リエル~孤独の世界へ~

天倉永久

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第二話 壊れた優しさへ

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気が付けば小雨は止んでいて、私はレユの手を取り、自宅であるこぢんまりとしたアパートへと帰っていた。

「静かな部屋で過ごすのは久しぶり。ありがとうアイル」

私はどういたしましてという言葉を言うことができない。自分でも一体何をしているのだろうとずっと頭の中で考えずにはいられない。相手は可愛らしい美少女でも、麻薬中毒者にほかならない。このスラムにたくさんいる麻薬中毒者の一人を私の部屋に招き入れている。考えて冷静になればどうやってこんな少女と私が仲良く暮らせるのだろうか?

「どうしたの? まさかもう私のことが嫌い?」

途方に暮れた私の表情を察したのか、レユは不安げに私を見つめている。

「嫌いならすぐに出ていくから」

「違う……嫌いじゃないから、とりあえずシャワー浴びよう」

とにかく今はこの子を綺麗にするしかない。着ている白いワンピースもボロボロだし、サラサラとした金色の髪もいつ洗ったかわからないが、とにかく汚れていた。きっとスラムの路上かどこかで、ずっと酷い暮らしをしてきたに違いない。
レユの着ていたボロボロの白いワンピースを脱がすと

「あ……」

「どうしたの? アイルには私の体が珍しい?」

茶化すレユに私は何も言葉にできない。
私は彼女を空の浴槽へと案内すると、冷水の少しまじったシャワーを頭からかけてあげた。

「うう……」

レユは浴槽の中で座り込み、冷水のまじったシャワーに耐えている。本当なら温かいお湯をかけてやりたいが、財政難以下のこのスラムでそんなことをすれば、後にとんでもない請求がくることになる。私が持っているリエルの売り上げは全て支払いに消えることになり、あとは悪徳警官のランスに殺されるだけ……

「まず髪を洗おう」

冷水で濡れたレユの金色の髪に、いつも使っている安物のシャンプーをなじませる私。なじませただけでレユの汚れた金色の髪は綺麗になっていく。私と歳がほとんど変わらない女の子なのに羨ましかった。
次に石鹸でレユの体を洗ってあげる。

「……一人でできるよ……もう誰にも触られたくないから……」

「そ、そう……わかった……」

レユの体には治りかけている痣がいくつかあった……誰かに乱暴されたことは、されたことのない私にも理解できて、悲しいという思いが、ずっと私の中に存在するかのように伝わってきた……
冷水の中でレユは自分の体を洗い始める。時折何度も目を拭っていたが、私は気にしないようにした。もし気にすれば、きっと大きく泣きだすに違いない……そうなってしまえば、私にはどうするべきかわからなかった……

シャワーを終えると、私は自分が何年か前に着ていた白いワンピースとレユに着させてあげる。

「綺麗な服をありがとうアイル」

「そ、そう……私のお古だけど……」

「アイルにもこんな服を着ていた時期があったんだ」

悪戯っぽく笑うレユに私は余計なお世話だと言葉にしたかったが、それ以上に私は見惚れてしまう。目の前には髪も肌も綺麗な可憐な美少女がいるのだから……

「あの、えーと、お腹空いてるでしょ? 何か作ってあげるから」

私は一体何をやっているのだろう? 相手は麻薬中毒の少女で、いつ廃人になるかもわかったところじゃない。私を寂しくさせないなんて約束は、いっそのこと無視して追い出せばいいのに、私は冷蔵庫の中身を見ている。

「卵が一つに、白パン……?」

冷蔵庫には一人分の食材しかない。私よりレユのほうがお腹を空かせているはずだから、自分の分なんて不思議とどうでもよかった。

「レユ、貧乏そうな料理しかできないけど……」

私がレユのことを初めて名前で呼んだけど、彼女は私がいつも眠っているシングルのベッドでスヤスヤと眠っていた。よほど安心していたか、麻薬の後遺症なのかは私にはわからないけど、熟睡していた。その手にはすっかりふやけた白いカプセル、リエルがあった。
冷水のシャワーを浴びせた時からずっと握っていた……? 私のあげたリエルを……?

