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第一章 仕方なかった者たち
第一話 吐息の橋
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町の夜は早い。駅前のアーケードは九時を過ぎると金属の歯列のようなシャッターを嚙み合わせ、提灯の朱だけがわずかに息をしている。そういう通りを抜けて、花街橋へ向かう細い道を彼は歩く。老人の荷車を押し、迷子の手を取り、財布を拾えば交番へ届ける——町はその一連の所作を何度も見ており、もう驚かない。見かけた者はだいたいこう言う。
「ほんと、ありがたい人だよ」
彼は決まり文句のように「いえ」と笑い、頭を下げる。笑いが小さく、きれいで、何も残さない。火事で妻と子を亡くしたらしい、同僚も病で——という噂話が最後にひと匙かけられるのも、町の定食みたいにお決まりだ。
惣菜屋の店先で、女将が包丁を止めて言う。
「あの人はね、可哀想な人なんだよ」
交番の若い警官は報告書の角を揃えながらうなずく。
「善い人です、ほんとに」
* * *
その夜、川は白かった。乳色の靄が川面から這い上がり、欄干の脚も、道の縁も溶かしていく。湿った紙を胸に貼りつけられたみたいな冷たさで、音が先に死ぬ。彼は橋のたもとで一度だけ立ち止まり、指先で欄干の冷たさを確かめ、右足を乗せた。
「……仕方が、なかったんだ」
言葉が靄に吸われて、すぐ見えなくなる。息も同じ。もう一歩。
「どうにも、ならなかった……あのときは」
四歩、六歩。白い厚みの奥から、短い破片が胸側へぶつかってくる。耳で聞くというより、肺の裏側に触れるような声だ。
──たすけて。
──どうして。
彼は欄干に軽く指を掛け、ゆっくり振り返る。何もいない。自身に向けて言い聞かせる。
「私、は……守ろうとしたんだ。全力で、……うん」
声が小さい。店で「すみません」と言うときの柔らかい抑揚のまま、丁寧に整えた言葉を胸の内側に並べる。それは観察者の耳には、哀れでまっとうな人間の独白にしか聞こえない。
白の中央に、輪郭が立つ。青い羽織、白粉の平らな肌、赤い唇。昔の芝居絵から抜け出したみたいな女で、こちらを見る目尻がやわらかく笑っている。距離は一定に保たれていて、近いとも遠いとも言えない。靄が彼女の裾を持ち上げるように見える瞬間がある。
「やあやあ、旦那」
女は声を出す。古い紙の匂いがする声だ。
「お引取りを。店仕舞いでありんす」
彼は喉をひりつかせて後ずさる。
「……人、なのか?」
女はわずかに首を傾げる。
「火の夜、妻を置いてきたでありんしょう」
「なっ──」
彼は乱暴に聞こえないよう、しかしはっきりと言う。
「どうしてそんな酷いことを言う。私は——」
「川で沈んだ子の手も、あんたが振り解いたでありんしょう」
「違う!」
声が裏返る。
「そんなことは、ない。私はあの子を助けようとした! 守らなきゃいけなかった、私は——!」
女の赤い唇が、にごりのない形で笑う。
「同僚もそうでありんしょう。病床に残して、ひとり勝ちした」
「やめてくれ」
彼は息を荒げ、胸の前で両手を重ねる。
「どうしてそんなことを言う。私は……私は、盾にならなきゃいけなかった。私が、誰も信じなくても、守らなきゃ」
言うたび、善人の線が濃くなる。理不尽に責められても正しい言葉を失わない者の顔は、やはり美しい。靄はその輪郭をなぞるように濃くなり、肩の力をやさしく削っていく。彼はうなずき、息を整えようとする。
「……そうだ。私は守ろうとした。私は」
