勇者の生徒会

九龍拓実

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プロローグ

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 湿った匂いが鼻についたので、外を見ると、シトシトと雨が降り出していた。窓についた水滴が重力に引っ張られて自分のいた痕跡を残しつつ、下へと落ちていく。
 私はこの光景をつい最近見たような気がした。この手にはペンではなく、剣が握られていた時の記憶まで遡る。確か水滴は無色ではなく、鮮やかな赤色だった。その落ちる水滴の出元には、魔物にやられた人間だったものが壁に打ち付けられていて、ピクリとも動かなかった。
 あの時の私はそれを見てどう思ったのだろうか?どうしてもそこが思い出せない。あんなにも特異的な状況なはずなのに。恐怖やら、憤怒やらの感情すら思い出せない。
 そこで気づいてしまった。自分はとうに人間という事を投げ捨てていたことに。
 今、見下ろすと校門に向かって走る少年少女たちと自分はまた異なる存在なのだという事を忘れてしまっていた。
 自重するように笑ったのち、すぐに泣きたくなった。しかし涙はこぼれない。代わりに空が泣いているのを見続けるしかできないのだ。
--こんな感情は雨では落ちてはくれない
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