「レユのだよ……好きなときに使えばいい……」

レユにベッドを占領されたので、私は小さなソファに横になるしかない。自分が小柄だったことに感謝した……とはいえ、仕事のない日はいつもこのソファでお昼寝しているから、別に悪い気はしなかった……

それは久しぶりに見た朝の光だった……すっかり眠り込んでいた私は窓のカーテンを閉め忘れたのか……?

「さぁ、起きろ、俺に渡す金もあるだろうし、お前なんかのクズに新しい仕事の話しも持ってきてやった」

別に閉め忘れたわけじゃなかった……私はいつも夜の仕事をしていたので、部屋のカーテンはずっと閉まったままだった。小綺麗なスーツを着たこいつがカーテンを開けていて、私の眠気を妨げていた……

「起きろよ、アイル。お前の大好きな男がワザワザ金を受け取りに来てやったんだ」

まだ眠気が残る目で、私は嫌でも嫌いなこいつを見るしかない。このスラムの悪徳警官であるランス。私にリエルを横流しして、売るように命じている張本人。こいつがいないと私の生活が成り立たないのは腹が立つ……だから……

「おはよう、私の大嫌いなランス……相手してあげるよ、私を抱きたくて仕方ないんでしょ……?」

私が眠る小さなソファにおいでよと手招きする私。まだ眠いはずなのに、私よりクズ以下のランスに嫌味を言えた私は素晴らしい。

「殴られたいのかお前? いっそのことスラムの売春宿に売り飛ばしてやるぞ」

こいつが私の体になんてまったく興味がないことは知っている。私たちが嫌いあっているのはお互い理解していた。

「売り飛ばすなら好きにすればいいけど、女の子の部屋に勝手に入ってこないでよ」

軽い欠伸をしながらソファから起き上がる私。すぐ横にあるベッドに目を向けると、レユの姿がないのに気が付く。

「ノックしようとしたら、ドアが半分開いていた。強盗か、お前のことが好みな変態のいい餌食だぞ?」

こいつの嫌味なんてどうでもいい。

「あの、バカ」

私は部屋のドアを開けて外に出る。朝の光が久しぶりだったので、私は思わず目を覆ってしまう。

「レユ!」

あの子の名前を呼ぶが返事はない。朝の光に耐えながら、辺りを見回すと手入れされていないアパートの中庭で、私のお古である白いワンピースを着た子が視界に入る。確かに金色の髪をしているその子がレユだと確信し、私はアパートの階段を降りてその子に駆け寄った。

「こんな朝は久しぶり……大切な人ができた朝は綺麗なんだ……」

訳のわからないことをブツブツ言っているレユの姿がある。私の中で小さな怒りが、少しずつ大きくなっていく。

「一人で出歩かないで!」

私はレユの両肩を強く握る。痛いはずなのにレユはどこか心地よさそうで、安らぎに満ちた表情を浮かべていた。

「リエルを飲んだの……?」

別に麻薬中毒者のレユが、リエルを飲んだことくらい構わないはずなのに、私の中でいいようのない不安が気づかないうちに生まれていた……これは心配という感情なのだろうか……?

