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最終話 幻想の世界へ
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「あと、ほんの少しくらいいいだろ……?」
僕は朦朧としながら答えたと思う。
「駄目だ。これ以上は本当によくないことが起こる」
白衣を着た紳士そうな男は言葉する。
「君に精神疾患はないし、これまで通りの日常を送っても何ら問題はないんだ」
こいつはただのヤブ医者だ。僕はきっとどこかおかしいに決まっているんだ。
「はぁー……たく……」
どこかめんどくさそうにヤブ医者はため息を吐く。
「明日。もう一度。最初から話をしよう。あの日に起こった出来事を最初からもう一度一緒に話をするんだ? できる?」
僕の答えは力なく頷くしかない……
その後はフラフラと歩いていたことしか覚えていない……杖を突いて歩きにくそうに……
煩いセミの鳴き声に気がつかされると、そこは誰もいない夏の公園のベンチ。そのベンチに座り、雲一つない青空をじっと見つめるだけだった……僕のいつもの日常の日々になっていた……
気がつくと僕はアリサの診察室にいる。目の前には氷室がカルテを見ながら怪訝そうにしかめっ面をしていた。
「僕が思うに君には精神疾患の類は見受けられないと思う」
氷室は言う。そんなの自分でも知っているし、わかっている。
「確かにあるんだよ。列車に乗った先は大きな暗い湖があって、まだ病気が治っていないのに、たくさんの人たちが湖で溺れたんだ」
「その人たちがもがき苦しむ姿を見たのか?」
「み、見てねぇけど……」
氷室は笑みを零す。それは人を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「おかしいのかよ? 俺の言っていることが?」
「失礼。馬鹿にしたつもりはないが、人が水に溺れれば、普通はもがくものだろう?」
こいつが信じないのなら奥の手だ。
「優も見た。あいつに訊いてみろよ!」
「いや、結構。優には今まで散々嘘を吐かれている」
氷室はどこか僕を馬鹿にした様子でカルテを机の上に置いた。
「それより穂。君が最期に落ち着けたのはいつの日だ?」
「ど、どうして、そんなこと聞くんだよ?」
理由もわからずに僕は少しだけ狼狽えた。
どうして狼狽えたのか、自分にもわからない。
「ずっと落ち着いた日々なんてないんだろ? 安定剤を出しておくから、今夜はゆっくりと自室で休むといい」
氷室はカプセルの入った遮光瓶を机の引き出しから取り出すと、僕に手渡してくれた。
「これを飲んだら俺はどうなる?」
「ただの少しだけ強い安定剤。少しだけ現実に戻れるはずだ……僕が思うにだが……」
少しだけ。少しなら僕はいいと思った。
「飲むよ」
僕は安定剤とやらを口に入れると、氷室はご丁寧にグラスに入った水を差し出してくれる。
グラスに入った水を飲んだ途端に、薬が体の中で溶けていくのを感じた……
いつまでも暖かい日の光の中を歩いているようで心地がいい……
「きっと眠りさえすればいい夢が見られるはずだ。さぁ、部屋まで送ろう」
僕は氷室に手を引かれて診察室を後にした……ここは……この世界は明けない夜の世界のはずなのに……どこか日の光が差している幻覚を僕に見せている……
「あ、穂君」
診察室の外には優がいた。まるで僕のことを待ってくれていたかのように……
「ここは相変わらず暗いね」
当然だろ……ここは夜だけの不気味な世界なのだから……
「私は君のことが好き。ずっと好きだったの思い出した。恋だったのを思い出したんだよ!」
優の笑い声……頭の中で酷く響いた……
「……さぁ、もうすぐだ。もうすぐでベッドの上で横になれる……」
氷室の声が遠く感じた……暗闇の近い場所に僕はいるんだと確信する……
そこは天気のいい日だった。僕は杖を突きながら歩いていた……あの日からずっとこうだ……役立たずな足を引きずりながら、人気のない夏の公園を歩くと幻覚のあの子が、莉緒が両手を広げながら僕を待っているかのような錯覚に陥ることがある……
そういえば今日は診察の日のはずだ……相も変わらず憂鬱になるから……
