染谷君は知らない滝川さんはもっと知らない交差するキュンの行方とその発信源を

黒野 ヒカリ

文字の大きさ
13 / 54

公園で三者会議が始まった件

しおりを挟む


 公園では三者会議が始まろうとしている。

 私は付き添いだけど空気が重い。

 ベンチに並んで腰かける杏と宮田さんの前には興奮している二人に正座を命令された染谷君が下を向いて正座をしている。

  険悪な雰囲気にいてもたってもいられなくなった私は座っていたベンチを立ち上がり、近くにある自動販売機まで行って缶コーヒーを買って杏と宮田さんの二人に手渡した。 

 (あっ、染谷君の買ってくるの忘れたけどまっいっか) 

 「と、とりあえずさ、飲んで、落ち着いて」

 「ありがとう美織」

 「ありがとうございます」

 受け取った缶コーヒーを飲み始める二人に私は少しホッとした。

 (このまま少し落ち着いてくれればいいけど…)
 
 私はタメ息を吐いた。

◇◇◇

 缶コーヒーを飲み、少し落ち着いた私は滝川さんに質問をする。 

 「滝川さんは、賢くんといつから付き合っているんですか?」

 少し考えた素振りをみせた滝川さんは「三日前?」と答えた。

 「三日前ですか……」

 そう言って黙る私に滝川さんも質問してきた。

 「宮田さんはいつから付き合ってるの?」

 この質問には私は焦る。

 「えっと、付き合ったのは、えっと、付き合ってるというか、えっと、あの…」

 慌てる私を見た北澤さんが爆弾を落としてきた。

 「まさか!付き合ってない…とか?」

 北澤さんに言われビクンっと体が震えた私は目が泳ぐのがわかった。

 「あははは、そっか~宮田さんは付き合ってないのかぁ~」

 「……」

 何も言わない私にさらに話しかける北澤さん。

 「宮田さんは、染谷君の事好きなの?」

 「……はい」 

 「そっかぁ~」

 「でも、滝川さんには勝てそうもありません…」

 「大丈夫だと思うよ!」

 「ムリですよ」

 「大丈夫、大丈夫、杏は偽装彼氏だし!」

 「えっ!?偽装彼氏ってどうゆう事ですか??」

 「あっ!!しまった!!」

 偽装彼氏の事をバラしてしまった北澤さんは油の切れた機械の様に顔を滝川さんに向けると、頬を膨らます滝川さんに笑顔を見せて舌を出した。
 
 そして、

「ごめん、やっちゃった」

 最後の言葉を残し、北澤さんは公園から逃げ出した。

◇◇◇

 逃げ出した美織の後ろ姿を見ている私は、秘密の話はニ度と美織に大切な話をしないと誓った。

 そして美織が逃げ出したあと、私と宮田さんはしばらく互いの事情を話し合っていつの間にか互いの事をフレンドリーに呼び合うほど仲良くなっていた。

 「ねぇ、ねぇ、紗枝ちゃんは賢のどこが好きなの?」

 「えーと、好きとかじゃ表現できなくてもっとこう運命みたいな感じかな?」

 「運命みたいな感じ?よくわからない…」

 「えっと、私と賢くんは同じ病院で同じ日に生まれたんだ」

 「そうなの?凄いね!」

 「でしょ?小学校から高校ニ年までずっと同じクラスだったんだよ?運命だと思わない?三年になってクラスは別になったんだけどね…」

 「三年は別々でもそれまで一緒だったんだよね?なら運命だよ運命!あっ…、なんかごめんね…」

 「どうしたの?急に謝って?」

 「ほら、私が賢と偽装彼氏しちゃた事……」

 「ああ、その事ね、杏ちゃんにも事情があったんだし別に賢くんの事好きじゃないんだよね?」

 「えーと…」

 「えっ!?好きなの?」

 紗枝ちゃんに好きなの?と聞かれてなぜか心に引っ掛かった私は首を大きく横に振った。

 それを見た紗枝ちゃんは安心した顔で「良かった」と言った。

 女子トークを繰り広げた私と紗枝ちゃんは日が落ちて暗くなるまで話しを続けた。

 二人で歩く帰り道でLIMEを交換して別れ道まで楽しくお喋りを楽しんだ。

 自宅につくと美織が逃げた事を思い出した私は、苦情のLIMEを送った。

◇◇◇
 
 すっかり暗くなった公園には完全に存在を忘れ去られて正座をしたままの僕がいる。
 
 (僕は何をしているのだろう……)

 そんな事を思う僕は星を眺めている……

 正座をしながら……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。 率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。 一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。 己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。 が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。 志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。 遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。 その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。 しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

処理中です...