勇者の生徒会

九龍拓実

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第1部 生徒会の危機

一時限目 始まっていきなり大ピンチというのは割とありがちなのだが、あえてその流れに乗るのも一興なのではないかと思うのです。

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「生徒が生徒による生徒のための学園生活」
 どこかで聞いた事があるような言葉をパクっ……オマージュした学園理念の『#満央_まんおう__#学園』。
 その学園理念の通り、学園生活はほぼ全てが生徒主導で行われている。文化祭や体育祭はもちろんのこと、部活の予算や修学旅行の旅程。挙げ句の果てには購買の販売する商品までもが生徒で決めてしまうというあまりにも自由すぎる校風だ。その決め事の中心にいるのが生徒会で、ここが自由が行き過ぎないようにコントロールをして、なおかつ不平不満が出ないようにしている。
 俺、白鷺賢一郎しらさぎ けんいちろうは、学年トップレベルの成績じゃないと入閣できないと言われているこの生徒会に、必死で勉強をし、去年に一年生ながらに副会長に抜擢されたのだが……
「我が学園始まって以来の大異変です!!」
 バァンと机を叩くと丁寧に結われた赤色ツインテールがピョンと飛び上がった。入学式の後すぐに行われる学力判定試験で5科目全てでクラストップで、間違えたのは数学の一問だけというチート並の正答率を見せた才女、稲瀬由香里いなせゆかり。彼女は『満央学園マニア』を自称しており、彼女が産まれる前にこの学園で起こった事ですら詳しく知っている。そういう彼女がいうのだから間違いなく大異変なのだろう。
 しかし、こちらも頭を抱えてしまうほどの問題に直面していて、それどころではない。
「この満央学園において、生徒代表とされている我々、生徒会の支持率がここ数日で急降下しています!」
 なるほどそれは大変だ。しかし、それ以上に大変な事態が、俺の脳内を走り回っているから、その話は後で……
「聞いてますか、白鷺副会長!!」
「お、あ、はい……すみません」
 とりあえず、聞き流していた事を謝ると、まさにプンプンといった効果音が似合いそうなくらいに怒っていた。--ツインテールが。
「ちゃんと聞いてくださいよ。全く……。それで、原因なんですが、やはりこの前の文化祭における各出し物における予算削減において不満が噴出したかと思われます」
 確か、この前の各クラスや部活の代表を集めた会議において、会計課から各クラスの出し物の予算組みを昨年から二割ほど削減するって発表したんだったか。あの時は、生徒会室で待機してた俺達が緊急出動するレベルで大荒れしたんだっけ?
「それと……副会長にはお伝えしにくいですが、それに合わせて、二年の副会長という異例な入閣の不満が三年の先輩方中心で再燃してしまってるようです……」
「それは昨年からだし、多分俺もほど相手の立場になればそう思ってしまうさ。無理もないよ」
 この満央学園生徒会というのは、その立場や役割からか、他の生徒会とは比較にはならないほどの特権が付いてくるという事を、入った後に知った。内申や推薦など、大学進学にはあまりにも有利すぎる事が多すぎる。
 故に、入閣した人間は主に三年から嫉妬の視線を集めがちなのである。
 これはこれでなかなか厄介な問題なのであるのも確かなようだ、と考えていたら、目の前で稲瀬がしょんぼりとした顔を見せていた。そこまで難しい顔をしたつもりはなかったのだが……
「ま、まあ。それに関しては一種のアンチ活動のようなものだ。俺たちがどうこうできる問題ではないよ。そんなことよりもやはり予算の問題はどうにかしないとな」
「そうですね、とりあえず会長が来たらこの話を……」
「会長……か……」
 そう言って俺はフッと蔑むように笑った。
「なんで、そんなに『おめー、触れちゃならねぇとこに触れちまったな……』的な表情を見せるのですか?」
 まさしくその通りだから、何も言えない。俺は一枚の紙を稲瀬に向かってスッと差し出す。
「え? こ、これですか? どれどれ……って、えーー!?」
この紙を見つけた俺とほぼ変わらぬ驚き方を見せた。違うのはツインテールがもう生き物を通り越した何かのようにぐるぐる回ってるくらいしかわからない。稲瀬は愕然としたように紙を落とす。その紙には、頼みの綱として頼るはずだった会長の達筆な字で『失踪します。決して探さないでください』と書かれていた。
「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょ」
動揺のあまりに突然「ちょ」の二文字のみでビートを刻み出す稲瀬。それに合わせてツインテールがピコピコピコと跳ねている。というか、俺はさっきからツインテールが気になりすぎているのではないだろうか?
「どぉぉぉぉするんですかぁぁ!! 前代未聞ですよ!! 現役の生徒会長が任期中に失踪って!!」
「と言ってもその本人は俺が来た時にはすでに紙が置かれてたしな」
 生徒会云々より、学校的には自分が通っている学校の生徒が失踪して問題にならないのだろうかとは思いもしたが、兎にも角にも生徒会が未曾有の大危機に陥ってるのは間違いないようだ。
「会長不在は流石にまずい……とにかく代理の人間を立てるしか……」
「それなら白鷺副会長がそのまま昇格すればいいのではないでしょうか?」
「それは一度は考えたが、駄目だ。支持率が落ちている今、その原因である俺が会長に就任したら根も葉もない噂が蔓延してしまい、それこそ生徒会の失墜になりかねない。ならば代理の人間を立てるのがビターな選択なはずだ」
 代理の人間を立てるとした場合、俺が副会長の座に就任した時の状況とは違い、年度が変わったこともあり、受験を控えている三年からは選ぶことはあまり良くないことだろう。逆を言えば二年が就任することに何の違和感もないということだ。
「今から二年の名簿をひっくり返してリストアップするぞ! 今週末には面談をして、月曜の全校朝礼に間に合わせる!」
「は、はい! 職員室から名簿もらって来ます!」
 そういうと、稲瀬は生徒会から飛び出し、職員室へと駆けて行った。俺はその足音を聞きつつ、ため息をつきながら窓から外を見る。曇天の空が今か今かと自分の出番を待っているように見えた。
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