青いsquall

黒野 ヒカリ

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颯太と約束

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 大学へ向かう朝、私はいつものコンビニに向かう。

 店内に入ると高島さんの姿を探し、キョロキョロと辺りを見渡すと颯太くんと目が合った。

 会釈をしてサンドイッチを選んでいると後ろから声を掛けられた。

 「ナミちゃんごめんね、今日、高島さんいないんだ」

 「いえ、大丈夫ですよ」

 颯太くんとはだいぶ仲良くなった。
 高島さんがいない時でも颯太くんが話しかけてくれて高島さんのいない寂しい気持ちを埋めてくれる。
 私はいつものタマゴサンドを手に取り、颯太くんのいるレジに向かった。

 「ナミちゃん、ちゃんと食べなきゃダメだよ」

 バーコードを通したタマゴサンドを颯太くんがそう言って私に手渡した。

 「それ、高島さんにもよく言われてます。ふっふっ」

 颯太くんも高島さんと同じ事を言うのでなんだかおかしくなってしまった。

 「そりゃそうだよ、ナミちゃん細いし、いつもタマゴサンドだから栄養片寄っちゃうよ?」

 「ありがとうございます。でも私、タマゴサンドが好きなんです」

 「全く……」と言って颯太くんがレジを離れると、野菜ジュースを持ってきてバーコードをレジに通した。

 「ほらこれ持っていきな」

 私は差し出された野菜ジュースを見て、颯太くんに視線を移した。

 「えっでも……」

 「いいから、気にしないで。前の弁当のお返しだから」

 笑顔の颯太くんは手に持つ野菜ジュースをタマゴサンドの上に置くと後ろにいたお客さんの対応を始めた。

 あれは賄いで私が用意した物ではないので、 そう言われてもはいそうですかと素直に受け取っていいものか悩んでしまう。図々しい女と思われてしまわないだろうか?
 でも遠慮してると思われると颯太くんに失礼になるのか?
 朝からこんな事で悩む事になるなんて思いもしなかった。

 悩んだあげく、私はお客さんの対応が終わった颯太くんに近づいてお礼を言った。

 「勉強頑張ってね」

 親指を立てた颯太くんに頭を下げてコンビニを出た。

  高島さんもそうだが、颯太くんにまで気を使われる私は病弱にでも見えるのだろうか? 

 「たまには違う物でも買おっかな……」

 呟くと颯太くんから貰った野菜ジュースを口にした。

 「ナミちゃん、ちょっと待って!」の声に振り向くと颯太くんだった。

 「どうしたんですか?」

 「ちょっといい忘れた事があってね」

 慌てて出てきたのだろう、颯太くんは少し息を切らしていた。

 「今度の休みにでも飲みに行こうよ」

 笑顔の颯太くんにそう言われ、私の心拍数が跳ね上がる。

 颯太くんはかっこよくて、私の事を気にかけてくれる。
 そんな颯太くんに少しだけ惹かれてる私がいる。でも好きなのは高島さん。
 こんな気持ちで颯太くんと飲みに行ってもいいのかと考えてしまう。

 「ねぇナミちゃん、なんか難しく考えてない?僕はナミちゃんと純粋に飲みに行きたいと思っただけだよ。それに高島さんの情報もほしいでしょ?もしかして僕の事が気になったりしてるのかな?」

 図星をつく颯太くんに顔が真っ赤になるのが分かった。

 「そ、そんな事ないです。私は高島さんの事が好きなんですよ」

 「あはは、言っちゃったね」

 「あっ!」

 お腹を押さえて笑う颯太くんの顔が見れない。
 思わずしてしまった自分の発言に、恥ずかしくて顔を手で隠してしまった。

 「本当、ナミちゃんは可愛いね」

 「もぉ颯太くんやめて下さいよ」

 ポケットからスマホを取り出した颯太くんとLIMEを交換した所で、

 「颯太くん何してるの、お客さん待ってるよ!」の店長さんの声に「ヤベ」と呟くと、

 「ナミちゃん連絡する」と言って颯太くんは店内に戻って言った。
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