処刑された人質王女は、自分を殺した国に転生して家族に溺愛される

葵 すみれ

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18.愛されたかった

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「それで、父上と母上の関係は冷え切ったままでね。二人の間に次の子は望めないだろうし、側妃……きみの母上も、病を得て療養中だ。もともと側妃だって、国内の貴族たちから押しつけられたものなんだ。だから、きっと新しい側妃を娶ることはないだろう。父上の子どもは、僕らだけなんだよ」

 アイザックは寂しげに笑ってから、ロゼッタをそっと抱き寄せた。そして、優しく髪を撫でてくれる。

「大丈夫、僕がきみを守る。ずっと側にいるよ」

「……おにいさま」

 ロゼッタはアイザックの服をぎゅっと握り、胸に顔をうずめた。
 黄金色の頭をぽんぽんと優しく叩きながら、アイザックは囁くように語りかける。

「だから、きみはもう少し甘えていいんだ。我慢せずに、わがままを言ってもいいんだよ」

 ロゼッタは顔を上げると、アイザックの顔を見つめた。すると彼は微笑み返してくれる。

「おにいさま……わたし……」

 ロゼッタは何かを言いかけたが、口を閉ざした。
 しかし、アイザックはロゼッタが何を言いかけたのか察したようだ。彼は頷くと、再び優しく頭を撫でてくれる。

「もちろんいいよ、言ってごらん」

 アイザックが促すと、ロゼッタは少しためらってから言葉を紡いだ。

「……わたし、家族に、愛されたかったんです」

 そう口にした瞬間、ロゼッタの目から涙がぽろりと零れた。そして、次から次へと流れ出て止まらなくなる。
 前世のニーナは、幼い頃から家族に愛されなかった。誰も彼女を気にかけてくれなかったし、守ろうともしなかった。
 だが、今は違う。ロゼッタには守ってくれる父がいて、アイザックも可愛がってくれる。
 それはとても幸せなことで、だからこそ失うことが恐ろしい。もし、また家族に捨てられたらと思うと怖くてたまらなかった。

「ロゼッタ、大丈夫だよ」

 アイザックは優しく囁きながら、そっと背中をさすってくれた。その温かさに甘えながら、ロゼッタはただ涙を流し続けた。
 そうやってしばらくの間泣いてから、ロゼッタはようやく落ち着いた。

「おにいさま、ごめんなさい。もう大丈夫です」

 ロゼッタはそう言って、涙を拭いながら微笑む。すると、アイザックは涙をハンカチで拭ってくれた。

「いいんだよ。僕の前でならいくらでも泣いていいんだからね」

 そう言って、アイザックは優しく髪を撫でてくれる。そんな彼に心まで満たされながら、ロゼッタは微笑んだ。

「はい、ありがとうございます」

 すると、アイザックも嬉しそうに微笑む。そして、もう一度だけ頭を撫でてくれたあと、立ち上がった。

「さて、そろそろ戻ろうか」

 そう言って手を差し伸べてくれるアイザックに微笑み返してから、ロゼッタは彼の手を取る。二人で東屋を出て、宮殿に向かって歩き出した。
 アイザックはロゼッタの手を引いて、ゆっくりと歩いてくれる。彼の優しさを感じながら、ロゼッタは穏やかな気持ちに包まれていた。

 しばらく歩いて、東屋が見えなくなってきた頃、アイザックがふと足を止めた。
 どうしたのだろうと思って見上げれば、宮殿からコーネリアスがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「父上だ」

 アイザックはぽつりと呟いて、わずかに身を強張らせる。
 ロゼッタも緊張しながら、父の様子をうかがった。
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