僕は雲一つない青空を見上げる。夏の空は海のように蒼く綺麗なんだと理解できる。そんな思いがまだ僕には残っていた……
「俺は外科医じゃないし、カルテを見る立場にあるから告知するけど、君の足は二度と元には戻らないのは確定らしい。神経を酷く刺されているから、手術も無駄だそうだ。でも前にも言ったけどこれだけは正直に言える。君には精神疾患の類は診られない。自分の生きられる日々を探すんだ」
言い訳や綺麗ごとを並べていてもこいつの一人称は俺。まったく無作法だとは思わないのか……
「希望はある。これは本当だ。今からでも前向きにならないと」
こいつの妙に紳士ぶるところが本当に嫌いだ。
診察室にあった一枚の鏡。それは小さな鏡だ。そこには僕の顔が映っている。顔がズタズタに切り裂かれていて、自分でも吐き気がするほどだ……こんな僕にどうして希望がある……
「苦しいとは思うけど話してみてくれ、莉緒ちゃんや君に何があったのか」
僕はあんたが嫌いだから嫌だ。少しくらいなら話してもいいと思うけど、そのたびに莉緒が暗闇の中で笑う気がするんだ……
「私になら話せる? 穂君の悲しいことや嬉しいこといつまでも訊いていたい。この夜だけの世界でよければ」
暗い病室の中で優が立っていた。血のように赤い瞳がうっとりしたので優だとわかった。
「私がいつも飲んでいるクスリをもう一度飲んでみる? 少しは気分が良くなるかも」
また頭がグニャリとなるのは嫌だ。
「手だけ握ってくれよ。優を感じていれば落ち着けるし」
「いいよ。穂君がそう望むのなら」
優は僕の手を握ってくれる。不思議と僕は落ち着いてしまってその場に崩れてしまう……
「いつも一緒だよ。穂君のためにいるから」
優は手を握り続けてくれた……
「……聞かせてよ、莉緒に何があったのか……」
耳元で優が囁くから……僕は答えるしかない……
「無作法だな。今は診察中だ」
あの日、気が狂れる氷室が目の前にいた。莉緒が怯えた様子で今にも泣きだしそうなのがすぐにわかった。
「こいつはどうしようもない落ちこぼれだ。僕を選ぶんだ莉緒。そうすれば幸せが君を待っている」
「何やってんだよ!?」
僕は氷室に掴みかかる。すると右足に鋭い痛みを感じた。鋭いメスが僕の右足に刺さっている。
僕は床に崩れ落ちて痛みのあまりのた打ち回る。動くたびに右足の骨が刺さったメスの先によって傷ついているのがわかる。
「すまない莉緒。害虫が少し煩いけど、君は僕を選べばいい。僕だけを見つめればいいんだ」
氷室の曇りない微笑み。今にも莉緒を襲いそうだから……
「お願いだよ……その子に触らないでくれ……なぁ、頼むよ……!」
弱い叫び声しか僕には上げられなかった……
莉緒が汚れるのが嫌だから……
「煩いんだよ……この害虫め!」
氷室はどこか呆れたかの表情で僕を見て怒りすると、ふとあることに気づいたかのように目を丸くした。
「ずいぶんと綺麗な顔しているな。その顔のおかげで莉緒のことも信じさせたか? 君みたいな害虫には似合わないはずなのに……それで君のような落ちこぼれに惹かれている? もしそうだとしたら……僕は君のことが羨ましく思えるよ……!」
氷室は僕の右足に刺さったメスを力いっぱいに抜く。激痛が嫌でも右足。体全体に伝わっていく。
「傷だらけの顔で生きてみるといい。きっと不幸な毎日が待っているだろうから」
鼻歌を歌いながら氷室は僕の顔をメスを使ってズタズタに切り裂いていく……
痛みで我を忘れそうになりながらも。僕は怯える莉緒だけに手を伸ばした……
何も怖がることない……
帰ったら莉緒の好きなものたくさん作ってやる……
だから怖がる必要ない……
一緒に帰ろう……
だって好きなんだ。莉緒のことが。いつまでも大切なんだ。
怯える莉緒が少しだけ笑った気がしたから……だから僕は安心して瞳を閉じた……
我に返るとそこはアリサにある病室だった。僕にとって逃れられない幻想の場所だというのはわかっているのに……
暗い病室の古びた床には、嫌でも現実の代物がある。古びた一枚の新聞の切れ端が……
僕は拾うしかない……
「こんなの……俺はどれだけ読んだんだ……?」
もう何度も読んだことのある古びた新聞の切れ端を僕は再び読むしかない……
