染谷君は知らない滝川さんはもっと知らない交差するキュンの行方とその発信源を

黒野 ヒカリ

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転校生がやってきた件

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 夏休みが終わり学校が始まった。

 皆に誕生日を祝ってもらったとはいえ、高校最後の夏のアニメフェスに行けなかった事を少し引きずる僕は机の上にだらしなくもたれている。

 やる気が起きない僕は、近くで話す滝川さんと北澤さんに耳を傾けている。

 言っておくけど盗み聞きではない。

 聞きたくなくても聞こえてくるので耳を傾けているのだ!

 「ねぇ杏、知ってる?今日転校生がくるんだって」

 「へぇ~、この時期に珍しいね」

 転校生?滝川さんが言ったとおり高三の夏休み明けに転校生がくるのはかなり珍しいと思う。

 滝川さんと北澤さんと同じように転校生がくる事を知っている周りのクラスメイトもどんな人がくるのか話しているけど僕は全く興味がない。

 そして、先生が教室に入ってくると全員自分の席に着く。

 「はい、知ってる人もいると思うが転校生を紹介します。はい、どうぞ」

 先生がそう言うとガラガラと扉が開き男が入ってきた。

 入ってきた男は身長が180㎝ぐらいで端整な顔立ち、艶々とする黒髪をなびかせるイケメンっぷりにすぐに周りの女子が騒ぎ出す。

 「はーい静かに!転校生が喋れないだろ!」

 先生の声に騒いでいた女子が静かになると男がゆっくりと進み、黒板の前に立つと自己紹介をした。

◇◇◇
 
「皆さん始めまして、有坂尚輝ありさかなおきと言います。気軽に喋りかけてくれると嬉しいです。卒業まで短い期間ですが、よろしくお願いします。」

 俺の自己紹介が終ると教室は女子達の拍手と黄色い声があがった。
 俺がそんな女子達に向けて笑顔を見せるとさらに騒がしくなる。
 慣れているが好きでもない女子にキャーキャーされても正直少しうっとおしい。
 そんな女子達の騒がしい空気に、先生が怒り出し、やっと静かになった。

 ここも前の高校と同じ感じになってしまうのではと不安になる……

◇◇◇

 休み時間になると有坂くんは女子達に囲まれていた。

 「有坂君の趣味はなに?」

 「部活とか入ったりするの?」

 「有坂君、彼女はいる?」

 「有坂君はカラオケ好き?」

 「ちょっと、しれっと誘わないでよ!」

 質問攻めにされる有坂くんは苦笑いを浮かべている。

 「そんなにいっぺんに質問されたら答えきれないよ、それに喧嘩はやめてね」

 有坂くんを囲む女子達は笑顔で優しい口調の有坂くんに一瞬にして心を奪われみたいで素直に返事をした。

 「「「「はーい」」」」

 声を揃えて返事をした女子達の頬は赤く染まっている。

 それを見ながら僕は机に組んだ腕に顔を埋めた。

◇◇◇

 お昼休みになると弁当を抱えた女子達に誘われる俺は断りの返事をして笑顔を見せた。

 その笑顔で断られた事に納得してしたのか女子達が俺から離れるのを見て席を立ち、ある人物がいる場合に行った。

◇◇◇

 僕は滝川さんと北澤さんと一緒に弁当を持っていつもの中庭の木の下に移動しようとしていたけど、

 「ちょっといいかな?」

 有坂くんが僕達に向けて声をかけると滝川さんが返事をする。

 「なに?なんか用?今からお昼を食べに行くんだけど?」

 滝川さんの素っ気ない態度に苦笑いを浮かべる有坂くん

 「それに混じってもいいかな?」

 苦笑いから一転、有坂くんはイケメンスマイルを浮かべた。

◇◇◇

 笑顔の有坂くんの笑顔に少し気持ち悪いと思う私は断ろうとしたんだけど───


 「いいじゃん、いいじゃん、杏一緒に食べようよ、ね、ね、ね」

 食い気味にそんな事を言う美織の勢いに思わず「わかったよ」と返事をしてしまった。

 勝手に決めるのはやめてほしいと思う。

◇◇◇

 私達に近づいて一緒についてくると言っている有坂くんの視線は明らかに杏に向いていた。
 杏に好意を寄せる男子を散々見てきた私は、有坂くんが見せるその視線はすぐにその男子達と同じだとわかった。

 有坂くんに嫌な表情を見せる杏はきっと断ってしまう。
 私は杏が断る前に援護射撃をした。

 杏には悪いと思ったけど杏と有坂くんが付き合ってくれたら染谷君と付き合える確率があがる。

 そんな事を考える私は悪い女だと思う。

 でも、もう染谷君への気持ちは抑えきれないんだ……。

 (ごめんなさい、杏……)

 私は心の中で杏に謝った。

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