「まさか、飲んでないよ。これはアイルからもらった大切なものだから」

レユの手のひらにはふやけたリエルがある。別にどうだっていいはずなのに私は安心感を覚えてしまう。

「今度一人で出歩いたら、もう絶対に探さない。自分で好きにしていいから」

見捨てるような私の言葉に効果があったのか、レユはボロボロと涙を流す。それは私が知る麻薬中毒者である証拠で、微笑みながら涙していた……

「お前、どういうつもりだ? 金にならない慈善事業でも始めたのか?」

ランスが私たちのそばにいた。怪訝そうに私とレユを見ている。

「腕の注射の痕。その子は麻薬中毒だろ? まさか助けてるのか?」

私はほんの小さく頷くしかない。頷いた途端にランスは私を笑う。

「こんな救いようのない街で、救いようのカケラもない麻薬中毒者を助けているのか? 俺やお前が中毒者をどんどん増やしているのに、その一人を助けた?」

私を笑えばいい。レユは私を寂しくさせないと約束してくれた。今はそれだけで十分だ。

「アイルと同じで寂しそう」

それはレユが初対面であるランスに言った一言だった。気に入らない一言を耳にしたランスはレユを睨みつける。

「俺とこのピンク髪のパーカー娘が同じ? 同じくらい寂しそうだっていうのか?」

ランスは怒ったと思う。前に私が怒らせたときと口調が似ていたから……前は、私がほんの世間話程度に、奥さんのことを軽く聞いて、それだけで酷く殴られた。後になって知った。こいつが妊娠中の奥さんを病気で亡くしたことを……

「レユ……やめて……」

このままでは二人とも殴られる。私は右手でレユの口を覆おうとした。

「私でよければ、いつでもあなたの寂しさを聞いてあげる。誰かに話せば少しだけでも心が落ち着くと思うから」

ランスは今にも私とレユを殴りそうだったが、次の瞬間には悪徳警官ランスの目は、不思議と人の目になっている。それは悲しくて寂しそうなランスの目……こんなランスを私は初めて見る……

「俺の寂しさか……こんな腐ったスラムでいったい誰が気にする……?」

「私が気にする」

ランスは一度だけレユに笑みを浮かべる。

「俺の……俺の妻は妊娠していて……ある日病気がわかって、それで死んだ……子供も一緒に……今の俺は、家ではいつも一人だ……確かに寂しいよ……」

それは人らしい笑みだった。それも悲しそうな人らしい笑み。悪徳警官ランスが私には見せたことのない笑みだった。

「私はレユ。アイルを寂しくさせないと約束したから一緒にいる」

「俺はランス。このピンクのガキに仕事を与えてやっている。今からは君の優しいお兄さんだ」

たまに私をピンクのガキ呼ばわりするランス。生まれつきの私の髪色を馬鹿にされているようで、心の底から腹が立つのだが、こいつがレユの優しいお兄さん気取りなのが、正直気味が悪かった。そんな優しい人柄でないことは、仕事をもらっている私がよく知っている。

「さぁ、優しいランスのお兄さんが何か買ってきてやる。どうせお前の部屋の冷蔵庫なんて、カラだろ」

失礼な、卵と白パンが私の部屋の冷蔵庫にある。

「優しくしないでよ。怒ったあんたを見れば、レユだって怖がるはずだから」

こいつに何度も殴られたことのある私が言うのだから間違いない。

「おい、勘違いするな。レユが腹を空かせてそうだから俺は行動しているだけだ。お前のためじゃない」

吐き捨てるかのように去っていくランス。一日に一度、顔を見るだけでも嫌なのに、買い物してもう一度戻ってくると思うと、頭痛がしてくる。

「アイル。お腹空いているから楽しみだね」

私も自分が空腹であることを思い出して、自然と片手がお腹にいく。昨日の夜、安レストランで食べようとした食事はシルとかいうストリートチルドレンにあげていたから……

「そうだね……部屋で待ってよう……」

ソファで横になりながら、食べ物を買ってくるランスを待つ。憂鬱極まりない時間に思えた。

「アイル。暗い顔はいけないよ」

ソファで横になる私に飛び乗ってくるレユ。無邪気に私の両頬を両手でつねりだす。

「うふふ」

憂鬱なはずなのに不思議と笑顔になってしまう私もレユの両頬をつねる。それほど力を入れていないのでレユは痛くないはず。だから笑ってくれた。女の子二人でこんな風にふざけあうのも悪くない。友達なんていない私は新鮮な気持ちを覚え始めていた。

「いつまでも一緒にいて」

不思議と私はそんな言葉を口にしていた。自分が孤独で愛に飢えていることを気づかせ始めていると……そんな気をさせていた……
私がレユの頬をつねるのをやめると、彼女もやめていた。

