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三十話 第三回戦 そして、理不尽な謝罪
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「さてさて! 試合も残りわずかとなりました三回戦二試合目です! つまり、準決勝の二試合目です! 先ほどの試合は筋肉魔法使い選手の猛攻とスサノオ選手の見えないスキルが激突し、白熱した試合を見せてくれました! 次のヒカリ選手とアマテラス選手はどのような試合を見せてくれるのでしょうか! みなさん、ご期待ください!」
僕は闘技場へと移動した。そこには既に移動していたアマテラスが立っていた。僕はその様子から少しでもスキル対処法を見いだせないか見つけるため、よく観察する。
アマテラスは一見すると普通の青年といった出で立ちだ。装備は短剣なのか、腰のベルトに小さめの鞘が括り付けられているのが分かる。
防具はさすがに第一線ということもあってか、僕が見たことがないようなものを装備している。装備の観察と同時に僕はアマテラスのことを注視する。
……やっぱり、駄目か。
少しだけ≪弱点看破≫の効果が試合前に現れることを期待したのだけれど、試合前のためか弱点が僕の視界に現れることはなかった。……もし、現れていたら少しだけ戦闘が楽になったかもしれないのにな。
僕は気を取り直しつつも思考を続け、結論を出した。
……やっぱりスキルの対処は全く分からないや。というか、特徴が本当になさすぎる……。
一見、アマテラスはどこにでもいるような一般人といった風体なのだ。確かに装備自体は珍しいけれど、顔や恰好は現実世界にいてもおかしくはないものだった。
考えても仕方がない、か。それに相手がだれであろうとも、ただ僕は勝ちに行くだけ――あれ? そもそも僕が戦っている理由ってなんだっけ……。
いぬのために戦っていたはずなのに、いぬはもういない。
惰性で闘技場まで移動したけど、この試合で負けても、最早どうにもなりはしないんだ。
やけになってしまいそうな自身の思考。僕は頭を振ってそれを追い出した。
そうだ。それにまだチャンスはある。僕が今日ログインしたらなぜかレベルアップしていた≪天使ちゃん≫のスキルに新たな技能が増えていた。その技能は≪奇跡≫だ。それを使えば三十分とはいえ、≪ビーストテイマー≫を取り戻すことが出来る。闘技大会に勝つ際に≪ビーストテイマー≫を所持した状態であれば、もしかすると≪ビーストテイマー≫をオープンベータへ持ち越すことが出来るかもしれないんだ。つまり、いぬを助けることが出来るかもしれない。
僕は目の前にいるアマテラスをもう一度見た。
三貴神の一人であるアマテラスに勝つことは難しいだろう。でも、いぬを助けるために絶対負けられない!
「……君はもしかして」
アマテラスが何か呟くのが聞こえた。
急にどうしたのだろうか。僕は訝しく思いながらも月金(ムーンゴールド)の声が僕の思考を遮った。
「――さて。長々と話していても面白くはありません! 試合を開始するとしましょう! 二人とも準備はいいですね? ……それでは、はじめっ!」
月金の宣言からすぐに僕はアマテラスから距離を取った。
アマテラスがスキルを使っていなくても僕の耐久では簡単にやられてしまうかもしれないからだ。
「≪岩戸隠れ≫」
アマテラスがスキルを発動した瞬間、アマテラスの姿がまるで陰であるかのようにそこから消えた。
いや、きっとその場にはいるのだろう。あのチョコレートの密売人を倒した時のように姿が見えなくなっているだけだ。
「≪ライトアロー≫」
僕はアマテラスがいた場所に向けて魔法を放つ。しかし、アマテラスも僕が魔法を放つことは予想していたのだろう。僕の魔法は対象を捉えることなく、闘技場の端へ飛んで行ってしまった。
僕は辺りを警戒する。
すぐそばにアマテラスが迫っているのかもしれない。
しかし、やはり姿は見えない。いつ来るのか全く分からない。
「≪ミッシングナイフ≫」
「くっ! ≪ライトアロー≫!」
スキルを発動する声が聞こえたと思った瞬間、僕は短剣――いや、ナイフによって切り裂かれた。ほぼ反射的に僕は攻撃された方向に向けて魔法を放つ。
しかし、その魔法もまたアマテラスに当たらなかったようで、光の矢は遠くに飛んで行ってしまう。
ちらと見た僕のHPは一割ぐらい削られてしまっていた。
見えないというのはこうも対応が難しいのか……!
