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学園祭一日目が始まった件②
しおりを挟む僕は完成したあゆたん用の控え室のテントを感慨深く見ていた。
「感無量です、あゆたん」
僕はテントに向けて敬礼をする。
テントは僕によるあゆたん愛が詰まった空間にした。
あゆたんのポスターやプロマイドを張り巡らせ、自作で作った色々な表情がプリントされたTシャツを飾った。
「おっと忘れてた」
僕は出番待ちの間あゆたんが退屈しないようにタブレットとあゆたんが好きと公言している漫画をテントの中の机に置いた。
「これで、これで、完璧だー!」
腹の底から声張り上げた。
学園祭は二日あって、後夜祭も二日ある。
あゆたんの出番は後夜祭一日目のとりだ。
僕は二日目最終日のとりにするべきと言ったんだけど実行委員に却下された。
あゆたんへの熱意と情熱を熱く語っても実行委員の人達を納得させる事は出来なかった。
最終的に実行委員の教室を追い出されて一日目のとりに決まったけど何故追い出されたのかわからなかた。
でも、そんな事はどうでもいい。
今日あゆたんに会えるのだから
「口臭よし!鼻毛よし!髪型よし!服装よし!」
あゆたんが衣装の着替え用に置いてある全身鑑で声を出して身だしなみをチェックしていく。
僕があゆたんを案内するのだから身だしなみはちゃんとしなければならない。
「目の前であゆたんをみたら僕の心臓は止まってしまわないだろうか」
感情が高まり声が出てしまう僕はあゆたんが来るのを待っていた。
◇◇◇
「美織ちゃん、賢くん見なかった?」
「見てないよ、私も探してるんだけど見つからないんだよ」
私は学園祭を一緒に回ろうと賢くんを探していた。
あちこち探して美織ちゃんを見つけた時には喜んだけど、賢くんはいなかった。
「あゆたんが来るから賢準備するって言って何処かに行っちゃったんだよ」
あゆたんの事になると人が変わる賢くんはどんな事を仕出かすがわからないので心配だ。
また夏祭りの時みたいに喧嘩にでも巻き込まれたりしたら大変
私は美織ちゃんと協力して賢くんを探す。
あゆたんの準備をすると美織ちゃんが言ってたので後夜祭会場の体育館裏に行くと見慣れぬテントを発見した。
私はスマホを取り出し美織ちゃんにLIMEを送る。
『賢くん発見!体育館裏にて至急応援求む!』
「これでよし!」
私は美織ちゃんの到着を待つ事にした。
後は賢くんが出ないように見張るだけだ。
人が変わった賢くんを一人で止める自信は無い。
特にあゆたんの事になると恐ろしい程の暴走をしてしまう。
五分ほどすると美織ちゃんがやってきた。
「賢いたの?」
「うん、あのテントだよ」
「なんか、叫び声が聞こえて怖いんですけど…」
「これを乗り越えないと賢くんに会えないんだよ?美織ちゃんそれでもいいの?」
「それは……」
「なら頑張ろう!」
私と美織ちゃんは顔を見合わせて頷くとテントに突入した。
「賢くん、確保!」
「賢、確保!」
私が賢くんの右手に抱きつき、美織ちゃんが左手に抱きつき賢くんの動きを止めた。
「さ、紗枝、美織、どどうした?」
「どうしたじゃないよ、行くよ!」
「そうだよ、行くよ!」
私と美織ちゃんの息はピッタリと合い、最高のコンビネーションを発揮した。
「ち、ちょっ、紗枝も美織も離してくれ!あゆたんが、あゆたんが!」
「あゆたん煩いよ賢くん」
「本当に煩い、ねぇ賢」
私と美織ちゃんは賢くんを睨み付ける。
「で、でも、あゆたんが!」
「しょうがない、美織ちゃんこのまま行くよ!」
「そうだね紗枝ちゃん!」
私と美織ちゃんは賢くんを引っ張って無理矢理テントから引きずり出した。
「紗枝、美織やめて、やめてくれ!あゆたんが、あゆたんが!」
「「煩い!」」
私と美織ちゃんは同時に叫び賢くんを引きずって学園祭へと向かった。
「イヤァァァァァァァ!」
と賢くんの叫び声は本当に煩かった。
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