「約束したでしょ? アイルを一人にはしないし……」

「しないし? なに?」

私が訊くと、レユは私の胸に顔をうずめたかと思うと、次の瞬間には顔を上げて私に可愛らしい笑みを零してくれる。

「私でよければいつまでも一緒にいる」

そんな無邪気で優しい言葉をかけられたのは今まで生きてきて初めてだった。レユの言葉が嬉しくて、私は彼女の脇腹を力いっぱいに撫でる。よほどくすぐったいのか、レユは笑い出す。

「私の上に乗っている罰だよ。レユより私は年上だよ」

「ア、 アイル……やめてよ。ごめんなさい」

笑い続けるレユ。これが人としてのほんの些細な幸せなんだと私は気づいた。ずっと満たされたことがないから処女を捨てて、ずっと満たされないから好きになろうとした男も、私の体が好きなだけだったからすぐに捨てられた。それでも今は、私のすぐそばには一人にはしないと約束してくれたレユがいる。
私が些細な幸せを知った瞬間なのだが、どうしてもレユに聞けないことが一つあった。麻薬の禁断症状は大丈夫なのかと。
私がドラッグディーラーだからわかること。シャワーでふやけたリエルをまだ飲んでいない麻薬中毒者のレユには、今すぐにでも麻薬欲しさの禁断症状が出ていてもおかしくない。ましてや液体の麻薬を体にいれていればなおさらのはず……
少なくとも廃人の兆候がないことに私は安心感を覚えていた。

「帰ったぞ。食事の支度をしよう。三人だけの家族のささやかな時間だ」

ランスがまるで自分の家のように無作法に入ってくる。ここは私が借りている部屋なのに、まるで乗っ取られたかのような嫌な気分になる。

「どいて」

私の上に乗るレユを払いのけると、私はソファから立ち上がり、ランスを睨んでしまう。

「私たちは家族なんかじゃない」

「お前はともかくレユはそう思っていない」

薄ら笑いを浮かべるランスに私は腹が立った。レユもソファから立ち上がり、ランスが片手に抱えている食べ物の入った紙袋を食い入るよう見ている。

「パスタは好きかレユ?」

訊くランスにレユはキョトンとしている。多分パスタなんて食べ物を知らないのだと思う。私も安レストランで数えるほどしか食べたことがない。理由は値段が高いからだ。

「飴玉もたくさん買ってきたからな」

レユはランスに駆け寄り、飴玉をくださいといわんばかりに両手を差し出す。

「駄目だ。食べ終わってからのお楽しみだ」

残念そうな表情を浮かべるレユの頭をランスは撫でる。それは優しい誰かを演じているようだった。こいつがどうしてレユに優しくするのか、私は少しわかった気がする。

「まさか料理する気?」

私は半ば呆れながら小首を傾げて訊く。

「いけないか? 学のないお前の下手な料理より、俺が作るほうがよっぽどマシだろ?」

私は溜息を少しだけついて、静かに俯いた。

「ランス。お腹空いたよ」

急かすレユにランスは悪徳警官らしからぬ優しい笑みを浮かべる。私にはわかるランスは知らない何かを懐かしもうとしていることに……彼はただ鍋に水を入れ、点きの悪いキッチンのコンロに火をつけた。

しばらくすると私の部屋では考えられない料理のいい匂いがした。それはトマトが溶けるいい匂い。安レストランとは大違いのランスの料理だったが、私は空腹のはずなのに不思議と食欲がわかない。

「さぁ、食べよう。これを食ったら俺は仕事に出かけるから、レユはいい子にして待ってるんだぞ」

溶けたトマトのソースがパスタの上にのっている。とても美味しそうだが、私は手を付ける気にはなれない……

「わぁー」

レユはフォーク片手にパスタを食べようとするが、ランスが慌てて止める。

「服がシミになるだろう? パスタはこうやって食べるんだ」

ランスはレユの効き手である右手。フォークが握られた手に両手を添えるようにして、パスタの食べ方を教えている。フォークをクルクルと回して、フォークに絡めて口に運ぶのだと。