僕は改めてアマテラスのスキルの厄介さを感じた。
このままだと何もできずにやられてしまう。でも、見えない敵なんて一体どうすればいいんだ……!
ただ突っ立っていればいい的にしかならない。どうにかして逃げなければ――
「そうだ、あの手があった!」
ある方法を思いついた僕は自身に向けて≪縮小≫を使用する。そして、小さくなりつつある自身に向け、更にスキルを発動させた。
「≪変身≫」
今までほとんど使ってこなかったスキルだが、今回は役に立つに違いない。
僕は天使化するとすぐに空へ飛んだ。
……小さくなったせいか、やけに高く感じるな。
少しだけ感じた恐怖を感じつつも僕は空へ上り続ける。
そして、高さは五、六メートルぐらいまで上がったところで上昇を止めた。
僕は空中で地面を見下ろす。
相も変わらずアマテラスの姿は見えない。
しかし、十秒、二十秒と待ち続けてもアマテラスからの攻撃は僕に向かって放たれることはなかった。いや、それは正しくはないな。アマテラスの攻撃自体は空中に逃げてからも何度も飛んできている。しかし、僕が最悪の場合として想定していた攻撃は――
「やっぱり地上用のスキルしか持っていないんだな」
どうやらひとまずの賭けには勝ったらしい。僕は危機を脱したと飛んできた攻撃を避けながらもそう考える。
僕の作戦はチョコレートの密売人がやられる際、アマテラスの姿は全く見えなかったことから思いついた。あの時、アマテラスが攻撃する姿はもちろんだが、攻撃自体もまた見えなかった。しかし、その攻撃を防ぐためにチョコレートの密売人が同じような動きを繰り返していたことを先ほど思い出したのだ。
そして、そのことは僕に一つの考えをもたらした。つまり、アマテラスの称号スキルは姿を見えなくするだけであり――攻撃自体を見えなくするスキルではないのではないか、と。
その考えを閃いた後は簡単だ。まずは≪縮小≫を使い、そもそも被弾する可能性を減らす。そして、≪変身≫によって天使化して空中へ移動する。後は相手のスキルが僕を狙って発動されるのを待ち、そのスキルが見えるかどうか判断すればいい。
空中に小さな姿で浮かんでいる以上、遠距離攻撃が可能なスキルを使う必要があるし、小さくなって攻撃を当てるのが難しくなっている以上、多くのスキルを使ってくるだろう。僕はアマテラスが使ってきたスキルを見て称号スキルの効果がどこまで作用しているか確認すればいいというわけだ。
もしかするとアマテラスの称号スキルは攻撃全てを見えなくするものであり、僕の行動は無駄であった可能性もあったけれど、何とか賭けには勝った。空中に逃げてから飛んでくるスキルは全て見えるスキルであり、見えないスキルは一つもなかった。
どうやらアマテラスが持つ攻撃が見えないスキルは地上用のものしか持っていないらしかった。
これで一方的にやられることはなくなったな。
僕が≪変身≫だけでなく、≪縮小≫も使っているためにアマテラスの攻撃は簡単に避けられる。アマテラスは僕を攻めあぐねているようだ。
しかし、実を言うと僕のほうもアマテラスを倒す手がないに等しかった。何せ、あれから≪ライトアロー≫を何度放ってもアマテラスに当たることがなかったのだ。
やっぱりいぬが攪乱してくれないと僕の魔法は当たらないな……。もう少し敏捷があれば魔法の速さも増して少しは避けられないようになるはずなのに……。
いや、ないものねだりをしても仕方がない。
それにアマテラスの方へ攻撃を繰り返していれば、いずれアマテラスも集中力を切らして攻撃が当たる時も来るだろう。アマテラスと違って魔力が高い僕の攻撃は、一度でも当たればアマテラスのHPを大幅に減らすことが出来るはず。どっちが先に集中力を切らすか勝負してやろうじゃないか。
『――なぜ、召喚獣を使わない?』
攻撃を避ける僕にアマテラスから固有チャット――プレイヤー同士で話すチャットであり、ほかのプレイヤーには聞こえない――で呼びかけられた。
僕への攻撃はチャットが聞こえてからは飛んでこなかった。
どうやらチャットの返事を待っているらしい。
『お前には関係がないだろうが』
それにそもそもスサノオと同じPTを組んでいるアマテラスならばスサノオの行動を知っているに違いない。そんな気持ちから僕は吐き捨てるかのように告げた。
『……まさか、君にもスサノオは≪神喰狼≫を使ったのか……?』
まさか、だと……?