ここで、呼吸が変わる。喉仏が大きく上下し、吐息が湿りを増す。言葉の芯が変質する。謝罪や正義より先に、短い硬い音が立つ。助かった、という四拍が、呼気の中で膨らむ。
「……そうだ」
彼は自分の声に驚いたように目を瞬く。
「そうだ、私は——」
「言いんさいな」
女が促す。
「今宵は店仕舞いでありんす。いらぬ飾りは置いていきんさい」
彼は喉を押さえて息を吸い、吐いた。白が濃くなる。
「助かったんだ。私は」
「火の夜、妻の手がここに——」
彼は自分の手首を握って示す。
「爪が食い込んで、皮膚が裂けて、熱くて、痛くて……振り払った。外の空気が甘かった。階段を飛び降りた時、足裏が弾んで、うれしくて、震えた。助かった、助かったって思った」
言葉が連なるにつれ、丁寧に整えていた表情の筋肉がほぐれ、口元がわずかに上がる。靄の中で彼の笑いは歪んで見える。
「川でも、同じだ。小さな指が私の手袋を——ここだ——探り当てて、冷たくて、重くて。押し返した。外した。泡がひとつ、ふたつ、弾けて、消えて、私の胸が軽くなった。楽になった。あの軽さ。私は浮いた。私だけが浮いた。気持ちよかった」
女は表情を変えない。独白する男からは、彼女はただ背景も等しいだろう。
「同僚の夜は静かだった。咳が潰れた音で、窓の外の信号が青で、誰も見ていなくて。私は息が吸えた。私だけが吸えた。あれが、快感だった。胸のここが——」彼は肋骨を指で叩く。「痺れて、甘くて、吐息が泡立って、笑いそうだった。私は助かった。私は、生き残った。私が」
「──やっと、言えんしたねえ」
女の声は小さい。靄に吸われない。
彼はうなずく。
「言えた。私は助かってよかった。誰が沈んでも、燃えても、倒れても、私さえ生きていればよかった。私は、守ったんだ。私を」
ここで咳が来る。咳というより、えづきの長い手前だ。喉の奥が二、三度ひくついて、それから、違う粘度の音が続く。彼は口を開き、顎が前へ出る。隙間から、幼児の指ほどの細長い舌状の肉片が一本、ぬるりと落ちた。靄がまとわりつき、淡い糸を引く。二本、三本。先端はやや丸く、薄い粘液に濡れて、空気に触れて急速に色を濃くする。彼の胸が揺れるたび、喉の奥から連続して引き出される。欄干の前に小さな山ができ、肉片は脈動のようにわずかに震え続ける。彼はまだ笑っている。涙もある。浅く、早い。
「見んさい」
女は一歩も近づかない。
「お前様の吐いた、息の形でありんす」
「……きれいだ」
彼は自分で言って、自分で笑う。
「私の」
靄は彼の口元に集まり、肉片の数が増える。喉の裂け目が内側からさらに割れ、黒いひびが広がっていく。時間が伸びて見える。音は戻らない。白い厚みだけが、橋の上にある。どの瞬間が終わりだったのか、ここでは決められない。膝が折れたときか、最初の肉片が完全に黒ずんだときか、最後の吐息が靄と区別できなくなったときか。いずれにしても、終わった。
* * *
翌朝の発見は早い。ジョギングの男が欄干にもたれる影に気づき、近寄り、携帯を落とした。
「……人だ!」と彼は声を上げる。
「……──人か?」と、疑問は湧くが見ない振りをした。
通報、救急、封鎖。黄色いテープが風に鳴る。白い手袋が増え、青い箱が置かれ、数人が同時にメモを取る。
「脈なし確認」
「仰臥位。硬直あり」
「喉の損傷、大きいな」
遺体は安堵の弧を口元に残している。喉の裂け目からは多数の肉片が垂れ、欄干の縁に触れたものから乾きはじめて、ひびを入れている。胸から上に焦げはない。衣服は湿っているだけだ。若い警官が一歩退き、手袋の上から鼻を押さえる。