精神科医の狂行
男子高校生重症
女子中学生死亡
現役の精神科医が医療大時代に教材として購入したメスを使い男子高校生に重傷を負わせる
女子中学生の少女もメスで首を刺され搬送された病院で死亡が確認された
元精神科医は拘置所でタオルを使い自殺しており動機は不明のままだ
「何に誓えばいいのかわからないけど、そいつは僕じゃない。きっと僕じゃないんだ」
氷室が暗い病室に立っていた。
「君を傷つける気なんてない。もちろん優にだって……」
こっちの氷室が誰も傷つけることがないのは知っている……いや、わかっていたというのがきっと正しいんだ……
僕は嘆く氷室を後に、暗い病室から出ると、そこは病院の廊下のはずなのにどういうわけか食堂だ。
「莉緒は辛い死に方をしたね。それでも美しい死に方だったのかな?」
小首を傾げる優。食堂の椅子に座りながら妖しく笑い僕を見ている。
「ねぇ」
「……何だよ……?」
「あの夜行列車にはどんな意味があったの?」
訊いてくる優。
まるで精神科医かよ……
「それは……逃げられる場所がきっとあると思って……」
惨めに泣きながら僕は答えるしかない……
「たどり着いた場所はあの暗い湖。私はあそこで消えるはずだったのかな?」
「……優のことは微かに覚えていたと思うから……俺に優しく話しかけてくれた数少ない人だから……消えてほしくなかった……」
「あの暗い湖は何?」
僕が消えてなくなりたい場所だった……そう言葉にしたいのに……できない……
「この病院は何のためにあるの?」
全ては莉緒にもう一度だけ会いたいという思いだった……
「はは、君の答えはわかるよ。こんなイカレタ場所で君は誰に会えた? このままで本当に大切な人に出会えるの?」
僕をどこか見透かしたかのようにあざ笑う優。僕は俯くしかない。涙が床に零れ落ち続けるが、そこは男だから堪えるしかない……
顔の傷はこの世界にはなくて僕は、もっと自由でいいはずなのに……
「ここでは思い出すだけで出会えるはずなのにずっと怖いんだ。莉緒が今では幻想の大切な人でも、触れれば壊れる気がして怖いんだ」
この幻想の世界で僕は優を見つめる。
「なら、私は最初から壊れていてもどうでもよかったんだ」
そう、どうでもいいんだ……事故で死んだのは知っていたから……だから創り出した……僕に優しくしてくれた数少ない人を……
「壊れた私が嫌なら、また根暗な私に喜んでなるよ……」
違う。僕が出会いたいのは壊れた優でも根暗な優でもない……
ただ僕が愛し続けた人だけだ……
「……わ、私は牧村君とまた出会えたのが嬉しい……たとえ幻想の存在でも、と、とても、とても嬉しく思う……」
目元を金色の前髪で隠した優に変わる。僕が通う高校の女子の夏服を着ていたが、白いワイシャツは血だらけで、僕は呆然と彼女の姿を見つめるしかない。
「もう死んだんだろ? もういいから……俺の頭の中から消えてくれ……!」
そうはいかないと自分でもわかっている。優は僕に優しくしてくれた数少ない人だから、だからいつまでも僕の心の中に残り続ける……孤独で悲しい心の中に……
「り、莉緒のことがいい……? わ、私じゃやっぱりダメかな……?」
違う……
「す、好きだよ……穂君のこと……」
優はどこか頬を赤くさせる……
「だから! そんなのお前じゃないだろ?!」
僕が優に掴みかかろうとしたとき、目の前が真っ白に染まる。頭の中が空っぽになったかと思うと、次の瞬間には思考がはっきりとして、目の前には薄暗い色とりどりの花畑が広がっている。薄青い月の下で莉緒が僕のことを見つめている。
「この世界は何?」
僕に小首を傾げて訊いてくる莉緒。
「俺と莉緒がまたいられる場所にしたかったのに、したかったのに……邪魔する奴らが大勢いる……アリサの絵本だってそうだ……」
あんな子供向けの絵本。どこがいいんだか実は未だにわからない。
「みんなと一緒にはいられない? 穂は現実ではずっと寂しい思いをしてきたから」
薄暗い花びらが温かい夜風に吹かれて宙を舞う。
「俺は莉緒と二人だけでいたいんだ」
正直な思いを告げると、莉緒は嬉しそうに口元を微笑ませる。
そんなまじめに微笑んだこと無かったろ?
