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兄編

嫉妬

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フィルさんが出て行った後、俺は一人悶々としていた。
兄弟揃って俺のこと想ってるとか何かの冗談だと思ってしまいたくなるような話だが、嘘ではないようだった。
でも、そういえばレンはフィルさんはすぐに手を出すから、と言っていた。なら大丈夫だろう。
きっとすぐ冷める。

「今日また兄さんに会ったんでしょ?」
帰ってくるなりの第一声がそれで急になんだと身構える。
「そうだけど、?というかなんで知ってんの?」
「サキさんが教えてくれた。アツキ絶対何か変なこと言われたでしょ?」
「は?いや、まあそうかもしんないけど…」
「何言われたの?」
さっきからレンの纒う雰囲気がなんだかぴりぴりしている。
「いや、まあ…」
レンの言う通り狙ってるから的なことを言われたりもしたが、それを素直に伝えるのもどうかと思ってしまった俺は、言葉を濁してその場を切る抜けようとした。
「ねえ、ちゃんと言って」
無理だった。
「…はい。」
なあなあな感じでこの話を終わらせようという考えはレンの怒気によってあっさりと砕かれ、俺はことの顛末を話すことになった。
「はああ…」
「ちょっと、?大丈夫か?」
「なんでアツキはモテるんだろうなあ」
「はあ?モテてねえよ。」
いきなり何を言い出すんだ、と問うと、ちょっとだけ顔を顰めつつも話してくれた。
「仕事で街とかいくと、たまにアツキの話してたりするよ。レン様と歩いてた人かっこよかったよねって。」
「マジかよ…」
「マジだよ?だから俺はこんなに困ってんの」
「それは、ごめん。でも俺が好きなのはレンだけだからレンが嫉妬してくれたのはすごい嬉しい、って言ったらアレかもだけど嬉しかったよ。でも俺はレンにずっとそんな寂しそうな顔してほしくない」
「そう言うところだからな!…俺もアツキのこと大好き、愛してる。」
「嫌な思いさせてごめんな」
「いや、俺もごめん。でも、もうちょっと他の人との距離考えて、欲しい」
「おう、言っとくけどお前もな!」
「なんで俺?」
「さあな、じゃ、俺は仕事の続きするからお前も片付けしておけよ」
「…え?ちょっと???」
レンが他の人と話してるの見てモヤモヤするっていうのはまだレンには秘密にしておこう。
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