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第7章 追いかける夢
第3話 ババババババババ
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その日はきれいな満月だった。
いつものように劇場の裏手で”推し”を出待ちしてた。
ふと目の前のコンビニの建物の陰で
長く黒いコートを着た背の高い男の人が
たばこを吸うためにライターで火を点けているのを見た。
「いやいやそこ禁煙だから。」って思ったけど
よく見ると外国人なのか
色白い肌に彫りの深い目元
顎のラインもシャープで
名前はわからないが
有名な俳優によく似ている。
うわー凄いイケメン。
韓流スターもイケメン多いけど
なんか人種が違うというか。
思わず彼に見とれていたら
聞き覚えのある声がした。
「あれーこの間の彼女じゃん、名前なんだっけ?」
あの3人組が現れた。
この舞台の脇役で出ていたのをチェックし忘れていた。
「ねえ、今日も遊ぼうよ~。そうだ!面白い動画あるんだ。
いっしょに観ようよ。」
私は目を合わせないように、下を向いて逃げようとしたが
脚が震えてどうしても速く進めなかった。
「逃げないでよ、彼女お~。
逃げたらこの動画、他の人と観ちゃうよ。あははは・・・」
3人は面白そうに笑い合って言った。
もうダメだ、私はついに一歩も動けなくなった。
3人に囲まれて肩に手を回されて連れて行かれそうになった。
「イヤよ、イヤッ・・・・」かすれた声しか出せなかった。
「ババババババババ・・・・」
そうしたら、その時さっきまで見ていた
満月の方向から、何かが風を切って来る大きな音が聴こえたの。
後でフォロワーさんに言っても
誰も信じてくれなかったんだけど。
大きな満月を背にして
長く黒いコートを着たさっきのイケメンが
空高く飛んで来たんだ。
人とは思えないような
雰囲気を醸し出して。
スローモーションのように
優雅にそして美しく舞っていたの。
ずっと見とれていたのに
気が付いたら、あの3人組が居なくなっていて
スマホが3台フライドポテトのように
細長くきれいに縦に裁断されて落ちていたの。
そしてそのイケメンも何処かに去ってしまってた。
その後寝ても覚めてもずっとそのイケメンの
優雅な舞が目に焼き付いて、彼の事が頭から離れなくて
推しのアイドルの追っかけは中断して、その”飛んだイケメン”を追っかけたの
SNSで意見交換したり、外人モデルの事務所調べたり
でもいくら探しても、見つからなくて諦めかけてたら
いきなり私の家に彼が来たの!!!!!!!!!!!!!!!
玄関であの長く黒いマントを着た彼を見た瞬間
「あっヤバイ。幻覚見るようになった!」
って思ってそのまま目がまわって倒れてしまった。
うーん、やっとめまいがおさまって、はっきりしてきた。
どれだけ寝ちゃったんだろう。
ここはどこだろう?そうか私の家のソファーの上だ。
"飛んだイケメン"がスマホの画面を真剣に見てる。
「あれ?、私、服着てる。」
実は彼、浮気調査専門の興信所のエージェントだったの。
パパの浮気相手の御主人からの依頼。
向こうの家庭も別居してたけど、でも不倫してたって事は知らなくて
興信所に調査を頼んだらしい。すぐにパパとの関係がわかったけど
パパもいつかは暴露ると思っていたから、正直に話すことにして
外では会えないから、家で合うことになっていた。
しばらくしたら、パパが帰って来て彼と話していた。
内容は聞きたくなかったので、今度は自分から部屋に閉じこもっていた。
彼が帰った後珍しくパパはしばらく家にいた。
「大学生活はどうだ?」
そう訊かれたけど
「どうでもいいでしょ」って答えた。
そう、どうでもいいんでしょ、ママや私の事は、どうでも・・・・
パパはそれ以上は何も訊かなかったし、何も喋らなかった。
パパの帰り際にイケメンの名刺を見せてもらって
「紅 神司 あかい しんじ」って名前と興信所の住所がわかって
後日その興信所に行ったの。
どうしてもあの時のお礼が言いたくて。
神司くんはその長い足を組み、すこし斜に構えながら
私の事を綺麗な瞳で見つめていた。