いつも無邪気な子供みたいに笑うお前しか俺は知らないはずなのに……
「少しだけ休もう……もう目を開けて……嫌ならまたここに帰ってくるといい」
莉緒は首から血を流し始める。僕は居ても立っても居られず、莉緒に駆け寄る……
目を開ければそこは蝉の鳴き声がする夏の公園だった。僕はベンチに座っている。一人の男の子が僕の顔を物珍しそうに見ているのに気がつき、僕がふと目をやると、男の子は泣き出しながら逃げていく。こんな傷だらけの顔じゃ怖いのが当たり前だ。
そうだ……僕にはこれが当然の日常になったんだ……現実の氷室に傷つけられた足と顔。僕は杖を突き、ベンチから立ち上がる。
「夏の青空なんて久しぶりに見るなー」
ずっと夜の世界ばかり見ていたから、見上げる青空が懐かしくて仕方ない。
夏の涼しい風の吹くベンチに座って、いつまでも、ずっと妄想を、いや、幻想を思い描いていたから……そりゃ、青空が懐かしいのも当然か。
そういえば今日は心療の日だ。約束は十時ごろだけどとっくに約束の時間は過ぎている。あの紳士そうな精神科医と会うのはやはり気が重い。どうか幻想の夜行列車でコーヒー係でもしていてくれ。
となれば今日やるこはなにもない。高校も自主退学したから勉学に励む必要もない。
莉緒のいない日常なんて何も楽しくない。せめて優がいてくれれば……
「ああ……だからアリサにいたのか……」
優が……サイコの優がアリサにいた理由がやっとわかった。僕が自分を寂しくさせないため。それだけで大人しかった彼女をサイコにしたんだと思う。
杖を突きながら僕はあてもなく歩きはじめる。顔に酷い傷があり、足だって引きずっている。すれ違う人たち皆が僕を異様な目で見る人もいれば、可愛そうな目で見る人や静かに笑う人もいた。
そういった目で僕を見つづければいい。心が傷つくだけならそれでいいのに……近くに莉緒がいないのは本当に寂しい……寂しいから幻想に僕は逃げてしまう……
「……次はどんな……どんな幻想を抱けばいいんだろう……?」
幻想。僕は孤独な現実で生きたくない。だから幻想に縋り付くしかない。それはいつまでも……
「根暗のままの優でいいか……? 前髪さえ切ったら……! あいつ綺麗な顔しているし……!」
道行く人たちが僕を不快な目で見ては通り過ぎていく。せめて大丈夫ですかの言葉がほしいのに、足を引きずり、顔にだって醜い傷のある僕に声をかける人は誰もいない。
「なら莉緒は! 殺されたけど、俺の中ではまだ生きているんだよ!」
気がつけば叫んでいた。どうにもならない怒りを口から出すかのように叫んでいた。
「ふざけんなよ! あんなアリサの病院なんて何の意味もねぇじゃねぇか! それなら莉緒と過ごした日々を……」
叫び終われば次には底知れない悲しさがこみ上げてくる。
「……僕にあの日々を返してくれ……好きだった莉緒との日々を……僕の幻想でもいいから……」
持っていた杖が地面へと落ち、僕はその場に崩れ落ちる……
誰でもいいから僕の願いを訊いてほしい……
誰でもいいから僕の悲しみを消してほしい……
莉緒にまた会いたい……
ここはどこなんだろう……? 気がつけば僕は薄暗い青空……朝が近いようなそんな空の下で一人立ち尽くしていた……
足の痛みもないし、顔を触れば醜い傷跡の感触もない。
ここが……この場所が幻想だと気づくと、僕は狂ったように笑う……苦しい現実なんてたくさんだ。ましてや莉緒のいない現実に何の意味があるのだろうか……?
「僕は幻想でいい。ここが居場所なんだ」
薄暗い青空の下で満足していると、見慣れない一人の少女が僕に向かって手を差し伸ばしているのが見えた。
「あなたの現実は、あなたにとって狂った世界でしかない。それでも幻想の世界なら、狂っていても、あなたにとっては幸せなものになるのかもしれない」
金色の髪をして赤い瞳をした少女。誰なのかが僕にはよくわかった……
「……アリサ……」
僕は静かにアリサの手を取る……
気がつけば僕は一人車椅子に座ってボーとしていた。それは薄暗い青空の下の草原で……
「薬が効いている。もう何も心配せずにこの世界にいつづけるんだ」
そばには氷室がいた。これは心配してくれているのか……? それかその逆で哀れな僕を心の中で蔑んでいる……? わからない……
「誰も蔑んでなんかいない。目の前を見て。ほら、空が青くなっていく。わかるよね?」
アリサがいた。美しい少女が指さす薄暗い青空は光が支配しそうだ……
「き、君は幻想に、い、いたほうがいいよ……私も現実は思い出しただけで、く、苦しいから……」
優がいた。前髪で目元が隠れた優……口元が笑っていた……
「わ、笑うのが苦手になってる……ど、どうしてだろう……でも、なんだか幸せ……」
僕が知っている……本当の君に近づいたんだ……本当の自分に……
「……キスしてごめん……ごめんなさい……」
僕は少しだけ微笑むことができた……本当は薬なんか効いてなかったら、君を選んでいたと思う……
「穂。苦しかったよね?」
莉緒が僕の手を握ってくれていた……
「苦しかったよね?」
苦しかったに決まってるだろ……お前のいない日々を現実で生きたから……
「ここで生きよう」
そうするに決まっている……
……僕はいったい……何度こんなことを繰り返している……?
