良、のための資料作り!あとあと!」
腕を引っぱりながら、彼女は今日の予定を話す。やりたいこともやることも山積みなのだ。

彼女は、いや自分も含めて。
この研究所にいる人間は全て、滅んだ文明、生物に関する研究をしている。
代表的なものはドラゴンだ。
かつて陸海空の覇者であり続けたソレらは、他の幻獣と呼ばれる生き物たちと同時期にこの世界から命を消してしまったとされている。

理由は不明。
ただ、偶然に発見された壁画とドラゴンのものと思われる頭蓋骨が、研究所が設立されるキッカケになった。
それから何世紀にも渡って研究は続けられているが、目立った成果はゼロ。
強いて挙げるなら、近年やっと培養液が完成したと言えるレベルになったことと、取り出せた核細胞の保存ができていることくらいだ。

幻獣同様に研究対象である魔術は、文献を読み漁っても訓練しても、成果のせの字も出ないと聞く。
それでも研究を続けるのは、ロマンがあるか。これに尽きる。

「ねえ?聞いてた?」
ふと彼女の足が止まり、チラリと鋭く見つめられる。

素直に聞き流していたことを謝ったが、話題は次の休日にまで進んでいたらしい。
「せっかくのデートなんだから!楽しませたいな~とか、サプライズしちゃうためのリサーチはないの?」
そう言って彼女はむくれた。

ううん、女心は、わからない…。
あとさり気なくプロポーズをねだられた気がする。
恋仲になって随分経つし、お互いに結婚願望もある。だけど研究研究また研究で、休日にデートを楽しむヒマくらいないのも事実だ。
それを分かっているから、多分だけど、そんな風に聞こえるし言ってしまうのかもしれない。

期待してるの、させたいんだってね。
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