ふざけるなよ、こいつは。分かって聞いたんじゃないのか。スサノオが人のスキルを奪う下劣な輩だと分かっているんじゃないのか。
『すまない。スサノオを止められなかったのは同じPTを組んでいた私の責任でもある』
『いきなり何を言い出すんだ……?』
『君に謝罪したい。ひとまず、この試合は私が棄権しよう。なに、気にする必要はない。君が空中に逃げ、戦闘が長引いた段階で私には勝ち目なんてなかったのだから』
何を言っているんだ、こいつは。
どうして、棄権をする必要があるんだ。
確かにスサノオを止めなかったことに怒りを感じないわけではない。でも、よく考えてみればあの時、スサノオは一人で行動していた。
アマテラスだって四六時中スサノオを見ているわけはないだろう。そもそもあの時、スサノオは『アマテラスがいなくてラッキー』というようなことを言っていた。
つまり、スサノオはアマテラスがいない隙を狙ってあの場所に来ていたのだ。
そして、その事実はスサノオの行動をアマテラスが抑止していたことにつながる。
「え? マジですか……?」
困惑するような月金の声が聞こえてくる。
どうやらアマテラスが月金に話しかけているようだった。
まさか本当に棄権するつもりなのか。
いくらなんでもそれは――
「そ、それでは、三回戦二試合目はアマテラス選手の棄権により、ヒカリ選手の勝利です! どうやらアマテラス選手の持っていた称号スキルの効果でステータスが著しく下がってしまっため、継続して戦闘することが不可能になってしまったとのことです!」
月金によって宣言が成される。
唐突な結末に困惑していた観客が多かったのか、場は静まっている。しかし、一拍遅れたのちに歓声が沸き起こった。
僕は大きな歓声を受けながらも、心の中はやりきれない気持ちでいっぱいだった。
僕は闘技場へと移動した。そこには既に移動していたアマテラスが立っていた。僕はその様子から少しでもスキル対処法を見いだせないか見つけるため、よく観察する。
アマテラスは一見すると普通の青年といった出で立ちだ。装備は短剣なのか、腰のベルトに小さめの鞘が括り付けられているのが分かる。
防具はさすがに第一線ということもあってか、僕が見たことがないようなものを装備している。装備の観察と同時に僕はアマテラスのことを注視する。
……やっぱり、駄目か。
少しだけ≪弱点看破≫の効果が試合前に現れることを期待したのだけれど、試合前のためか弱点が僕の視界に現れることはなかった。……もし、現れていたら少しだけ戦闘が楽になったかもしれないのにな。
僕は気を取り直しつつも思考を続け、結論を出した。
……やっぱりスキルの対処は全く分からないや。というか、特徴が本当になさすぎる……。
一見、アマテラスはどこにでもいるような一般人といった風体なのだ。確かに装備自体は珍しいけれど、顔や恰好は現実世界にいてもおかしくはないものだった。
考えても仕方がない、か。それに相手がだれであろうとも、ただ僕は勝ちに行くだけ――あれ? そもそも僕が戦っている理由ってなんだっけ……。
いぬのために戦っていたはずなのに、いぬはもういない。
惰性で闘技場まで移動したけど、この試合で負けても、最早どうにもなりはしないんだ。
やけになってしまいそうな自身の思考。僕は頭を振ってそれを追い出した。
そうだ。それにまだチャンスはある。僕が今日ログインしたらなぜかレベルアップしていた≪天使ちゃん≫のスキルに新たな技能が増えていた。その技能は≪奇跡≫だ。それを使えば三十分とはいえ、≪ビーストテイマー≫を取り戻すことが出来る。闘技大会に勝つ際に≪ビーストテイマー≫を所持した状態であれば、もしかすると≪ビーストテイマー≫をオープンベータへ持ち越すことが出来るかもしれないんだ。つまり、いぬを助けることが出来るかもしれない。
僕は目の前にいるアマテラスをもう一度見た。
三貴神の一人であるアマテラスに勝つことは難しいだろう。でも、いぬを助けるために絶対負けられない!
