処刑された人質王女は、自分を殺した国に転生して家族に溺愛される

葵 すみれ

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05.助け

 このまま、自分は死ぬのだろう。
 助けてほしいと言ったところで、誰が来てくれるというのか。
 前世で処刑されるときも、どうせ無駄だと知っていたから、そのようなことは言わなかった。
 だから、今回も諦めようとした。
 けれど、諦めきれなかった。心の奥底では助けを求めていたのだ。

「たす、け……て……」

 絞り出すように、ロゼッタは声を発する。
 とても小さな、蚊の鳴くような声だったが、それでもロゼッタは初めて自分から助けを求めたのだ。
 一度言葉にすると、それは堰を切ったかのように溢れ出した。

 最後の力を振り絞るように、ロゼッタは手足をばたつかせる。
 抵抗と呼べないほど弱々しいものだったが、幸いなことにマライアの顔面に当たったようだ。
 わずかに怯んだマライアが手を離した隙に、ロゼッタは大きく息を吸う。

「げほっ! ごほ……っ!」

 激しく咳き込みながら空気を貪るロゼッタ。
 そんなロゼッタを見下ろしながら、マライアは舌打ちをした。

「生意気な子ね」

 そう呟き、再びマライアの手が伸びてくる。

「たすけて……! わたしは、しにたくない! まだ、しにたくなんてない!」

 涙で滲んだ視界に、ロゼッタは必死に手を伸ばす。
 しかし、その手は虚しく宙を切るばかりだ。

「たすけて……! だれかたすけて!」

 決して叶わないと知りながらも、ロゼッタは叫んだ。
 マライアの手がロゼッタの首にかかる。徐々に強くなっていく圧迫感に抗いながら、ロゼッタは必死にもがいた。
 すると、次の瞬間――。

「マライア、何をしている!」

 叫び声が響き、ロゼッタに馬乗りになるマライアを誰かが勢いよく突き飛ばした。
 一瞬の間のあと、ロゼッタは咳き込みながら息を吸う。全身で呼吸をして、ようやく自分がまだ生きていることを実感した。
 そんなロゼッタを、誰かが抱き起こす。

「大丈夫か!?」

 そこには、先ほど部屋を出たはずのコーネリアスが立っていた。
 ロゼッタは、コーネリアスに抱き起こされた状態で呆然とする。咳き込んだせいか、また涙が溢れた。

「無事か!? 私がわかるか?」

 必死に問いかけてくるその人に、なんとか頷き返す。

「お……とう、さま」

 掠れた声で、ロゼッタは呟く。
 まさか本当に助けに来てくれるとは思わなかった。それも、一番期待していなかった人が来てくれたことに、ロゼッタは戸惑う。
 コーネリアスはそんなロゼッタを見て安堵の表情を浮かべたあと、すぐに怒りに染まった。

「マライア! お前はなんということをしたのだ!?」

 コーネリアスは、ロゼッタを腕の中に抱えたまま、マライアに厳しい視線を投げかけた。
 マライアは、焦りながら首を横に振る。

「ち、違います、私はただ……」

「私の娘に何をする! 正気か、お前は!?」

「ひいっ」

 マライアは、怯えるように悲鳴を上げた。その様子を、ロゼッタはただ黙って見つめる。

「お、お許しください、陛下! 私はただ、陛下に愛してほしくて……」

 ロゼッタを虐げていた罪の意識など、少しも感じていないのだろう。マライアはまるで自分が被害者であるかのように、涙を溢れさせながら訴える。
 そんなマライアの言い分に、コーネリアスは額を押さえて深いため息を吐いた。
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