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お前を愛することはないと夫に言われたので、とても感謝しています
01.お前を愛することはない
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「あいにくだが、お前を愛することはない」
初夜の寝室にて、花婿であるジルベールが傲慢に言い放つ。
花嫁オデットは唖然として、夫を見つめた。
煌びやかな金色の髪と鮮やかな青色の瞳を持つジルベールは、顔立ちも整っている。令嬢たちから騒がれている、美麗な貴公子だ。
それに対してオデットは茶色の髪に茶色の瞳と地味で、顔立ちも平凡といえる。せいぜい、少し愛らしいといった程度だろう。
「お前の浅ましい思いは知っている」
ジルベールが腕を組んで見下ろすと、オデットは目をそらして顔を伏せた。
恥じ入るオデットを眺め、ジルベールは鼻で笑う。
「だが一年だけ、夫婦として過ごしてやろう。ただし、白い結婚だ。子などできてしまっては、離縁のときに面倒だからな」
一方的に、ジルベールは宣言する。
オデットは、信じられないといったようにジルベールを見つめることしかできない。
「なんだ、その顔は。文句でもあるのか」
「い……いえ、ありがとうございます……! 心から感謝いたします……!」
不機嫌そうなジルベールに、オデットは深々と頭を下げる。
殊勝なオデットを眺め、ジルベールはやっと少し満足そうに笑った。
ジルベールは、由緒正しいランメルト侯爵家の嫡男として生まれた。
幼い頃から容姿端麗と称えられ、将来を嘱望されてきたのだ。
しかし、十八歳という若さで侯爵位を継ぐことになり、それからの人生は下り坂となってしまった。
二年も経つ頃にはすっかり資金難に陥り、成金貴族と揶揄されるギャストン子爵家から資金援助を得るために、令嬢を娶ることになったのだ。
「どうせ僕に憧れて、父親に結婚をねだったんだろう。浅ましい女だ」
家を存続させるためには仕方がなく、どんどん結婚話は進んでいった。
やがて結婚式で初めて花嫁の顔を見たジルベールは、失望することとなる。
想像以上に地味で、華やかな己にはふさわしくないと、ジルベールは苛立ちを抑えきれなかった。
「……一年。一年で家を立て直してやる。そうすれば、資金援助などいらなくなる。あんな地味な女とは離縁して、僕にふさわしい美しい令嬢を本当の妻に迎えよう」
そう決意して初夜の寝室に向かったジルベールだが、花嫁となったオデットは予想に反して慎ましかった。
愛することはないという言葉も、一年だけの夫婦ということも受け入れ、オデットは感謝してくる。
己の立場をわきまえているオデットに、ジルベールは気をよくした。
「だが、一年あれば僕を落としてみせると思っているのかもしれないな。何にせよ、気を付けるべきだ」
しおらしい態度も、演技かもしれない。
そうしてジルベールを篭絡した後、本性を現すのだろう。
警戒するジルベールだったが、名ばかりの侯爵夫人となったオデットは、手際よく家政を取り仕切った。
荒んでいた屋敷は蘇り、使用人たちの顔も明るくなっていく。
使用人たちはオデットを尊敬の眼差しで見つめる。その目は、ジルベールに向けるものとは、明らかに違う。
「ふん……大量の持参金があるからな。あれだけ金銭があれば、誰でもできることだ」
慎ましいドレス姿のオデットを遠くから眺め、ジルベールは一人吐き捨てる。
ジルベールには金さえあれば誰でもできるようなことではなく、領地経営の改善という大仕事があるのだ。
名ばかりの妻になど、構っている余裕はなかった。
初夜の寝室にて、花婿であるジルベールが傲慢に言い放つ。
花嫁オデットは唖然として、夫を見つめた。
煌びやかな金色の髪と鮮やかな青色の瞳を持つジルベールは、顔立ちも整っている。令嬢たちから騒がれている、美麗な貴公子だ。
それに対してオデットは茶色の髪に茶色の瞳と地味で、顔立ちも平凡といえる。せいぜい、少し愛らしいといった程度だろう。
「お前の浅ましい思いは知っている」
ジルベールが腕を組んで見下ろすと、オデットは目をそらして顔を伏せた。
恥じ入るオデットを眺め、ジルベールは鼻で笑う。
「だが一年だけ、夫婦として過ごしてやろう。ただし、白い結婚だ。子などできてしまっては、離縁のときに面倒だからな」
一方的に、ジルベールは宣言する。
オデットは、信じられないといったようにジルベールを見つめることしかできない。
「なんだ、その顔は。文句でもあるのか」
「い……いえ、ありがとうございます……! 心から感謝いたします……!」
不機嫌そうなジルベールに、オデットは深々と頭を下げる。
殊勝なオデットを眺め、ジルベールはやっと少し満足そうに笑った。
ジルベールは、由緒正しいランメルト侯爵家の嫡男として生まれた。
幼い頃から容姿端麗と称えられ、将来を嘱望されてきたのだ。
しかし、十八歳という若さで侯爵位を継ぐことになり、それからの人生は下り坂となってしまった。
二年も経つ頃にはすっかり資金難に陥り、成金貴族と揶揄されるギャストン子爵家から資金援助を得るために、令嬢を娶ることになったのだ。
「どうせ僕に憧れて、父親に結婚をねだったんだろう。浅ましい女だ」
家を存続させるためには仕方がなく、どんどん結婚話は進んでいった。
やがて結婚式で初めて花嫁の顔を見たジルベールは、失望することとなる。
想像以上に地味で、華やかな己にはふさわしくないと、ジルベールは苛立ちを抑えきれなかった。
「……一年。一年で家を立て直してやる。そうすれば、資金援助などいらなくなる。あんな地味な女とは離縁して、僕にふさわしい美しい令嬢を本当の妻に迎えよう」
そう決意して初夜の寝室に向かったジルベールだが、花嫁となったオデットは予想に反して慎ましかった。
愛することはないという言葉も、一年だけの夫婦ということも受け入れ、オデットは感謝してくる。
己の立場をわきまえているオデットに、ジルベールは気をよくした。
「だが、一年あれば僕を落としてみせると思っているのかもしれないな。何にせよ、気を付けるべきだ」
しおらしい態度も、演技かもしれない。
そうしてジルベールを篭絡した後、本性を現すのだろう。
警戒するジルベールだったが、名ばかりの侯爵夫人となったオデットは、手際よく家政を取り仕切った。
荒んでいた屋敷は蘇り、使用人たちの顔も明るくなっていく。
使用人たちはオデットを尊敬の眼差しで見つめる。その目は、ジルベールに向けるものとは、明らかに違う。
「ふん……大量の持参金があるからな。あれだけ金銭があれば、誰でもできることだ」
慎ましいドレス姿のオデットを遠くから眺め、ジルベールは一人吐き捨てる。
ジルベールには金さえあれば誰でもできるようなことではなく、領地経営の改善という大仕事があるのだ。
名ばかりの妻になど、構っている余裕はなかった。
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