元ヤンの伝説のアイドルを吸血した1888年から来た吸血鬼には浮気調査専門興信所はちょっとつらい

k_tokyo

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第7章 追いかける夢

第2話 切り替えは早い

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行く先々でいじめられた。
"メガネ!メガネ!"って
しょうがないじゃん乱視が強いんだから!

だいたい日本人の半分は眼が悪いの!
まあちょっと見た目も暗かったかもしれないけど・・・・

 浅野  朱里(あさの あかり)
いったい何回教室の黒板に大きく名前を書かれたろう。

パパは銀行員で転勤族だったから
中学校に上がる迄は転校が多かった。
1年間で2回転校なんてこともあった。

だから友達も少なかったし、作り方も下手くそだった。
いじめられないように、気に入られようと話を合わせて
愛想笑いして、むちゃぶりされてもイヤって断れなかった。

転校するとき泣いてくれた子もいたけど、私は泣けなかった。
転校ぐらいで泣いてなんかいられないよ。

「いつも切り替えは早いんだ。」


中学・高校時代はさすがにパパは単身赴任してくれたので
転校することは無くなったんだけど、相変わらず友達は少なかった。

なんだか友達が欲しいと思わなくなった、もう愛想笑いにも疲れたし
人との距離感が分からなくなっていたから
ただ、嫌われたくは無かったから、どうしてもイヤとは断れなかった。



あの日パパが久しぶりに帰って来ていた。
でも知らない女の人も一緒にいた。
ママと3人でソファーのテーブルで向かい合っていた。

ママは泣いていた。
パパが私に「部屋に入っていなさい」と目を合わさずに言った。

何が起こっているかなんとなくわかったが、別居するって聞いたときは
さすがに落ち込んで泣いた。

しばらくして思いきって「離婚するの?」ってママに聞いたら
銀行に迷惑かけたくないからしないって、相手は同じ職場の人だし・・
でもそれって都合の良い言い訳だと思ったけど
ママは専業主婦だし、パパの収入が減ったらママと私も困るから・・

それからママがちょっとおかしくなって
私は家に居づらくなって
前から好きだったアイドルの”追っかけ”をするようになった。

パパがお金を出してくれるっていうんで、短大に進学した。
特に行きたい訳でもなかったし、将来なりたい職業も無かったけど
保母にでもなろうかなって。


”追っかけ”はすごく忙しい。ネット・SNS・TV・ラジオ・雑誌・etcを
いつもチェックしていないといけない。

仲間も多いけど”生き馬の目を抜く”というやつで”敵”も多いから
アンテナを立てて、誰よりも早く、ホントかウソかも見分けないと
騙されたりもする。

もちろん”遠征”にも行かないといけないから
バイトしてる暇も無かったので、パパからいっぱいお小遣い貰ってやった。

またしばらくしたら、パパがママを入院させるって連れて行った。
良かった、これで家に帰っても何も心配ない。
ひとりでもだいじょうぶ。だって前から変わらないし・・・・



「合コンカラオケ行かない?」と誘われた。
あんまり仲の良くない子だったけど
グッズ交換してもらってるから
イヤって断れなくて・・・・

相手はアイドルのたまごっていう男子3人組。

芸能事務所に所属してはいたけど、あまり力の無い所だったし
「うーん。いま、競争激しいからね~~」って
言う感じのパッとしない子達だった。

「メガネの彼女ー、名前なんていうの?」
「今日は、はっちゃけちゃオー。イエーーーー。」

今はSNSがあるから”裏”の面もすぐ晒されちゃう。
よっぽど普段の行動から気を付けていないと。
こんなチャラチャラしてたらダメだなー。

カラオケもぜんぜん楽しくないなあ。
彼らは歌唱力もないし、ただ奇声あげてるだけで
会話も自慢話ばかりしてるから退屈。
そもそもアイドルが女の子にモテ話しするっておかしくない
ホントにアイドルになりたいのかなあ。
ただ女の子と遊びたいだけじゃないの。

やっぱり断ればよかったなあ。


あれー。ちょっと飲み過ぎたのかな?
あんまり、普段お酒飲まないし、ふらふらするなあ。
ヤバイだめだ。目がまわる。目がまわる。



ちょっと なんだか重苦しい。

気持ち悪い、吐きそう。
イヤ、吐きたくないのに、口に指入れないで。

あっ。うつぶせにしてくれたの。
でもやっぱり 重いし、息苦しい
ダメ、指入れないで・・・・・



うーん、やっとめまいがおさまって、目が覚めた。
どれだけ寝ちゃったんだろう。

ここはどこだろう?カラオケ店じゃないな。
だれかの家なのかな?

あの3人組はまだいるのか。
でも他の子はどこいったんだろう?
3人でスマホでなにか観て笑ってる?

「あれ?、私、服着てないや。」



それから一層”追っかけ”に熱中した。
誰にも騙されない、邪魔されない、自由になった気がした。
もう前しか見ない。

「いつも切り替えは早いんだ。」
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