染谷君は知らない滝川さんはもっと知らない交差するキュンの行方とその発信源を

黒野 ヒカリ

文字の大きさ
36 / 54

学園祭の準備をしてる件①

しおりを挟む


 放課後、私は染谷君と一緒に学園祭の小道具を作っている。
 
 二人きりの空間に私の心は弾み、早くなる胸の鼓動で『何か起きるかも』と期待している自分がいる。

 お昼休みに綺麗になった紗枝ちゃんを見て焦り、勢いに任せる形で『賢』と言ってしまったけど、良かったと思ってる。

だって、

 「ねぇ、賢」

 ───こうやって呼べるようになったのだから。

 「へっ?」

 私に名前を呼ばれてそんな返事をする賢を見てにやけてしまう。
 嬉しくて用もないのに呼びたくなる賢の名前……

 カラオケでもどさくさに紛れて呼んだけど、恥ずかしくて『賢』って呼べなくなってたから紗枝ちゃんには少し感謝している。

 これでやっと杏や紗枝ちゃんと並べたかな?

 黙々と小道具作りをしている賢を見ながら私も手を動かしていく。


◇◇◇


 小道具を一つ仕上げた僕は満足のいく仕上がりに一息吐く。

 北澤さんに賢と何度も呼ばれて集中力を乱されたけど僕は頑張った。
 名前を呼ばれて振り向いても北澤さんはニコニコして「別に」と言うばかりで何がしたいのかわからなかった。

 「ねぇ、賢」

 「どうしたの北澤さん」

 またかと思ったけど僕が返事をすると北澤さんはニコニコしたまま何も言わない。

 このやり取りを何回すればいいのだろう。
 
 終わりが見えないリピートと、思うように小道具作りが進まない事で少しイラッとした僕は「北澤さん!」と少しだけ声を荒げたのだが、「なあに、賢」と嬉しそうに返事をする北澤さんを見て全てを諦めた。
 
 「ねえ賢、私のお願い覚えてる?」

 急に真面目な顔をした北澤さんがそんな事を言っているが、北澤さんの言うお願いが全く記憶のない僕は首を傾げる。
 
 「覚えてないんだ……」

 北澤さんは肩を落とし、どんよりとした空気を纏い、表情を曇らせた。

 (これはマズイ、お願い?全然思い出せない)

 「やっぱり覚えてないんだね、その顔見たらわかるよ......」

 「いや、えーと、その一……」

 僕の態度に北澤さんはタメ息を吐いた。

 「あのね賢、カラオケで言ったよね、私の事『美織』って呼んでって」
 
 僕は北澤さんに言われてやっと思い出せた。

 そういえば、カラオケでそんな事を言っていた。
 
 「だから、さっきの北澤さんはやり直し!」

 「はい?」

 「はい?じゃなくてやり直し!」
 
 「はい、み、美織……」

 「なあに、賢」

 ニコニコと返事をする北澤さんと僕は、このやり取りを北澤さんが満足するまでさせられた。

 小道具作りが全くできないんですけど……


◇◇◇


 私は有坂くんと一緒に学園祭で使う衣装合わせの為、小道具作り担当の賢がいる教室へ向かっている。
 そこには美織もいてすごく気まずい。

 私はカラオケに行った後から一言も口を聞いていないし、あれだけ頻繁にしていたLIMEも全くしなくなった。
 多分私は美織に嫌われているんだろ。理由はわからないけど……

 今はお昼休みだって私は有坂くんと過ごしている。
 皆と過ごさなくなって一ヶ月がたったけど全然慣れない。

 『辛いことは時間が解決してくれる』て言うけどウソだと思う。だって今でもすごく辛いから……

 教室に行って美織と賢が仲良くしてるのを見るのは耐えられる?
 もし、カラオケに行った時みたいに美織が賢に抱きついていたら? 

 色々考えると私の足は重くなる。

 「杏ちゃん、どうしたの?」

 有坂くんは首を傾げ私を見ている。

 私が「何でもない」と言うと有坂くんは私の手を握り、前に進む。

 有坂くんと手を繋いで歩く姿を賢には見られたくない。
 でも、自分の意思では前に進めそうにないので私は流れに身を任せ、教室へ向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...