「なんです、これ……」
医師は手元灯を差し込み、舌圧子で角度を変える。
「……気道壊死。粘膜が内翻して排出されてる。こういう……いや、説明がつかんな。大量に何かを吸い込んだのか、化学的に——」
「善い方だったのに」
惣菜屋の女将が布で口を覆って言う。
「ほんとに善い方で……」
「お気の毒に」
老人が帽子を胸に当てる。
「あの人に悪いところなんて——」
「神様は残酷です」
交番の若いのが、言い慣れない言葉を選ぶ。
「『善人』がまた一人」
通りすがりの誰かが言う。言葉がこぼれ、散る。朝の橋で、哀悼にはだいたい似た音色がある。
昼を過ぎても、橋の上には細い白が立っている。朝霧とは混ざらない。川風でも散らない。水面に薄い膜が寄り、欄干に触れて裂け、また寄る。献花の一輪が風に倒れ、花弁が膜に触れて沈む。通りかかる人は顔を背ける。甘ったるい匂いが、川辺に薄く残る。音は戻っている。車輪の小さな音、遠い笑い声、金属が触れる軽い音。
町は夕方にはいつもの速度に戻る。八百屋は新しい段ボールを並べ、惣菜屋は煮物を火にかけ直し、交番では角の揃った報告書が積み上がる。人間は、善い人の死を善い物語として受け取る用意がある。用意があるから、受け取る。だから、残る言葉はだいたい同じだ。
あなたは見たかもしれない。
欄干の足もとにできた小さな山の、乾き切らない色。
あなたは嗅いだかもしれない。
朝でも夜でもない甘さの、喉に貼りつく感じ。
もし、橋の上であなたの呼吸がほんのわずか重くなったなら、それは気のせいではない。
吐いた息が、白にまざったのなら。それも気のせいではない。
好い人の話はここで終わる。終わらせるのは簡単だ。あなたがそう決めればいい。ただ、あの白はまだ残っていて、あなたの吐息にそっと手を伸ばしている。
この話を忘れてもいい。彼のことを忘れてもいい。
今、読んでいるあなた自身の、喉の奥に指が当たる感覚を、忘れずにいればいい。
——————
次話は「鏡に映る呼吸」
──気づかなければよかったことが、ここにある。
「ほんと、ありがたい人だよ」
彼は決まり文句のように「いえ」と笑い、頭を下げる。笑いが小さく、きれいで、何も残さない。火事で妻と子を亡くしたらしい、同僚も病で——という噂話が最後にひと匙かけられるのも、町の定食みたいにお決まりだ。
惣菜屋の店先で、女将が包丁を止めて言う。
「あの人はね、可哀想な人なんだよ」
交番の若い警官は報告書の角を揃えながらうなずく。
「善い人です、ほんとに」
* * *
その夜、川は白かった。乳色の靄が川面から這い上がり、欄干の脚も、道の縁も溶かしていく。湿った紙を胸に貼りつけられたみたいな冷たさで、音が先に死ぬ。彼は橋のたもとで一度だけ立ち止まり、指先で欄干の冷たさを確かめ、右足を乗せた。
「……仕方が、なかったんだ」
言葉が靄に吸われて、すぐ見えなくなる。息も同じ。もう一歩。
「どうにも、ならなかった……あのときは」
四歩、六歩。白い厚みの奥から、短い破片が胸側へぶつかってくる。耳で聞くというより、肺の裏側に触れるような声だ。
──たすけて。
──どうして。
彼は欄干に軽く指を掛け、ゆっくり振り返る。何もいない。自身に向けて言い聞かせる。
「私、は……守ろうとしたんだ。全力で、……うん」
声が小さい。店で「すみません」と言うときの柔らかい抑揚のまま、丁寧に整えた言葉を胸の内側に並べる。それは観察者の耳には、哀れでまっとうな人間の独白にしか聞こえない。
