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三章 事件②
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「なるほどなあ……」
「不思議なこともあるもんだねえ……」
話を聞き終えた二人の感想はこれだけだった。
「えっと……、二人とも信じるのか? 正直、実際に体験した俺でも信じられないような出来事の嵐だったんだが……」
俺の言葉にきょとんとした顔で見つめてくる千歳。
「え? だって、そんなの今更じゃない?」
同意を求めるように千歳は寛太を見る。
「ああ、確かにそうだよな。むしろ圭にこういったことの体験がなかったこと自体が驚きだぜ」
どうやらいつの間にか、この世界には不思議が蔓延っていたらしい。
俺は今までの現実が崩れていくような気がして頭を抱えたくなった。いや、気づいたら抱えていた。
「……ぷぷ」
「……くく」
そんな俺の耳に小さな笑いが漏れてくるのが聞こえた。
俺が顔を上げると二人が懸命に笑いをこらえているところだった。
「……おい」
俺の声で限界に達したのか、二人が大きく笑い声を上げ始めた。
気づくと周りのクラスメイトも何が起こった、と驚きながらこちらを見ていた。
俺はその様子に羞恥心を覚えながらも二人の笑いが収まるのを待つのだった。……予想以上に笑いが長引いたせいで次の授業が始まり、結局、詳しい話は昼食の時間まで待つことになってしまったのは誤算だったが。
◇
「わるいわるい。あまりにもバカらしい話だったもんでよ」
「確かにちょっとねえ……。夢ちゃんの話だし、信じてあげたいとは思うけど……。やっぱり実際に見てみないと何とも……」
面白い物好きな寛太だけでなく、千歳も否定気味だった。
実際、俺も見ていなければ二人のような反応を取ったことは想像に難くない。
「それなら本人に聞けばいいじゃないか」
「うーん。もう大丈夫なの?」
心配そうに聞いてくる千歳。夢が言っていた千歳が来てほしくない理由――みぃちゃん――は話していない。
「もう心配ないさ」
問題は解決したからな、と心の中で呟く。
「ならいいんだけど……」
不安そうに返答する千歳を気にすることなく、寛太が自身を指さしながら言った。
「俺も行って平気か?」
「寛太は言わなくても付いてくる気だろう?」
「お、分かってるじゃねえか。そんなわけで俺も付いて行くぜ!」
相変わらず調子のいいやつだ。とはいえ、寛太は面白い物好きというだけあり、オカルト関係では頼りになる。こういう時こそ、その無駄に蓄えた情報が役に立つに違いない。
「放課後が楽しみだぜ! 不思議なことが俺を待っているんだ!」
そう言う寛太の指がわきわきといやな動きを見せる。
こいつが変なことをしないように見張ろうと俺は心に誓った。
「最近、ネタに困っていたから何かいいのがあればいいなあ……」
……ついでに千歳も見張る必要があるのかもしれない。
◇
放課後。俺たち三人は夢の家に向かって歩いていた。
すでに夢の家に雫は向かっているらしい。今日は夢も学校を休んでいたらしく、雫は夢のことを心配でたまらなかったようだ。
「そういえば昨日に千歳を帰らせた理由は何だったんだ?」
寛太が思い出したというように訊いてきた。
「もし言いづらい理由なら別に言わなくてもいいよ?」
そう千歳は言うが、見るからに聞きたそうにしている。本当は聞きたいのだろう。
言うべきなのかもしれない。何せ、問題となっているのは千歳の猫なのだから。
しかし、だからこそ俺は言うのを戸惑った。千歳が猫を大事にしていることは知っていたからだ。
「それは……」
俺が言いかけた時、目の前に一人の少女が歩いてくるのが見えた。昨日会った少女だった。
「あれ、あなたは……」
千歳が思い出すように声を出す。その声に反応したのか、少女がこちらを見た。
「あなたたちは……?」
「昨日の女の子じゃないか。友達は見つかったのか?」
寛太が少し驚きつつも訊く。
その言葉に少女は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに何か納得するように頷いた。
「はい。見つかりました。なんでも今病院にいるらしいんです」
「その友達は大丈夫なのか?」
「分かりません。だから、今から確認も兼ねてお見舞いに行こうと思いまして」
少女の顔が少しだけ曇った。それだけ友達のことが心配なのだろう。
「それじゃあ、私は早く友達のところへ行ってあげたいので、失礼します」
