転生したら唯一の魔法陣継承者になりました。この不便な世界を改革します。

蒼井美紗

文字の大きさ
153 / 173
第四章 交易発展編

153、農家との話し合い

 俺が皆の感想に感動していると、父上に頭をポンポンと叩かれた。父上を見上げると優しい笑みを俺に向けてくれている。

「フィリップ、良かったな」
「はい、父上。これから皆に協力してもらって、コメを広げていきます」

 そうしてこの場に集まってくれた全員の試食が終わり、体が悪くてこの場に来れないという家族がいる人にはコメをお土産で持たせて、お披露目は終わった。

「じゃあこれからは農家の皆に話があるから、それ以外の人は解散してくれて構わないよ。集まってくれて本当にありがとう」
「フィリップ様、楽しいひと時をありがとな!」
「あんた、しっかり話を聞いてくるんだよ!」

 俺の声かけにそんな声がたくさん返されて、とても賑やかに皆は各家に帰っていった。そうして少し静かになった広場で、今度は農家の皆に話をする。

「これからのコメの生産についてなんだけど、俺としては領地の半数の農家には今までの野菜の生産はやめて、コメの生産をしてもらいたいと思ってるんだ。これは父上も賛同してくださっている。でも最終的には皆の意見も聞いて決めたいから、遠慮なく意見を言ってほしい」

 俺がそう言って皆の顔を見回すと、若い男性が口を開いた。

「そんなに野菜の生産を止めたら、俺らが食べる分が足りなくなるんじゃないか?」
「うん。だからその分は他の領地から買ってくるんだ。とりあえずは王都から」
「わざわざ買うのか……?」
「そうだよ。その代わりにうちで作ったたくさんのコメは、王都や他の領地に売るんだ。それによって皆が食べられる食事の量は増えると思う」

 俺のその説明を聞いても皆はその仕組みを理解できないようで、何で作る量を減らしたのに食べられる量は増えるんだと不思議顔だ。

 もっとちゃんと説明しないとダメだな……父上のおかげでこの領地でもお金が使われてるから、ちゃんと話せば理解してもらえるはずだ。

「皆に作物を作ってもらうのに、十個の作物を並行して作るのと一つに特化して作ってもらうのだったら、一つの方が皆の労力は少ないよね?」
「それは当たり前だな」
「だから皆が作れる量も増えるでしょ?」
「まあ、そうだな」

 ここまでは皆の仕事に関することなので、問題なく理解してもらえたみたいだ。

「ということは、コメに特化して栽培してもらえば今までの生産量よりも増やすことができて、皆が今までと同じように食べたとしても余分が残るよね? それを他の領地に売るんだ。そうすると皆のところにはお金が残る。そこでそのお金を使って他の街から野菜を買えば……皆は今まで以上の量の食材を手に入れることができる。食材が足りてるならお金を貯めておいても良いし、家具や仕事道具、服とかいろんなものを買えるようになるよ」

 そこで言葉を切って皆が理解しているのを待っていると、何人かが納得顔で頷いてくれた。理解してくれる人がいれば、あとは皆で教え合ってくれるだろう。

「確かにそうなるな……そんなに上手くいくのか?」
「それは皆がどれほどの量のコメを栽培できるのかにかかってるかな。だからコメに労力を注ぎ込んで、できる限りたくさんのコメを作って欲しい」

 俺のその言葉に皆はやる気を刺激されたのか、「やってやるか!」とコメ栽培に意欲を見せてくれる。

「皆、ありがとう。じゃあ誰がコメの栽培をするのか決めて欲しいんだけど、話し合ってもらっても良いかな? さすがに全員ってわけにはいかないから、半分ぐらいが理想かな」
「分かったぜ。じゃあまずはコメを育ててみたいやつ、手を挙げてくれ」

 中年の男性が発したその言葉に、集まっていた農家の八割ほどが手を挙げる。おおっ……マジか。育ててくれる人が集まらないことは予想してたけど、集まりすぎるのは予想してなかった。

「さすがに多すぎるな。おい、爺さんの畑は小さいから野菜の方が良いんじゃねぇか?」
「そうか? 新しいものを育ててみたかったんじゃが」
「あっ、そうだ。コメ以外にもいくつか新しい作物と果物があるから、コメを育てない人にはそれの栽培をお願いすることになると思う」

 俺のその言葉を聞いて、それならと何人かが手を下ろした。やっぱり新しい作物を育ててみたいんだね。

 それからも皆の話し合いはスムーズに進んでいき、特別揉めるようなこともなく誰がコメを作ってくれるのか決まった。やっぱり王都みたいに大きな街じゃなくてこのぐらいの規模の街だと、農家同士はお互いのことをそこそこ知っていてスムーズみたいだ。
 あとは進行をしてくれてたあの男性が有能だったな……あの人にはチェックをしておこう。代表者を決めるような必要が出てきたら、あの人を選びたい。

「誰が作るか決まったぞ」
「ありがとう。じゃあ名前を教えてくれるかな。後日になるけど苗やタネを渡しに行くよ。それまでは畑を整えておいて欲しい」
「コメは他の作物と違う何か必要なことがあるか? 例えば土の柔らかさとか水のやり方とか」
「土の柔らかさはまだ色々と試してないんだけど、そこまで柔らかすぎない方が良いかも。あと水はたくさん必要だよ。他の作物の倍ぐらいはあげてほしい」

 俺のその説明を聞いて、コメを育てる皆だけでなく農家の皆が真剣な表情になった。この様子ならコメ栽培は上手くいきそうかな。

「それならお前のとこはちょっと土を増やしたほうが良いんじゃねぇか?」
「確かにな……柔らかくしすぎてるかもしれん」
「あとお前んとこは水捌けをよくしてただろ?」
「そうなんだよな。ちょっと……変えたほうがいいな」

 皆はそれぞれの畑の状態を知っているようで、そんなアドバイスを掛け合っている。

「どういう育て方が良いのかは、皆に試行錯誤しながら模索して欲しいと思ってる。よろしくね」
「ああ、任せてくれ」

 そうして最後には農家の皆が頼もしく頷いてくれたところで、話し合いは終わりとなった。
感想 22

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/