「……君はもしかして」
アマテラスが何か呟くのが聞こえた。
急にどうしたのだろうか。僕は訝しく思いながらも月金(ムーンゴールド)の声が僕の思考を遮った。
「――さて。長々と話していても面白くはありません! 試合を開始するとしましょう! 二人とも準備はいいですね? ……それでは、はじめっ!」
月金の宣言からすぐに僕はアマテラスから距離を取った。
アマテラスがスキルを使っていなくても僕の耐久では簡単にやられてしまうかもしれないからだ。
「≪岩戸隠れ≫」
アマテラスがスキルを発動した瞬間、アマテラスの姿がまるで陰であるかのようにそこから消えた。
いや、きっとその場にはいるのだろう。あのチョコレートの密売人を倒した時のように姿が見えなくなっているだけだ。
「≪ライトアロー≫」
僕はアマテラスがいた場所に向けて魔法を放つ。しかし、アマテラスも僕が魔法を放つことは予想していたのだろう。僕の魔法は対象を捉えることなく、闘技場の端へ飛んで行ってしまった。
僕は辺りを警戒する。
すぐそばにアマテラスが迫っているのかもしれない。
しかし、やはり姿は見えない。いつ来るのか全く分からない。
「≪ミッシングナイフ≫」
「くっ! ≪ライトアロー≫!」
スキルを発動する声が聞こえたと思った瞬間、僕は短剣――いや、ナイフによって切り裂かれた。ほぼ反射的に僕は攻撃された方向に向けて魔法を放つ。
しかし、その魔法もまたアマテラスに当たらなかったようで、光の矢は遠くに飛んで行ってしまう。
ちらと見た僕のHPは一割ぐらい削られてしまっていた。
見えないというのはこうも対応が難しいのか……!
僕は改めてアマテラスのスキルの厄介さを感じた。
このままだと何もできずにやられてしまう。でも、見えない敵なんて一体どうすればいいんだ……!
ただ突っ立っていればいい的にしかならない。どうにかして逃げなければ――
「そうだ、あの手があった!」
ある方法を思いついた僕は自身に向けて≪縮小≫を使用する。そして、小さくなりつつある自身に向け、更にスキルを発動させた。
「≪変身≫」
今までほとんど使ってこなかったスキルだが、今回は役に立つに違いない。
僕は天使化するとすぐに空へ飛んだ。
……小さくなったせいか、やけに高く感じるな。
少しだけ感じた恐怖を感じつつも僕は空へ上り続ける。
そして、高さは五、六メートルぐらいまで上がったところで上昇を止めた。
僕は空中で地面を見下ろす。
相も変わらずアマテラスの姿は見えない。
しかし、十秒、二十秒と待ち続けてもアマテラスからの攻撃は僕に向かって放たれることはなかった。いや、それは正しくはないな。アマテラスの攻撃自体は空中に逃げてからも何度も飛んできている。しかし、僕が最悪の場合として想定していた攻撃は――
「やっぱり地上用のスキルしか持っていないんだな」
どうやらひとまずの賭けには勝ったらしい。僕は危機を脱したと飛んできた攻撃を避けながらもそう考える。
僕の作戦はチョコレートの密売人がやられる際、アマテラスの姿は全く見えなかったことから思いついた。あの時、アマテラスが攻撃する姿はもちろんだが、攻撃自体もまた見えなかった。しかし、その攻撃を防ぐためにチョコレートの密売人が同じような動きを繰り返していたことを先ほど思い出したのだ。
そして、そのことは僕に一つの考えをもたらした。つまり、アマテラスの称号スキルは姿を見えなくするだけであり――攻撃自体を見えなくするスキルではないのではないか、と。
その考えを閃いた後は簡単だ。まずは≪縮小≫を使い、そもそも被弾する可能性を減らす。そして、≪変身≫によって天使化して空中へ移動する。後は相手のスキルが僕を狙って発動されるのを待ち、そのスキルが見えるかどうか判断すればいい。
空中に小さな姿で浮かんでいる以上、遠距離攻撃が可能なスキルを使う必要があるし、小さくなって攻撃を当てるのが難しくなっている以上、多くのスキルを使ってくるだろう。僕はアマテラスが使ってきたスキルを見て称号スキルの効果がどこまで作用しているか確認すればいいというわけだ。