光が差しそうな薄暗い青空を僕は見ているしかない……何度終わったか知らない幻想の世界で……
僕は朦朧としながら答えたと思う。
「駄目だ。これ以上は本当によくないことが起こる」
白衣を着た紳士そうな男は言葉する。
「君に精神疾患はないし、これまで通りの日常を送っても何ら問題はないんだ」
こいつはただのヤブ医者だ。僕はきっとどこかおかしいに決まっているんだ。
「はぁー……たく……」
どこかめんどくさそうにヤブ医者はため息を吐く。
「明日。もう一度。最初から話をしよう。あの日に起こった出来事を最初からもう一度一緒に話をするんだ? できる?」
僕の答えは力なく頷くしかない……
その後はフラフラと歩いていたことしか覚えていない……杖を突いて歩きにくそうに……
煩いセミの鳴き声に気がつかされると、そこは誰もいない夏の公園のベンチ。そのベンチに座り、雲一つない青空をじっと見つめるだけだった……僕のいつもの日常の日々になっていた……
気がつくと僕はアリサの診察室にいる。目の前には氷室がカルテを見ながら怪訝そうにしかめっ面をしていた。
「僕が思うに君には精神疾患の類は見受けられないと思う」
氷室は言う。そんなの自分でも知っているし、わかっている。
「確かにあるんだよ。列車に乗った先は大きな暗い湖があって、まだ病気が治っていないのに、たくさんの人たちが湖で溺れたんだ」
「その人たちがもがき苦しむ姿を見たのか?」
「み、見てねぇけど……」
氷室は笑みを零す。それは人を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「おかしいのかよ? 俺の言っていることが?」
「失礼。馬鹿にしたつもりはないが、人が水に溺れれば、普通はもがくものだろう?」
こいつが信じないのなら奥の手だ。
「優も見た。あいつに訊いてみろよ!」
「いや、結構。優には今まで散々嘘を吐かれている」
氷室はどこか僕を馬鹿にした様子でカルテを机の上に置いた。
「それより穂。君が最期に落ち着けたのはいつの日だ?」
「ど、どうして、そんなこと聞くんだよ?」
理由もわからずに僕は少しだけ狼狽えた。
どうして狼狽えたのか、自分にもわからない。
「ずっと落ち着いた日々なんてないんだろ? 安定剤を出しておくから、今夜はゆっくりと自室で休むといい」
氷室はカプセルの入った遮光瓶を机の引き出しから取り出すと、僕に手渡してくれた。
「これを飲んだら俺はどうなる?」
「ただの少しだけ強い安定剤。少しだけ現実に戻れるはずだ……僕が思うにだが……」
少しだけ。少しなら僕はいいと思った。
「飲むよ」
僕は安定剤とやらを口に入れると、氷室はご丁寧にグラスに入った水を差し出してくれる。
グラスに入った水を飲んだ途端に、薬が体の中で溶けていくのを感じた……
いつまでも暖かい日の光の中を歩いているようで心地がいい……
「きっと眠りさえすればいい夢が見られるはずだ。さぁ、部屋まで送ろう」
僕は氷室に手を引かれて診察室を後にした……ここは……この世界は明けない夜の世界のはずなのに……どこか日の光が差している幻覚を僕に見せている……
「あ、穂君」
診察室の外には優がいた。まるで僕のことを待ってくれていたかのように……
「ここは相変わらず暗いね」
当然だろ……ここは夜だけの不気味な世界なのだから……
「私は君のことが好き。ずっと好きだったの思い出した。恋だったのを思い出したんだよ!」
優の笑い声……頭の中で酷く響いた……
「……さぁ、もうすぐだ。もうすぐでベッドの上で横になれる……」
氷室の声が遠く感じた……暗闇の近い場所に僕はいるんだと確信する……
そこは天気のいい日だった。僕は杖を突きながら歩いていた……あの日からずっとこうだ……役立たずな足を引きずりながら、人気のない夏の公園を歩くと幻覚のあの子が、莉緒が両手を広げながら僕を待っているかのような錯覚に陥ることがある……
そういえば今日は診察の日のはずだ……相も変わらず憂鬱になるから……
僕は雲一つない青空を見上げる。夏の空は海のように蒼く綺麗なんだと理解できる。そんな思いがまだ僕には残っていた……
