処刑された人質王女は、自分を殺した国に転生して家族に溺愛される

葵 すみれ

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45.もうすぐ

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 それから、穏やかな日々が過ぎていった。
 ロゼッタは父の宮殿で暮らし、兄と遊んだり、義母とお茶を楽しんだりしていた。
 もちろん勉強も怠っていない。毎日の学習はもちろんのこと、礼儀作法にダンス、そして乗馬の練習もしている。

 何より嬉しかったのは、コーネリアスとブリジットの関係が以前よりもずっと良好なものに変わっていったことである。
 コーネリアスも少しずつではあるが、ブリジットに対して愛情を持って接することができるようになっていったらしい。
 時折、家族そろって食事をする機会が増えてきたのは喜ばしかった。

「ねえ、セレサ……もしかして、セレサは側妃になりたかった?」

 ある日、思い切ってロゼッタはそんなことを尋ねてみた。
 もともとセレサはブリジットが側妃候補として送り込んできた侍女だ。しかし、コーネリアスとブリジットの仲が改善したため、宙に浮いてしまっている。

「いいえ、私はロゼッタさまにお仕えできればいいと思っていますよ。ブリジットさまが国王陛下と仲睦まじくされているのを見て胸を撫で下ろしていますし、ご安心なさってくださいませ」

 いつものように優しい笑みを浮かべ、彼女は答えてくれた。その表情には影は一切ない。
 本当に今の状況に満足してくれているようだった。

「……ありがとう、セレサ」

 ほっと胸を撫で下ろすロゼッタだったが、ふと別のことを思い出す。

「そういえば、側妃の座を狙っていた侍女たちはどうなったのかしら……?」

 ロゼッタは首を傾げつつ呟く。
 以前、ロゼッタを不安がらせて操り、自分たちを側妃にするよう進言させようと企んでいた侍女たちがいたのだ。
 王妃のことを低く扱うなど、不敬な態度が目に余った。
 しかし、セレサがロゼッタの専属侍女としてやって来てからは、姿を見かけた覚えがない。

「ああ、例の方々なら、配置換えされましたよ」

「まあ、そうだったのね」

 あっけらかんとした様子で告げられ、ロゼッタも納得する。
 さほど興味もなかったので、それ以上深くは聞かなかった。
 しかし、セレサは苦笑してこう話を続ける。

「実はですね……彼女たち以外にも側妃の座を狙っている者は少なからずいて……その方たちも色々とやっているようなのです」

「そうなのね……」

 ロゼッタは小さく息を吐きながら返事をする。
 未だに諦めていないのかと呆れつつも、そういう人が後を絶たないのは仕方がないのかもしれないとも思う。

「もうすぐ建国祭ですし、そのときに新しい側妃の発表があるのではないかという噂で持ち切りですよ」

 セレサはため息交じりにそんなことを言った。

「そんな噂まであるのね。それも、貴族派が流したデマではないのかしら?」

「……ところが、そうでもないんですよ。国王陛下が、妃に関して何か発表するというのだけは本当みたいですから……」

 ロゼッタは、セレサの言葉を聞いて目を丸くした。
 まさか今さら側妃を迎えるとでもいうのだろうか。いや、あり得ない。
 今ではコーネリアスとブリジット、アイザックにロゼッタの四人で食事をすることも多くなってきた。そのときに、そのような話は出てこない。

「それなら、母さまに関して……? よくわからないわね」

 だが、さほど心配することもないだろう。
 ロゼッタはそう結論づけて、考えることをやめることにしたのだった。
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