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兄編

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「やっほー」
「わっ、びっくりした。どうかしたんですか?」
「リアクションが冷たいなあ。まあいいやお邪魔しまーす」
昨日と同じ台詞を吐いて登場してきたフィルさんはこちら側の許可もなく勝手に部屋に入り込んできた。
「なんなんですか急に」
本当なら何の遠慮もなく家に上がってきたことに対して文句を言ってやりたくなるがこちらも一文なしの状態で置いてもらっているわけだから言える立場にないことが悲しい。
「ん?アツキくんとお話ししたいなって」
「はあ」
俺と話がしたいなんて珍しい人もこの世にいるものなんだな。
「はいこれどうぞ」
若干の不本意ではあるものの客人であることは確かなのでお茶とお茶菓子を出す。
「おおっ、ありがとう。気がきくねえ」
「そんな言われるほどのことではないと思いますが」
「アツキくんはいいお嫁さんになりそうだ。ところでアツキくんはレンのどこが好きなの?」
危うく口に含んでいたお茶を吹き出してしまうところだった。
「ゴホ、ゴホッ」
「ちょっと大丈夫?」
「ありがとうございます。大丈夫です、ちょっとお茶が変なところに入ってしまって」
「ならよかったよ」
「フィルさんはどうしてそんなこと聞くんですか?」
「僕の名前覚えててくれたんだ。嬉しいね」
そう言ってフィルさんは楽しそうに笑う。その笑いかたがレンに似ていて血の繋がりを感じた。
「俺さ、アツキくんのこと気に入っちゃって」
今までどこが楽しそうで気の抜けたような声だったフィルさんが少し低めの声で、それでいて目の奥に少しの熱が見えて動揺してしまう。
これだけ魅せられてしまうと次に出てくる言葉が何となく分かって恐くなる。
「…はい?どういう意味ですか?」
「結構そのままだと思うんだけど」
「えっと、多分相手間違えてると思いますが?」
「間違えてなんかないよ。俺はアツキくんが気に入った」
「それは、ちょっと」
「レンがいるもんね。大丈夫だよ。無理矢理奪ったりなんかしないから。」
「俺は、レンが、好きなので…」
「うん。今はそれでもいいよ。でも絶対いつか振り向かせるから」
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