青いsquall

黒野 ヒカリ

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颯太くんと飲みに行きました①

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 週末になり、颯太くんとの待ち合わせ場所に向かった。
 場所は渋谷スクランブル交差点前の広場で、颯太くんの行き付けのお店に行くらしい。

 私は沖縄育ちのせいか、渋谷みたいに人が多い所が苦手であまり渋谷には来ない。

 渋谷駅を降り、待ち合わせ場所に向かうと沢山の人が交差点の信号待ちをしていた。

 初めてこの交差点を渡った時、人の波に呑まれた事を思い出した。
 東京の人は歩くのも速くて、おじいちゃんに抜かれたのは衝撃だっだ。

 腕時計で時間を確認すると、待ち合わせ時間五分前。
 するとすぐに颯太くんの声が聞こえた。

 「ナミちゃんお待たせ~、待ったかい?」

 五分前に来る辺りに颯太くんの気遣いを感じる。

 「私も今来たところです」

 「そっか、ナミちゃんを待たせないで良かったよ。行こっか」

 頷くと颯太くんの後ろに付いて行った。
 着いた場所はお洒落なバーで、かなりの場違いだと思ってしまった。

 「颯太くん、私こうゆうお店入った事無くて……」

 「大丈夫、大丈夫ほら」

 颯太くんはそう言って私の手を引き、扉を開け中に入る。
 まだ時間も七時とあってお客さんも角の席に座る一組だけだった。

 「マスター久しぶり」

 「おっ颯太くん、久しぶりだね、そちらの可愛らしいお嬢さんは彼女かい?」

 「違いますよー」

 「そうかい?手なんか繋いじゃってるのに?」

 クスリとするマスターにそう言われ、私は慌てて颯太くんの手を振り払った。
 お店の雰囲気に圧倒され、手を繋いでいた事をすっかり忘れていた。

 「もーマスター茶化さないで下さいよ」

 「ごめんごめん、好きな所に座っていいから」

 そう言ってマスターはカウンターの中へ入って行った。

 「ごめんねナミちゃん、マスターあんな感じだけどいい人だから」

 「いえ、大丈夫です。気にしてませんから」

 マスターがいい人なのは顔や雰囲気で分かるし、あれはちょっとしたコミュニケーションなのだろうと思ってるので私は気にしてはいない。

 「ナミちゃんはウーロン茶でいい?」

 「いえ、お酒にしようかな」

 「えっ!ナミちゃんお酒飲めないんじゃなかった?」

 「一杯くらいなら大丈夫です。お店の雰囲気的にウーロン茶だとちょっと違うかなって…お薦めってありますか?」

 「そっか、ならナミちゃんもロングアイランドアイスティーにする?すごく美味しいよ。ちなみに少しうんちくを言わせてもらうと、ロングアイランドアイスティーが旨い店は本物なんだよ」

 そうゆう事を知ってる颯太くんは、大人な男性って感じがした。

 「それじゃ、ロングアイランドアイスティーでお願いします」

 「了解、マスター!ロングアイランドアイスティー二つお願い!」

 マスターは返事をするとシェイカーに色々入れて振り始めた。

 シャカシャカとリズミカルな音が目の前で聞こえ、シェイカーを振るマスターの動きがすごくかっこよく見えた。

 「ナミちゃんどうしたの?」

 「なんかシャカシャカする動きがかっこよく見えて」

 「ありがとうお嬢さん」

 私の話が聞こえてたのだろう、マスターはそう言って出来上がったロングアイランドアイスティーを私の前に置いた。

 「ほらナミちゃん飲んでみて」

 颯太くんの声に私はグラスを持って口に運んだ。

 「美味しい」

 ロングアイランドアイスティーはアイスティーの味がしてお酒とは思えないほど美味しかった。

 「でしょ?美味しいって言ってくれて良かったよ」

 「はい、これなら飲めます」

 「あまり飲み過ぎないでね」

 颯太くんはそう言って微笑んだ。

 「はい」と返事をして出されたチョコを口にした。

 チョコとロングアイランドアイスティーの味が口の中で交わって本当に美味しかった。
 そして私は、あっという間にロングアイランドアイスティーを飲み干したのだった。
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