染谷君は知らない滝川さんはもっと知らない交差するキュンの行方とその発信源を

黒野 ヒカリ

文字の大きさ
3 / 54

滝川さんに屋上に連れて行かれた件

しおりを挟む



 翌朝、早目に登校して席に座った私はヤツが来るのを今か今かと待っていた。

 獲物を見付けた猛獣の様な鋭い眼差しで入り口を見つめる私に、すでに登校している周りの生徒はビクビクしているみたい─────

 「なぁ今日の滝川さん怖いんだけど」

 「確かに…」

 「あれの日?」

 「それなら俺に言ってくれれば良いのに!」

 「お前に言ってどうすんのよ…」

 変な方向に話が進む思春期男子の話にピクピクと青筋が浮かび上がる私は、『偽装の彼氏』の事など忘れ、怒りの感情しかなかった。

 (これも全部アイツのせいよ!許さないんだから!)

 獲物を探す猛獣となった私は入り口に狙いを定める。

 扉が開き、ヤツが入って来るのが見えると勢い良く席を立ち、ヤツに近いて手首を掴むと、強引に引っ張って教室を出て行った。

 私達がいなくなった教室がざわついていたけど気にしない。

◇◇◇

 「ちょっ、ちょっと滝川さん痛んだけど?」

 「うるさい!黙って付いてきて!」

 滝川さんにわけもわからず強引に引っ張られ、階段を上り、屋上まで連れてこられたところで滝川さんはやっと僕を掴んでいた手を離した。

 「はぁ、ここまで連れてきて何ですか?昨日の事なら断ったんですけど?」

 強引に連れてこられたので僕が不機嫌そうな顔を見せたとたん滝川さんは僕を捲し立てた。

 「どうやって私の計画に気が付いたか知らないけど、何であんたなんかにフラれなきゃいけないのよ!」

 額の血管がキレそうな滝川さんは怒り任せだろう言葉を僕にぶつけてくるのだけど何故?
 告白罰ゲームで僕の事を嵌めようとしたくせに失敗したからって八つ当たりをするのはどうかと思う。

なんだろう……

少しムカついてきた

 「そんなもん分る!絡んだ事も無いのに告白とかあり得ないでしょ?ゲームに負けたからって八つ当たりするのはやめてくれない?」

 「はぁ!?八つ当たりじゃないし!ゲームって何よ!確かにゲームみたいだけどゲームじゃないし!私は計画通りに真面目にやるつもりだし!
 そもそも何でフラれなきゃいけないの?
 こう見えて私かなりモテるし!スタイルもいいし!頭もいいし!運動神経いいし!どこに不満があるのよ!」

 僕の態度に完全にキレた滝川さんは後半の自画自賛には気づかずに怒りをぶつけてくる。

(あっ……ヤバイ……)

 そう思った僕の中で何かが外れ、今まで感じた事のない感情が溢れ出すと、自分でも驚く程の口調で滝川さんを責め立てる。

 「どう見ても八つ当たりでしょ!それにどう見てもゲームだわ!そんな無駄な事に時間使ってる暇があるならトイレに入ってお尻を拭いてた方がまだマシだからな!」

 「はぁ?私の計画よりお尻を拭いてた方がマシって言うの?」

 「そう言ったんだけど?もう一度言おうか?お尻を拭いてた方がマシ!」

 僕とのやり取りで怒りの沸点が振り切れた滝川さんは「キィィィィ~!」っと雄叫びを上げて僕に飛び掛かってきた。

 その姿は校内No.1のモテ女子の姿では無くただの猛獣だった。

 そんな事よりも突然飛び付いてきた滝川さんの勢いと重さでバランスを崩した僕は、滝川さんを抱き締める形で地面に倒れてしまう。

 倒れた状態で抱き締める形になった僕と滝川杏子は目が合った。

 その瞬間、二人の時が止まった。

 ───────

 「キャャャャャャャ!」

 時間にして数秒、止まった時間の中で僕と見つめ合った滝川さんは悲鳴を上げながら振り上げた右手で僕の頬にビンタを張り、勢いよく体を起こして離れ、ブルブル震えながら「ケダモノ!!」と叫び僕を睨み付けた。

 いきなり飛び掛かられ、倒され、おまけにビンタまでされた僕の怒りはフルロットルで上昇し、今まで使った事がない言葉がスラスラと出てくる。
 
 「お前が飛びかかってきたせいでこんな事になったんだろうが!ケダモノはお前だろ!」

 学園イチのモテ女子の滝川さんの事を『お前』呼ばわりした僕は勇者だと思う。

(この不思議な高揚感はなんだろう、僕じゃないみたいだ)

 そんな事を思う僕にプルプルとする滝川さん

 「お、おま、お前って私に言ったの?」

 「そうだ!お前に言ったんだよ!お・ま・え!」

 「お前なんてお父さんにも言われた事、無いのに…」

 どこかで聞いた事のあるセリフを吐く滝川さんは何故か泣き出してしまった。

 「ぐすん、何でこんな事になってるのよ…ぐすん、ただ平穏に生活したかっただけなのに…ぐすん」

 泣いている滝川さんを見ると言い過ぎたかな?と思ってしまうけど不思議な高揚感を感じている自分の事を抑える事ができない僕はタメ息を吐いた。

 「はぁ、平穏に暮らしたいなら変なゲームなんてしないで普通にしてたらいいのに」

 「あんたに何が解るのよ!毎日、毎日告白されてしんどいのよ!」

 「だったら僕じゃなくて告白してきた男で遊べばいいんじゃないか!」

 「そんな事したら変な勘違いされて余計に面倒くさい事になるでしょ!」

 変な勘違いってなんだろう?

 僕に対して告白罰ゲームをしたのだから告白してきた男子で遊ぶ事とたいして変わらないと思った僕はその旨を滝川さんに伝える。

 「お前に興味のない奴に告白罰ゲームしたりした方が余計に面倒くさくなると思うけど?」

 「そんな事ない!そっちの方が逆に面倒くさくならないから!」

 「怨みを買って酷い事されるかもしれないよ?」

 「確かにそうかもしれないけど、でも、でも……ぐすん、告白罰ゲームってなによ…酷い…」

 下を向く滝川さんはそのまま黙ってしまう。

 (なんか会話がずれてる気がする、なんだろうこの違和感…)

 泣いている滝川さんを見ながら心に引っ掛かる違和感に僕は頭を捻って色々と考えてみてた。
 でも、答えが見つからない僕は滝川さんに聞いてみる事にした。

 「あのさ、告白罰ゲームじゃないの?」

 「だから、告白罰ゲームって何よ…ぐすん」

 滝川さんの言葉で僕の感じた違和感は滝川さんが僕の事が好きだった為に僕の思っている事と違っていたんだ。

 そう思ってしまうと僕の心は酷い事を言ってしまい、悪い事をしてしまったと後悔の念で押し潰されそうだった。

 「ごめん、滝川さんが本当に僕の事が好きだったって知らなくて…」

 勘違いとは言え泣かせてしまい、心に傷を負わせてしまった滝川さんの事は必ず幸せにすると心に誓い、僕は素直に謝った。

 「えっ!?好きじゃないわよ?」

 「好きじゃないんかい!」

 僕は滝川さんに食い気味にツッコミを入れた。

 それと同時にすれ違いから始まった二人の歯車が少しずつ回り始めるのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...