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42.不思議なこと
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アイザックの手助けもあり、無事に白百合を入手できたロゼッタは、自室に戻るとすぐに準備に取りかかった。
といっても、やることは少ない。
「セレサ、花瓶を用意してもらえる? 空色の綺麗なものがいいわ」
「かしこまりました」
侍女のセレサにお願いすると、彼女はすぐさま水差しや花鋏などと共に用意してくれる。
それらをテーブルの上に置くと、ロゼッタは手際良く百合の茎を切りそろえていった。
「……ロゼッタ様、何かなさるのでしたら私がいたしますので……!」
「ありがとう、でもこれくらい自分でできるから平気よ。それに……わたしがやりたいの」
慌てた様子でセレサが申し出てくれるが、ロゼッタは作業の手を止めずに穏やかに笑んで返した。
やがて花瓶に活け終わったロゼッタはそれを窓辺に置く。
陽光を浴びて輝く百合は瑞々しく鮮やかで、芳しい香りを放っていた。
かつてニーナは、この花のように凛とした気品ある女性になりたいと思ったものだ。
「これでよし。あとはおとうさまを待つだけね」
ロゼッタは一人そう呟いて満足げに微笑んだ。
夕方に会おうとコーネリアスは言っていた。もうそろそろやって来ても良い頃合いだろう。
早く来てほしいという気持ちと、不安と緊張から逃げたい気持ちが入り交じる。
そんな矛盾した思いを抱いているうちに時間はあっという間に過ぎていき、ついに扉がノックされる音が部屋に響いた。
ロゼッタは一つ深呼吸をしてから、ゆっくりとドアの方を振り返る。
「どうぞ……」
静かに発したその声に応えるように扉が開かれ、そこからコーネリアスが現れた。
彼は足早にこちらへと歩み寄ってくると、ロゼッタの頭を撫でてくる。その大きな手に触れられると、不思議と落ち着きを取りもどすことができた。
「ただいま、ロゼッタ」
「おかえりなさいませ、おとうさま」
ロゼッタが笑顔を向けると、コーネリアスも嬉しそうに顔をほころばせて見つめ返してくれた。
「今日は何をして遊んでいたのかな?」
「あ、あの……今日、不思議なことがあったんです……! 庭園で黒髪の女の子と会って……私と同じ紫色の瞳をしていました」
意を決して、ロゼッタは口を開く。
その途端に、彼の目が驚愕に大きく開かれたのを見た。
「黒い髪……紫の瞳……まさか……いや、そのような……」
コーネリアスは独り言のように何事かをぶつぶつと口にする。
困惑して動揺したようではあったが、それも一瞬のこと。次の瞬間にはいつもどおりの優しげな笑顔を浮かべていた。
といっても、やることは少ない。
「セレサ、花瓶を用意してもらえる? 空色の綺麗なものがいいわ」
「かしこまりました」
侍女のセレサにお願いすると、彼女はすぐさま水差しや花鋏などと共に用意してくれる。
それらをテーブルの上に置くと、ロゼッタは手際良く百合の茎を切りそろえていった。
「……ロゼッタ様、何かなさるのでしたら私がいたしますので……!」
「ありがとう、でもこれくらい自分でできるから平気よ。それに……わたしがやりたいの」
慌てた様子でセレサが申し出てくれるが、ロゼッタは作業の手を止めずに穏やかに笑んで返した。
やがて花瓶に活け終わったロゼッタはそれを窓辺に置く。
陽光を浴びて輝く百合は瑞々しく鮮やかで、芳しい香りを放っていた。
かつてニーナは、この花のように凛とした気品ある女性になりたいと思ったものだ。
「これでよし。あとはおとうさまを待つだけね」
ロゼッタは一人そう呟いて満足げに微笑んだ。
夕方に会おうとコーネリアスは言っていた。もうそろそろやって来ても良い頃合いだろう。
早く来てほしいという気持ちと、不安と緊張から逃げたい気持ちが入り交じる。
そんな矛盾した思いを抱いているうちに時間はあっという間に過ぎていき、ついに扉がノックされる音が部屋に響いた。
ロゼッタは一つ深呼吸をしてから、ゆっくりとドアの方を振り返る。
「どうぞ……」
静かに発したその声に応えるように扉が開かれ、そこからコーネリアスが現れた。
彼は足早にこちらへと歩み寄ってくると、ロゼッタの頭を撫でてくる。その大きな手に触れられると、不思議と落ち着きを取りもどすことができた。
「ただいま、ロゼッタ」
「おかえりなさいませ、おとうさま」
ロゼッタが笑顔を向けると、コーネリアスも嬉しそうに顔をほころばせて見つめ返してくれた。
「今日は何をして遊んでいたのかな?」
「あ、あの……今日、不思議なことがあったんです……! 庭園で黒髪の女の子と会って……私と同じ紫色の瞳をしていました」
意を決して、ロゼッタは口を開く。
その途端に、彼の目が驚愕に大きく開かれたのを見た。
「黒い髪……紫の瞳……まさか……いや、そのような……」
コーネリアスは独り言のように何事かをぶつぶつと口にする。
困惑して動揺したようではあったが、それも一瞬のこと。次の瞬間にはいつもどおりの優しげな笑顔を浮かべていた。
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