「俺は外科医じゃないし、カルテを見る立場にあるから告知するけど、君の足は二度と元には戻らないのは確定らしい。神経を酷く刺されているから、手術も無駄だそうだ。でも前にも言ったけどこれだけは正直に言える。君には精神疾患の類は診られない。自分の生きられる日々を探すんだ」
言い訳や綺麗ごとを並べていてもこいつの一人称は俺。まったく無作法だとは思わないのか……
「希望はある。これは本当だ。今からでも前向きにならないと」
こいつの妙に紳士ぶるところが本当に嫌いだ。
診察室にあった一枚の鏡。それは小さな鏡だ。そこには僕の顔が映っている。顔がズタズタに切り裂かれていて、自分でも吐き気がするほどだ……こんな僕にどうして希望がある……
「苦しいとは思うけど話してみてくれ、莉緒ちゃんや君に何があったのか」
僕はあんたが嫌いだから嫌だ。少しくらいなら話してもいいと思うけど、そのたびに莉緒が暗闇の中で笑う気がするんだ……
「私になら話せる? 穂君の悲しいことや嬉しいこといつまでも訊いていたい。この夜だけの世界でよければ」
暗い病室の中で優が立っていた。血のように赤い瞳がうっとりしたので優だとわかった。
「私がいつも飲んでいるクスリをもう一度飲んでみる? 少しは気分が良くなるかも」
また頭がグニャリとなるのは嫌だ。
「手だけ握ってくれよ。優を感じていれば落ち着けるし」
「いいよ。穂君がそう望むのなら」
優は僕の手を握ってくれる。不思議と僕は落ち着いてしまってその場に崩れてしまう……
「いつも一緒だよ。穂君のためにいるから」
優は手を握り続けてくれた……
「……聞かせてよ、莉緒に何があったのか……」
耳元で優が囁くから……僕は答えるしかない……
「無作法だな。今は診察中だ」
あの日、気が狂れる氷室が目の前にいた。莉緒が怯えた様子で今にも泣きだしそうなのがすぐにわかった。
「こいつはどうしようもない落ちこぼれだ。僕を選ぶんだ莉緒。そうすれば幸せが君を待っている」
「何やってんだよ!?」
僕は氷室に掴みかかる。すると右足に鋭い痛みを感じた。鋭いメスが僕の右足に刺さっている。
僕は床に崩れ落ちて痛みのあまりのた打ち回る。動くたびに右足の骨が刺さったメスの先によって傷ついているのがわかる。
「すまない莉緒。害虫が少し煩いけど、君は僕を選べばいい。僕だけを見つめればいいんだ」
氷室の曇りない微笑み。今にも莉緒を襲いそうだから……
「お願いだよ……その子に触らないでくれ……なぁ、頼むよ……!」
弱い叫び声しか僕には上げられなかった……
莉緒が汚れるのが嫌だから……
「煩いんだよ……この害虫め!」
氷室はどこか呆れたかの表情で僕を見て怒りすると、ふとあることに気づいたかのように目を丸くした。
「ずいぶんと綺麗な顔しているな。その顔のおかげで莉緒のことも信じさせたか? 君みたいな害虫には似合わないはずなのに……それで君のような落ちこぼれに惹かれている? もしそうだとしたら……僕は君のことが羨ましく思えるよ……!」
氷室は僕の右足に刺さったメスを力いっぱいに抜く。激痛が嫌でも右足。体全体に伝わっていく。
「傷だらけの顔で生きてみるといい。きっと不幸な毎日が待っているだろうから」
鼻歌を歌いながら氷室は僕の顔をメスを使ってズタズタに切り裂いていく……
痛みで我を忘れそうになりながらも。僕は怯える莉緒だけに手を伸ばした……
何も怖がることない……
帰ったら莉緒の好きなものたくさん作ってやる……
だから怖がる必要ない……
一緒に帰ろう……
だって好きなんだ。莉緒のことが。いつまでも大切なんだ。
怯える莉緒が少しだけ笑った気がしたから……だから僕は安心して瞳を閉じた……
我に返るとそこはアリサにある病室だった。僕にとって逃れられない幻想の場所だというのはわかっているのに……
暗い病室の古びた床には、嫌でも現実の代物がある。古びた一枚の新聞の切れ端が……
僕は拾うしかない……
「こんなの……俺はどれだけ読んだんだ……?」
もう何度も読んだことのある古びた新聞の切れ端を僕は再び読むしかない……
精神科医の狂行
男子高校生重症