もしかするとアマテラスの称号スキルは攻撃全てを見えなくするものであり、僕の行動は無駄であった可能性もあったけれど、何とか賭けには勝った。空中に逃げてから飛んでくるスキルは全て見えるスキルであり、見えないスキルは一つもなかった。
どうやらアマテラスが持つ攻撃が見えないスキルは地上用のものしか持っていないらしかった。
これで一方的にやられることはなくなったな。
僕が≪変身≫だけでなく、≪縮小≫も使っているためにアマテラスの攻撃は簡単に避けられる。アマテラスは僕を攻めあぐねているようだ。
しかし、実を言うと僕のほうもアマテラスを倒す手がないに等しかった。何せ、あれから≪ライトアロー≫を何度放ってもアマテラスに当たることがなかったのだ。
やっぱりいぬが攪乱してくれないと僕の魔法は当たらないな……。もう少し敏捷があれば魔法の速さも増して少しは避けられないようになるはずなのに……。
いや、ないものねだりをしても仕方がない。
それにアマテラスの方へ攻撃を繰り返していれば、いずれアマテラスも集中力を切らして攻撃が当たる時も来るだろう。アマテラスと違って魔力が高い僕の攻撃は、一度でも当たればアマテラスのHPを大幅に減らすことが出来るはず。どっちが先に集中力を切らすか勝負してやろうじゃないか。
『――なぜ、召喚獣を使わない?』
攻撃を避ける僕にアマテラスから固有チャット――プレイヤー同士で話すチャットであり、ほかのプレイヤーには聞こえない――で呼びかけられた。
僕への攻撃はチャットが聞こえてからは飛んでこなかった。
どうやらチャットの返事を待っているらしい。
『お前には関係がないだろうが』
それにそもそもスサノオと同じPTを組んでいるアマテラスならばスサノオの行動を知っているに違いない。そんな気持ちから僕は吐き捨てるかのように告げた。
『……まさか、君にもスサノオは≪神喰狼≫を使ったのか……?』
まさか、だと……?
ふざけるなよ、こいつは。分かって聞いたんじゃないのか。スサノオが人のスキルを奪う下劣な輩だと分かっているんじゃないのか。
『すまない。スサノオを止められなかったのは同じPTを組んでいた私の責任でもある』
『いきなり何を言い出すんだ……?』
『君に謝罪したい。ひとまず、この試合は私が棄権しよう。なに、気にする必要はない。君が空中に逃げ、戦闘が長引いた段階で私には勝ち目なんてなかったのだから』
何を言っているんだ、こいつは。
どうして、棄権をする必要があるんだ。
確かにスサノオを止めなかったことに怒りを感じないわけではない。でも、よく考えてみればあの時、スサノオは一人で行動していた。
アマテラスだって四六時中スサノオを見ているわけはないだろう。そもそもあの時、スサノオは『アマテラスがいなくてラッキー』というようなことを言っていた。
つまり、スサノオはアマテラスがいない隙を狙ってあの場所に来ていたのだ。
そして、その事実はスサノオの行動をアマテラスが抑止していたことにつながる。
「え? マジですか……?」
困惑するような月金の声が聞こえてくる。
どうやらアマテラスが月金に話しかけているようだった。
まさか本当に棄権するつもりなのか。
いくらなんでもそれは――
「そ、それでは、三回戦二試合目はアマテラス選手の棄権により、ヒカリ選手の勝利です! どうやらアマテラス選手の持っていた称号スキルの効果でステータスが著しく下がってしまっため、継続して戦闘することが不可能になってしまったとのことです!」
月金によって宣言が成される。
唐突な結末に困惑していた観客が多かったのか、場は静まっている。しかし、一拍遅れたのちに歓声が沸き起こった。
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