白の中央に、輪郭が立つ。青い羽織、白粉の平らな肌、赤い唇。昔の芝居絵から抜け出したみたいな女で、こちらを見る目尻がやわらかく笑っている。距離は一定に保たれていて、近いとも遠いとも言えない。靄が彼女の裾を持ち上げるように見える瞬間がある。
「やあやあ、旦那」
女は声を出す。古い紙の匂いがする声だ。
「お引取りを。店仕舞いでありんす」
彼は喉をひりつかせて後ずさる。
「……人、なのか?」
女はわずかに首を傾げる。
「火の夜、妻を置いてきたでありんしょう」
「なっ──」
彼は乱暴に聞こえないよう、しかしはっきりと言う。
「どうしてそんな酷いことを言う。私は——」
「川で沈んだ子の手も、あんたが振り解いたでありんしょう」
「違う!」
声が裏返る。
「そんなことは、ない。私はあの子を助けようとした! 守らなきゃいけなかった、私は——!」
女の赤い唇が、にごりのない形で笑う。
「同僚もそうでありんしょう。病床に残して、ひとり勝ちした」
「やめてくれ」
彼は息を荒げ、胸の前で両手を重ねる。
「どうしてそんなことを言う。私は……私は、盾にならなきゃいけなかった。私が、誰も信じなくても、守らなきゃ」
言うたび、善人の線が濃くなる。理不尽に責められても正しい言葉を失わない者の顔は、やはり美しい。靄はその輪郭をなぞるように濃くなり、肩の力をやさしく削っていく。彼はうなずき、息を整えようとする。
「……そうだ。私は守ろうとした。私は」
ここで、呼吸が変わる。喉仏が大きく上下し、吐息が湿りを増す。言葉の芯が変質する。謝罪や正義より先に、短い硬い音が立つ。助かった、という四拍が、呼気の中で膨らむ。
「……そうだ」
彼は自分の声に驚いたように目を瞬く。
「そうだ、私は——」
「言いんさいな」
女が促す。
「今宵は店仕舞いでありんす。いらぬ飾りは置いていきんさい」
彼は喉を押さえて息を吸い、吐いた。白が濃くなる。
「助かったんだ。私は」
「火の夜、妻の手がここに——」
彼は自分の手首を握って示す。
「爪が食い込んで、皮膚が裂けて、熱くて、痛くて……振り払った。外の空気が甘かった。階段を飛び降りた時、足裏が弾んで、うれしくて、震えた。助かった、助かったって思った」
言葉が連なるにつれ、丁寧に整えていた表情の筋肉がほぐれ、口元がわずかに上がる。靄の中で彼の笑いは歪んで見える。
「川でも、同じだ。小さな指が私の手袋を——ここだ——探り当てて、冷たくて、重くて。押し返した。外した。泡がひとつ、ふたつ、弾けて、消えて、私の胸が軽くなった。楽になった。あの軽さ。私は浮いた。私だけが浮いた。気持ちよかった」
女は表情を変えない。独白する男からは、彼女はただ背景も等しいだろう。
「同僚の夜は静かだった。咳が潰れた音で、窓の外の信号が青で、誰も見ていなくて。私は息が吸えた。私だけが吸えた。あれが、快感だった。胸のここが——」彼は肋骨を指で叩く。「痺れて、甘くて、吐息が泡立って、笑いそうだった。私は助かった。私は、生き残った。私が」
「──やっと、言えんしたねえ」
女の声は小さい。靄に吸われない。
彼はうなずく。
「言えた。私は助かってよかった。誰が沈んでも、燃えても、倒れても、私さえ生きていればよかった。私は、守ったんだ。私を」
ここで咳が来る。咳というより、えづきの長い手前だ。喉の奥が二、三度ひくついて、それから、違う粘度の音が続く。彼は口を開き、顎が前へ出る。隙間から、幼児の指ほどの細長い舌状の肉片が一本、ぬるりと落ちた。靄がまとわりつき、淡い糸を引く。二本、三本。先端はやや丸く、薄い粘液に濡れて、空気に触れて急速に色を濃くする。彼の胸が揺れるたび、喉の奥から連続して引き出される。欄干の前に小さな山ができ、肉片は脈動のようにわずかに震え続ける。彼はまだ笑っている。涙もある。浅く、早い。
