平凡なラブストーリー

H君

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2話

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いつもの通路をいつもの警備員さんに挨拶をして、いつもの休憩室の扉を開く。
今日は暇なせいか、早めに休憩をとっている人達も多い。
出来れば隅っこがいい。
1人でゆっくりランチをするのが好きな私。
空いてる所は……と探していると……

一つだけあった。
自動販売機が近い窓ぎわの席だ。
隣と前は2人分あいてるちょうどいい所。
とてもよい場所を見つけ、上機嫌で席に向かう私。

その時、スッと男が私を抜かして、その席にショッピングモール系列のスーパーの袋を置いて座った。

あっけなくとられる私……

いつの間出没したの?!今の男!

ショックで呆然としていると次々と席が埋まって行く。
仕方なく私も近くの空いた席に座った。

落ち着かない……
  
回りに座っている人はスーパーのパートのおばさん。
私は一人暮らしでショッピングモール系列のスーパーで買い物をする事も多いため、顔見知りな人も多い。
無視は出来ず、「暇ですねー」なんて会話をしながらお弁当を広げる。
あぁ……このサンドイッチを食べながらスマホでゲームが最近の私の癒しだったのに……

「あら、香奈ちゃん、飲み物は?スープがお茶がわり?」

一人でヘコんでいるとスーパーのパートのおばさんの指摘で初めて気づいた。

「あっ!忘れちゃった!…自販機でお水買ってきます」

「 はーい、いってらっしゃーい」

おばさんに見送られ、自販機へ。
自販機……といえば、さっきの憎たらしい男が座っている席がある所だ。
チラリと視線を向けると。

あれ?いない?

と思ったらヤツは自販機にいた。

また、先を越された!!
別にヤツが悪いわけじゃない。
タイミングが悪いだけだけど……
そう思わないと、こういう時は何故か相手に悪意を向けてしまう。
仕方なしにその人の後ろで順番を待つことにした。
もう一つの自販機は紙コップタイプだからお水が買えないから。

待つこと数十秒……

まだ?

飲み物買うのに何モタモタしてんの?
チラッと前を覗いたら、この人!十円玉数えてる!!
15枚位さっさと数えてくれるか、順番を譲ってくれたらいいのに!
プチイライラしながら待つこと更に数秒。
最高潮に達する前にやっとボタンを押した。
と思ったら、

「あっ……間違えた……」

とポツリ。
呆気に取られると同時にまたイラつきは復活。

はーやーくーしーてーよー!!

かなりイライラしてきたトコで、私の前に出されたペットボトルの黒い炭酸飲料。

「これ、どうぞ」

やだ……なかなかの低音イケメンボイスじゃない。
じゃなくて、

「えっ?」

「間違えて買ったんで良かったらどうぞ」

「いや……でもお金……」

「いっすよ、それぐらい」

「いやいや、そういうわけには!」

そう言い合ってる内に小銭をお財布から出し、ちゃんとお水を買えたみたいだ。

「スーパーまで昼メシ買いに行ったのに飲み物忘れたんですよね
飲み物無しで食えるかなー?と思ったんすけど、やっぱり無理で
ホント、間違って買ったから気ぃ使わなくていいですよ」

うん、そうだね。
天丼にコロッケの組み合わせは飲み物いるよね。
どうやら、この子は少し変わった男の子のようだ。

「じゃあ……どうもありがとう……」

「どういたしまして」

そう言ってゴクゴク水を飲む。
プレゼントは嬉しいけどね。
炭酸飲料は君みたいにゴクゴクいけないよ。
その場を去る時、チラリとその男の子の顔をみる。
見るからに年下……2つ位かな?学生?ちょっと茶系で、長くもなく短くもなくて、男らしいというよりは中性的。
あっ、綺麗な二重だ。
いいな、私、奥二重だから。
学生時代、クラスにこんな男子がいたら人気がありそうな感じ。

…って、見過ぎだ、私。
盛ってるって思われたら嫌だから、とっとと席に戻ろう。
今度会ったらお礼にお水でも奢ろうかな。
名前も売り場も知らない男の子相手には勇気がいるけれど。
その後、席に戻ったら一部始終見てたパートのおばさん達に「若い子は得ね~」とおばさん達独特の世間話に付き合わされ、騒がしいランチタイムは終わった。

まさか、この後この変な男の子とあんな再会を果たし、あんな事になるんだとは思いもしなかったけど……
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