私はその視線を避け俯きながら
「この前は助けてくれて、ありがとうございました。」と
普段よりしおらしい声でお礼を言ったの
でもなぜか神司くんは何も応えずに私を見続けていた。
私もその沈黙にどうしたらいいかわからずに
ただ下を向いて両膝に上に置いた手を固く握りしめていた。
もう耐えきれなくなった私は
「あの・・・どうして助けてくれたのですか?」と
思ってもいない質問をしていた。
「君がイヤって言ってたからだ。」
私はその答えに驚いて、初めて神司くんの瞳を見つめた。
「私イヤって言った・・・・・」
そしたら何だか突然涙が出てきて止まらなくなって・・・
全部話したのあの件も含めて、私が思っていたこと感じていたこと
神司くんはその間何も訊かなかったし、何も喋らなかった。
でも話し終えて涙と鼻水で濡れた私の握りしめた拳を
大きな彼の手のひらに乗せて言ってくれた。
「だいじょうぶだ。人生いろいろなことが起こる。
嫌なことがあったら、前を向いて
切り替えればいいんだ」って
あ~~、泣いた泣いた一生分泣いた。
そして決めたの私の"一生推し"はこの人だ。
神司くんを一生追っかけようって。
エージェント募集のポスターが、事務所の壁に貼ってあったのを見て
その日のうちに申し込んだ。
所長から短大卒業するまではバイトで
その後は見習いとして採用するって
一応神司くんの相棒として一緒に行動する。
神司くんちょっと嫌がったんだけど。
あとあの3人組だけど
3人とも顔に凄い傷を負ってしまって
芸能界を辞めたって、あと年配の男性が訪ねてきて
動画の件を話してきて、完全に削除させられて
私にこれから一切かかわりませんと謝罪文を送ってきた。
誰がそうしてくれたかは、察しはついているんだけど
みんなありがとう。
じゃ。Mysweet神司くんを追いかけるか!
いつものように劇場の裏手で”推し”を出待ちしてた。
ふと目の前のコンビニの建物の陰で
長く黒いコートを着た背の高い男の人が
たばこを吸うためにライターで火を点けているのを見た。
「いやいやそこ禁煙だから。」って思ったけど
よく見ると外国人なのか
色白い肌に彫りの深い目元
顎のラインもシャープで
名前はわからないが
有名な俳優によく似ている。
うわー凄いイケメン。
韓流スターもイケメン多いけど
なんか人種が違うというか。
思わず彼に見とれていたら
聞き覚えのある声がした。
「あれーこの間の彼女じゃん、名前なんだっけ?」
あの3人組が現れた。
この舞台の脇役で出ていたのをチェックし忘れていた。
「ねえ、今日も遊ぼうよ~。そうだ!面白い動画あるんだ。
いっしょに観ようよ。」
私は目を合わせないように、下を向いて逃げようとしたが
脚が震えてどうしても速く進めなかった。
「逃げないでよ、彼女お~。
逃げたらこの動画、他の人と観ちゃうよ。あははは・・・」
3人は面白そうに笑い合って言った。
もうダメだ、私はついに一歩も動けなくなった。
3人に囲まれて肩に手を回されて連れて行かれそうになった。
「イヤよ、イヤッ・・・・」かすれた声しか出せなかった。
「ババババババババ・・・・」
そうしたら、その時さっきまで見ていた
満月の方向から、何かが風を切って来る大きな音が聴こえたの。
後でフォロワーさんに言っても
誰も信じてくれなかったんだけど。
大きな満月を背にして
長く黒いコートを着たさっきのイケメンが
空高く飛んで来たんだ。
人とは思えないような
雰囲気を醸し出して。
スローモーションのように
優雅にそして美しく舞っていたの。
ずっと見とれていたのに
気が付いたら、あの3人組が居なくなっていて
スマホが3台フライドポテトのように
細長くきれいに縦に裁断されて落ちていたの。
そしてそのイケメンも何処かに去ってしまってた。
その後寝ても覚めてもずっとそのイケメンの
優雅な舞が目に焼き付いて、彼の事が頭から離れなくて
推しのアイドルの追っかけは中断して、その”飛んだイケメン”を追っかけたの
SNSで意見交換したり、外人モデルの事務所調べたり
でもいくら探しても、見つからなくて諦めかけてたら
いきなり私の家に彼が来たの!!!!!!!!!!!!!!!
