信号の色

筑紫榛名

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(一)‐2

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「そうなのか」
 グラスに残った焼酎を見つめながら俺はそう言った。水上咲良の名前を聞いたとき、きっとどこかで幸せに暮らしているだろうなんて思ったが、そうでもないのか。彼女の当時の家庭環境から考えると、不幸になったり貧乏になったりすることもなく、幸せな家庭を築くなどしているのだろうと勝手に想像したのだ。そんな想像と新津の口から語られる彼女の現実とのギャップにあれこれ可能性を想像してみたがどれも具体性もなく妄想の範囲を超えないものだった。
「小平君っていたじゃない、サッカー部の」
 新津は俺の脳内で一瞬のうちに再生された想像のビジョンを無視して話を続けた。
「あ、ああ、いたな。小平俊介、だったかな。俺はあまり話さなかったけど」
「そう。彼女、小平君と仲がいいらしくって、最近会って話をしたらしいのよ。そしたら金を貸してくれって言われたそうよ」
「ふーん」
「ふーん、ってそれだけ?」
「この歳になって昔の知人の噂話ってもなあ。取引先の話とか、同僚の話とかならまだ興味あるけど、もう関係ないしな」
 関係ないというのは言い過ぎだろうと思ったが、彼女の身に何が起こったもわからないなら、それ以上のことは何も言えない。本人が目の前にいるというなら話は別だが、新津の話は人づての噂でしかない。俺は想像するのを止めてグラスに口を付けて焼酎を口の中に入れた。
「嘘言いなさいよ、関係ないわけないでしょう。だってあんた、卒業式の日に彼女に告白してフラれたんでしょう」
 新津のセリフに、思わず俺は焼酎を吹き出してしまった。
「ちょっと待て! なんでお前がそれを知っているんだよ」
 新津の顔を見た。新津は「ちょっと! 汚いじゃないの……」と言いながら、テーブルの上をお手ふきで拭き始めた。
「いや、なんでお前が……」

(続く)
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