女子中学生死亡
現役の精神科医が医療大時代に教材として購入したメスを使い男子高校生に重傷を負わせる
女子中学生の少女もメスで首を刺され搬送された病院で死亡が確認された
元精神科医は拘置所でタオルを使い自殺しており動機は不明のままだ
「何に誓えばいいのかわからないけど、そいつは僕じゃない。きっと僕じゃないんだ」
氷室が暗い病室に立っていた。
「君を傷つける気なんてない。もちろん優にだって……」
こっちの氷室が誰も傷つけることがないのは知っている……いや、わかっていたというのがきっと正しいんだ……
僕は嘆く氷室を後に、暗い病室から出ると、そこは病院の廊下のはずなのにどういうわけか食堂だ。
「莉緒は辛い死に方をしたね。それでも美しい死に方だったのかな?」
小首を傾げる優。食堂の椅子に座りながら妖しく笑い僕を見ている。
「ねぇ」
「……何だよ……?」
「あの夜行列車にはどんな意味があったの?」
訊いてくる優。
まるで精神科医かよ……
「それは……逃げられる場所がきっとあると思って……」
惨めに泣きながら僕は答えるしかない……
「たどり着いた場所はあの暗い湖。私はあそこで消えるはずだったのかな?」
「……優のことは微かに覚えていたと思うから……俺に優しく話しかけてくれた数少ない人だから……消えてほしくなかった……」
「あの暗い湖は何?」
僕が消えてなくなりたい場所だった……そう言葉にしたいのに……できない……
「この病院は何のためにあるの?」
全ては莉緒にもう一度だけ会いたいという思いだった……
「はは、君の答えはわかるよ。こんなイカレタ場所で君は誰に会えた? このままで本当に大切な人に出会えるの?」
僕をどこか見透かしたかのようにあざ笑う優。僕は俯くしかない。涙が床に零れ落ち続けるが、そこは男だから堪えるしかない……
顔の傷はこの世界にはなくて僕は、もっと自由でいいはずなのに……
「ここでは思い出すだけで出会えるはずなのにずっと怖いんだ。莉緒が今では幻想の大切な人でも、触れれば壊れる気がして怖いんだ」
この幻想の世界で僕は優を見つめる。
「なら、私は最初から壊れていてもどうでもよかったんだ」
そう、どうでもいいんだ……事故で死んだのは知っていたから……だから創り出した……僕に優しくしてくれた数少ない人を……
「壊れた私が嫌なら、また根暗な私に喜んでなるよ……」
違う。僕が出会いたいのは壊れた優でも根暗な優でもない……
ただ僕が愛し続けた人だけだ……
「……わ、私は牧村君とまた出会えたのが嬉しい……たとえ幻想の存在でも、と、とても、とても嬉しく思う……」
目元を金色の前髪で隠した優に変わる。僕が通う高校の女子の夏服を着ていたが、白いワイシャツは血だらけで、僕は呆然と彼女の姿を見つめるしかない。
「もう死んだんだろ? もういいから……俺の頭の中から消えてくれ……!」
そうはいかないと自分でもわかっている。優は僕に優しくしてくれた数少ない人だから、だからいつまでも僕の心の中に残り続ける……孤独で悲しい心の中に……
「り、莉緒のことがいい……? わ、私じゃやっぱりダメかな……?」
違う……
「す、好きだよ……穂君のこと……」
優はどこか頬を赤くさせる……
「だから! そんなのお前じゃないだろ?!」
僕が優に掴みかかろうとしたとき、目の前が真っ白に染まる。頭の中が空っぽになったかと思うと、次の瞬間には思考がはっきりとして、目の前には薄暗い色とりどりの花畑が広がっている。薄青い月の下で莉緒が僕のことを見つめている。
「この世界は何?」
僕に小首を傾げて訊いてくる莉緒。
「俺と莉緒がまたいられる場所にしたかったのに、したかったのに……邪魔する奴らが大勢いる……アリサの絵本だってそうだ……」
あんな子供向けの絵本。どこがいいんだか実は未だにわからない。
「みんなと一緒にはいられない? 穂は現実ではずっと寂しい思いをしてきたから」
薄暗い花びらが温かい夜風に吹かれて宙を舞う。
「俺は莉緒と二人だけでいたいんだ」
正直な思いを告げると、莉緒は嬉しそうに口元を微笑ませる。
そんなまじめに微笑んだこと無かったろ?