玄関であの長く黒いマントを着た彼を見た瞬間
「あっヤバイ。幻覚見るようになった!」
って思ってそのまま目がまわって倒れてしまった。
うーん、やっとめまいがおさまって、はっきりしてきた。
どれだけ寝ちゃったんだろう。
ここはどこだろう?そうか私の家のソファーの上だ。
"飛んだイケメン"がスマホの画面を真剣に見てる。
「あれ?、私、服着てる。」
実は彼、浮気調査専門の興信所のエージェントだったの。
パパの浮気相手の御主人からの依頼。
向こうの家庭も別居してたけど、でも不倫してたって事は知らなくて
興信所に調査を頼んだらしい。すぐにパパとの関係がわかったけど
パパもいつかは暴露ると思っていたから、正直に話すことにして
外では会えないから、家で合うことになっていた。
しばらくしたら、パパが帰って来て彼と話していた。
内容は聞きたくなかったので、今度は自分から部屋に閉じこもっていた。
彼が帰った後珍しくパパはしばらく家にいた。
「大学生活はどうだ?」
そう訊かれたけど
「どうでもいいでしょ」って答えた。
そう、どうでもいいんでしょ、ママや私の事は、どうでも・・・・
パパはそれ以上は何も訊かなかったし、何も喋らなかった。
パパの帰り際にイケメンの名刺を見せてもらって
「紅 神司 あかい しんじ」って名前と興信所の住所がわかって
後日その興信所に行ったの。
どうしてもあの時のお礼が言いたくて。
神司くんはその長い足を組み、すこし斜に構えながら
私の事を綺麗な瞳で見つめていた。
私はその視線を避け俯きながら
「この前は助けてくれて、ありがとうございました。」と
普段よりしおらしい声でお礼を言ったの
でもなぜか神司くんは何も応えずに私を見続けていた。
私もその沈黙にどうしたらいいかわからずに
ただ下を向いて両膝に上に置いた手を固く握りしめていた。
もう耐えきれなくなった私は
「あの・・・どうして助けてくれたのですか?」と
思ってもいない質問をしていた。
「君がイヤって言ってたからだ。」
私はその答えに驚いて、初めて神司くんの瞳を見つめた。
「私イヤって言った・・・・・」
そしたら何だか突然涙が出てきて止まらなくなって・・・
全部話したのあの件も含めて、私が思っていたこと感じていたこと
神司くんはその間何も訊かなかったし、何も喋らなかった。
でも話し終えて涙と鼻水で濡れた私の握りしめた拳を
大きな彼の手のひらに乗せて言ってくれた。
「だいじょうぶだ。人生いろいろなことが起こる。
嫌なことがあったら、前を向いて
切り替えればいいんだ」って
あ~~、泣いた泣いた一生分泣いた。
そして決めたの私の"一生推し"はこの人だ。
神司くんを一生追っかけようって。
エージェント募集のポスターが、事務所の壁に貼ってあったのを見て
その日のうちに申し込んだ。
所長から短大卒業するまではバイトで
その後は見習いとして採用するって
一応神司くんの相棒として一緒に行動する。
神司くんちょっと嫌がったんだけど。
あとあの3人組だけど
3人とも顔に凄い傷を負ってしまって
芸能界を辞めたって、あと年配の男性が訪ねてきて
動画の件を話してきて、完全に削除させられて
私にこれから一切かかわりませんと謝罪文を送ってきた。
誰がそうしてくれたかは、察しはついているんだけど
みんなありがとう。
じゃ。Mysweet神司くんを追いかけるか!
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