青いsquall

黒野 ヒカリ

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高島さんの奇妙な1日

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 高島さんは休日という日もいつもと変わらない。
 朝起きたらまず洗濯機回して家の中で水の音を聞く。それから昨夜寝る前に考えて決めていた予定行動を実践する。

 高島さんの家は古い。

 亡くなった祖母の家を引き継いでいるからだ。

 元々は個性的な両親の住む滝の近くの山の中で育ち、高校から祖母の家で暮らしてきた。

 高島さんは虫が苦手だった。嫌いではなく、苦手。

 彼らは予告もなく突然現れる、その行為が昔から苦手だった。

 虫だらけの山の中で生まれ育ったから祖母の家へ移る時は、これで虫サプライズとお別れ出来ると静かに喜んで来たのに、街の中の古い家というものが〝集まれ虫たちの家〟状態であることは住んでみて知ることになる。

 高島さんは水の音を聞きながら蚊取り線香に火をつけて玄関先に置く。
 虫を殺すつもりはない、入って来ないで欲しいだけ。

 でも悲しいことに高島さんは虫を擬人化していることに気づいてない。
 だから台所や窓近くではなく、人が出入りする玄関先に置く。

 また、玄関先には猫も来るために、その子たちに害がないように、ペット用の蚊取り線香を買って使用している。

 こうした見えない配慮が高島さんの長所だ。
 見えないということは人知れず、ということで、それは仕事でもいえることだった。

 休日は寝る前しか仕事のことは考えないが、朝番の富田さんのことはしばしば思い出すことがある。

 僕が彼女を名前ではなく〝化粧の濃い人〟と呼び、本人の前でもそれで通っていることに驚いていた。

 人と人はそれぞれの関係性に相応の化学反応があり、富田さんのそれはとても俗っぽいのだ。

 この仕事においては有能無能や年長年下にこだわらず、勤め始めたのが自分より先か後かで態度を変える。
 そんな富田さんを高島さんは嫌いにならない努力をしている。

 高島さんは朝食を食べるときに昼食のことを考える。
 昼食のときは夕食のことを考えて夜は翌日からの仕事を考える。

 カレンダーを見ながら次の休みまでの段取りと富田さん対策、上手くイメージ出来たらお風呂に入る。

 高島さんと話しながら仕入れた情報はまだこの程度だから、ナミちゃんに教えても喜ぶものが少ないと思っていた、だけど違った。

 ナミちゃんは高島さんのことならなんでも知りたがり、祖母の家に住んでいるということにも大袈裟に反応した。

 それからしばらくして店で会った時、

 「あれから私、歩いていて古いお家を見かけると高島さんの家かな?なんて思うからちょっとした外出も楽しくて楽しくて、颯太くんに感謝してます」

 そんなことを言ってくれるから、「情報の仕入れもっと頑張るから」となぜか張り切ってしまう。

 なぜか、また会いたいと思って

 ……なぜか?ん?
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