いつも無邪気な子供みたいに笑うお前しか俺は知らないはずなのに……
「少しだけ休もう……もう目を開けて……嫌ならまたここに帰ってくるといい」
莉緒は首から血を流し始める。僕は居ても立っても居られず、莉緒に駆け寄る……
目を開ければそこは蝉の鳴き声がする夏の公園だった。僕はベンチに座っている。一人の男の子が僕の顔を物珍しそうに見ているのに気がつき、僕がふと目をやると、男の子は泣き出しながら逃げていく。こんな傷だらけの顔じゃ怖いのが当たり前だ。
そうだ……僕にはこれが当然の日常になったんだ……現実の氷室に傷つけられた足と顔。僕は杖を突き、ベンチから立ち上がる。
「夏の青空なんて久しぶりに見るなー」
ずっと夜の世界ばかり見ていたから、見上げる青空が懐かしくて仕方ない。
夏の涼しい風の吹くベンチに座って、いつまでも、ずっと妄想を、いや、幻想を思い描いていたから……そりゃ、青空が懐かしいのも当然か。
そういえば今日は心療の日だ。約束は十時ごろだけどとっくに約束の時間は過ぎている。あの紳士そうな精神科医と会うのはやはり気が重い。どうか幻想の夜行列車でコーヒー係でもしていてくれ。
となれば今日やるこはなにもない。高校も自主退学したから勉学に励む必要もない。
莉緒のいない日常なんて何も楽しくない。せめて優がいてくれれば……
「ああ……だからアリサにいたのか……」
優が……サイコの優がアリサにいた理由がやっとわかった。僕が自分を寂しくさせないため。それだけで大人しかった彼女をサイコにしたんだと思う。
杖を突きながら僕はあてもなく歩きはじめる。顔に酷い傷があり、足だって引きずっている。すれ違う人たち皆が僕を異様な目で見る人もいれば、可愛そうな目で見る人や静かに笑う人もいた。
そういった目で僕を見つづければいい。心が傷つくだけならそれでいいのに……近くに莉緒がいないのは本当に寂しい……寂しいから幻想に僕は逃げてしまう……
「……次はどんな……どんな幻想を抱けばいいんだろう……?」
幻想。僕は孤独な現実で生きたくない。だから幻想に縋り付くしかない。それはいつまでも……
「根暗のままの優でいいか……? 前髪さえ切ったら……! あいつ綺麗な顔しているし……!」
道行く人たちが僕を不快な目で見ては通り過ぎていく。せめて大丈夫ですかの言葉がほしいのに、足を引きずり、顔にだって醜い傷のある僕に声をかける人は誰もいない。
「なら莉緒は! 殺されたけど、俺の中ではまだ生きているんだよ!」
気がつけば叫んでいた。どうにもならない怒りを口から出すかのように叫んでいた。
「ふざけんなよ! あんなアリサの病院なんて何の意味もねぇじゃねぇか! それなら莉緒と過ごした日々を……」
叫び終われば次には底知れない悲しさがこみ上げてくる。
「……僕にあの日々を返してくれ……好きだった莉緒との日々を……僕の幻想でもいいから……」
持っていた杖が地面へと落ち、僕はその場に崩れ落ちる……
誰でもいいから僕の願いを訊いてほしい……
誰でもいいから僕の悲しみを消してほしい……
莉緒にまた会いたい……
ここはどこなんだろう……? 気がつけば僕は薄暗い青空……朝が近いようなそんな空の下で一人立ち尽くしていた……
足の痛みもないし、顔を触れば醜い傷跡の感触もない。
ここが……この場所が幻想だと気づくと、僕は狂ったように笑う……苦しい現実なんてたくさんだ。ましてや莉緒のいない現実に何の意味があるのだろうか……?
「僕は幻想でいい。ここが居場所なんだ」
薄暗い青空の下で満足していると、見慣れない一人の少女が僕に向かって手を差し伸ばしているのが見えた。
「あなたの現実は、あなたにとって狂った世界でしかない。それでも幻想の世界なら、狂っていても、あなたにとっては幸せなものになるのかもしれない」
金色の髪をして赤い瞳をした少女。誰なのかが僕にはよくわかった……
「……アリサ……」
僕は静かにアリサの手を取る……
気がつけば僕は一人車椅子に座ってボーとしていた。それは薄暗い青空の下の草原で……
「薬が効いている。もう何も心配せずにこの世界にいつづけるんだ」
そばには氷室がいた。これは心配してくれているのか……? それかその逆で哀れな僕を心の中で蔑んでいる……? わからない……
「誰も蔑んでなんかいない。目の前を見て。ほら、空が青くなっていく。わかるよね?」
アリサがいた。美しい少女が指さす薄暗い青空は光が支配しそうだ……
「き、君は幻想に、い、いたほうがいいよ……私も現実は思い出しただけで、く、苦しいから……」
優がいた。前髪で目元が隠れた優……口元が笑っていた……
「わ、笑うのが苦手になってる……ど、どうしてだろう……でも、なんだか幸せ……」
僕が知っている……本当の君に近づいたんだ……本当の自分に……
「……キスしてごめん……ごめんなさい……」
僕は少しだけ微笑むことができた……本当は薬なんか効いてなかったら、君を選んでいたと思う……
「穂。苦しかったよね?」
莉緒が僕の手を握ってくれていた……
「苦しかったよね?」
苦しかったに決まってるだろ……お前のいない日々を現実で生きたから……
「ここで生きよう」
そうするに決まっている……
……僕はいったい……何度こんなことを繰り返している……?
光が差しそうな薄暗い青空を僕は見ているしかない……何度終わったか知らない幻想の世界で……
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