「見んさい」
女は一歩も近づかない。
「お前様の吐いた、息の形でありんす」
「……きれいだ」
彼は自分で言って、自分で笑う。
「私の」
靄は彼の口元に集まり、肉片の数が増える。喉の裂け目が内側からさらに割れ、黒いひびが広がっていく。時間が伸びて見える。音は戻らない。白い厚みだけが、橋の上にある。どの瞬間が終わりだったのか、ここでは決められない。膝が折れたときか、最初の肉片が完全に黒ずんだときか、最後の吐息が靄と区別できなくなったときか。いずれにしても、終わった。
* * *
翌朝の発見は早い。ジョギングの男が欄干にもたれる影に気づき、近寄り、携帯を落とした。
「……人だ!」と彼は声を上げる。
「……──人か?」と、疑問は湧くが見ない振りをした。
通報、救急、封鎖。黄色いテープが風に鳴る。白い手袋が増え、青い箱が置かれ、数人が同時にメモを取る。
「脈なし確認」
「仰臥位。硬直あり」
「喉の損傷、大きいな」
遺体は安堵の弧を口元に残している。喉の裂け目からは多数の肉片が垂れ、欄干の縁に触れたものから乾きはじめて、ひびを入れている。胸から上に焦げはない。衣服は湿っているだけだ。若い警官が一歩退き、手袋の上から鼻を押さえる。
「なんです、これ……」
医師は手元灯を差し込み、舌圧子で角度を変える。
「……気道壊死。粘膜が内翻して排出されてる。こういう……いや、説明がつかんな。大量に何かを吸い込んだのか、化学的に——」
「善い方だったのに」
惣菜屋の女将が布で口を覆って言う。
「ほんとに善い方で……」
「お気の毒に」
老人が帽子を胸に当てる。
「あの人に悪いところなんて——」
「神様は残酷です」
交番の若いのが、言い慣れない言葉を選ぶ。
「『善人』がまた一人」
通りすがりの誰かが言う。言葉がこぼれ、散る。朝の橋で、哀悼にはだいたい似た音色がある。
昼を過ぎても、橋の上には細い白が立っている。朝霧とは混ざらない。川風でも散らない。水面に薄い膜が寄り、欄干に触れて裂け、また寄る。献花の一輪が風に倒れ、花弁が膜に触れて沈む。通りかかる人は顔を背ける。甘ったるい匂いが、川辺に薄く残る。音は戻っている。車輪の小さな音、遠い笑い声、金属が触れる軽い音。
町は夕方にはいつもの速度に戻る。八百屋は新しい段ボールを並べ、惣菜屋は煮物を火にかけ直し、交番では角の揃った報告書が積み上がる。人間は、善い人の死を善い物語として受け取る用意がある。用意があるから、受け取る。だから、残る言葉はだいたい同じだ。
あなたは見たかもしれない。
欄干の足もとにできた小さな山の、乾き切らない色。
あなたは嗅いだかもしれない。
朝でも夜でもない甘さの、喉に貼りつく感じ。
もし、橋の上であなたの呼吸がほんのわずか重くなったなら、それは気のせいではない。
吐いた息が、白にまざったのなら。それも気のせいではない。
好い人の話はここで終わる。終わらせるのは簡単だ。あなたがそう決めればいい。ただ、あの白はまだ残っていて、あなたの吐息にそっと手を伸ばしている。
この話を忘れてもいい。彼のことを忘れてもいい。
今、読んでいるあなた自身の、喉の奥に指が当たる感覚を、忘れずにいればいい。
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──気づかなければよかったことが、ここにある。
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