「美味しいね。ランスありがとう」

「どうしたしまして、どういたしましてレユ。とても嬉しいよ。ありがとう……」

知らない何かを懐かしんでいるかのようなランス。私はこいつに何度殴られてきた? それは数えきれないほどに……稼ぎが少なすぎて変態が集まるスラムの店で働かされたこともある。だから壊してやろう思う。きっと懐かしさに飽きたら、レユにも酷いことをするに違いないのだから……

「レユは出会えなかったあんたの子供の代わりにはなれないし、その子供に会うこともない」

ランスが激高に駆られたのがわかった。

「奥さんも残念だね。愛した夫が、失った家族を思い出しながら家族ごっこしているなんて……」

私は哀れなランスをあざ笑う。それはレユにこいつの正体を知らしめるために。

「このピンク髪のクソガキが! せっかくうまくいっていたのにぶち壊しやがって!」

パスタがのった皿が床に落ちて割れる。ランスは怒りにまかせて私の胸倉を強く掴んだ。後にも先にも私を殴る兆候であることは知っている……

「家族ごっこが壊れてよかったね。いいよ、殴りなよ」

私が抱えるランスへの恨みが少しでも晴れるなら、殴られるくらいどうでもいい。それはレユにこいつの本当の姿を見せてあげられるのだから……

「いいや、殴らない。少し大きな仕事があるからな。そのためにお前の可愛らしい顔が必要だ」

ランスは無理矢理平静を装うっているかのようだった。心の底では怒りに満ちている。その証拠に私の胸倉を放そうとしないから……

「この腐ったスラムから地下鉄に乗っただけでいける街を知ってるか?」

私は知らない。生まれも育ちもランスが嫌悪するこの腐ったスラム街だから……

「こことは違って財政難を乗り越えた街がある。お前は明日そこでリエルを売るんだ。このいい話を拒んだり、逆らったりしたら殺してやる。いや、スラムの売春宿のほうがいいか?」

売春宿に売られるなんてごめんだから、私はランスに向かって首を数回横に振るしかない。

「そうか、そうだよな。お前がいい子で助かるよ」

ランスは私の胸倉をようやく放してくれた。

「ねぇ、ランスはいい人でしょ……?」

ランスは、まるで自分の正体に気づいたかのようにハッとしていた。それはレユに言われるまで気づかなかったかのように……

「俺はいい人なんかじゃない。自分の家族も守れない哀れなクソ野郎だ!」

悪徳警官であるランスは叫ぶ。

「俺の子供を産んでくれるはずだった妻に感謝したかった! 生まれてくるはずの子をずっと……! 妻と二人で大切に育てたかったんだ……!」

ただ自分の正体を叫ぶだけ叫んだ。終わらない後悔の中でいつまでも生きている。それがランスだと私は気づかされる……

「こんな私に優しくしてくれた。ありがとうランス。とても嬉しい」

「優しいはずがない……俺は君のような人たちを毎日のように増やし続けている……それはこれからも変わらない……どうか許してくれ……」

フラフラとしながら私の部屋を後にするランス。彼が誰かに謝罪する姿を私は初めて見た。

「増やし続けるしかない。ほかに生きる方法がないし、私もランスも後戻りできないところまでとっくにたどり着いているから・・・・・・」

リエルの中毒者を増やして、生きていくためのお金を手に入れる。少なくとも私が死んだら天国へいくことはない……

「大丈夫。私はアイルのこと好きだから……心が優しいのに、その優しさをどうしていいかわからないんだよね……?」

わからない……わからないから、私は微笑みながら泣いているレユの涙を拭ってあげる。彼女が麻薬中毒であることを改めて理解するのだが、私は不思議と笑っていた。

「ほら、もう泣かなくていい。私といつまでも一緒にいればいいから」

それはレユを安心させるために、自然と出た私の笑み……
こんな風に笑ったのはいつぶりなのかな……?
少し考えただけで答えは出る。生まれて初めてだということを……
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