「ああ、気を付けてな。最近、物騒らしいし」
「ええ。でも、きっともう大丈夫ですよ」
少女は俺たちの横を通り、歩いて行った。
「大丈夫かしらね……」
心配そうに千歳が呟く。
「そうだな……」
俺も心配ではあったが、正直、千歳の猫のことで頭がいっぱいになっていた。
いったい、どうすればよいのだろう。
寛太ならどうするだろう。そう考えた俺は寛太を見た。
「…………」
寛太が不自然に黙っていた。
先ほど歩いて行った少女の方向を見て、何か考えているようだ。
「どうしたんだ、寛太?」
「……いや、ちょっとな」
「何か気になることでもあったの?」
「……たぶん俺の勘違いだろうよ。気にすることないさ」
俺たちの言葉に寛太は煮え切らない答えしか返さなかった。
その態度を訝しくは思ったが、寛太も言う気はないようだ。
俺たちは追及をやめ、先を急ぐことにした。
「不思議なこともあるもんだねえ……」
話を聞き終えた二人の感想はこれだけだった。
「えっと……、二人とも信じるのか? 正直、実際に体験した俺でも信じられないような出来事の嵐だったんだが……」
俺の言葉にきょとんとした顔で見つめてくる千歳。
「え? だって、そんなの今更じゃない?」
同意を求めるように千歳は寛太を見る。
「ああ、確かにそうだよな。むしろ圭にこういったことの体験がなかったこと自体が驚きだぜ」
どうやらいつの間にか、この世界には不思議が蔓延っていたらしい。
俺は今までの現実が崩れていくような気がして頭を抱えたくなった。いや、気づいたら抱えていた。
「……ぷぷ」
「……くく」
そんな俺の耳に小さな笑いが漏れてくるのが聞こえた。
俺が顔を上げると二人が懸命に笑いをこらえているところだった。
「……おい」
俺の声で限界に達したのか、二人が大きく笑い声を上げ始めた。
気づくと周りのクラスメイトも何が起こった、と驚きながらこちらを見ていた。
俺はその様子に羞恥心を覚えながらも二人の笑いが収まるのを待つのだった。……予想以上に笑いが長引いたせいで次の授業が始まり、結局、詳しい話は昼食の時間まで待つことになってしまったのは誤算だったが。
◇
「わるいわるい。あまりにもバカらしい話だったもんでよ」
「確かにちょっとねえ……。夢ちゃんの話だし、信じてあげたいとは思うけど……。やっぱり実際に見てみないと何とも……」
面白い物好きな寛太だけでなく、千歳も否定気味だった。
実際、俺も見ていなければ二人のような反応を取ったことは想像に難くない。
「それなら本人に聞けばいいじゃないか」
「うーん。もう大丈夫なの?」
心配そうに聞いてくる千歳。夢が言っていた千歳が来てほしくない理由――みぃちゃん――は話していない。
「もう心配ないさ」
問題は解決したからな、と心の中で呟く。
「ならいいんだけど……」
不安そうに返答する千歳を気にすることなく、寛太が自身を指さしながら言った。
「俺も行って平気か?」
「寛太は言わなくても付いてくる気だろう?」
「お、分かってるじゃねえか。そんなわけで俺も付いて行くぜ!」
相変わらず調子のいいやつだ。とはいえ、寛太は面白い物好きというだけあり、オカルト関係では頼りになる。こういう時こそ、その無駄に蓄えた情報が役に立つに違いない。
「放課後が楽しみだぜ! 不思議なことが俺を待っているんだ!」
そう言う寛太の指がわきわきといやな動きを見せる。
こいつが変なことをしないように見張ろうと俺は心に誓った。
「最近、ネタに困っていたから何かいいのがあればいいなあ……」
……ついでに千歳も見張る必要があるのかもしれない。
◇
放課後。俺たち三人は夢の家に向かって歩いていた。
すでに夢の家に雫は向かっているらしい。今日は夢も学校を休んでいたらしく、雫は夢のことを心配でたまらなかったようだ。
「そういえば昨日に千歳を帰らせた理由は何だったんだ?」
寛太が思い出したというように訊いてきた。
「もし言いづらい理由なら別に言わなくてもいいよ?」
そう千歳は言うが、見るからに聞きたそうにしている。本当は聞きたいのだろう。
言うべきなのかもしれない。何せ、問題となっているのは千歳の猫なのだから。
しかし、だからこそ俺は言うのを戸惑った。千歳が猫を大事にしていることは知っていたからだ。
「それは……」
俺が言いかけた時、目の前に一人の少女が歩いてくるのが見えた。昨日会った少女だった。
「あれ、あなたは……」
千歳が思い出すように声を出す。その声に反応したのか、少女がこちらを見た。
「あなたたちは……?」
「昨日の女の子じゃないか。友達は見つかったのか?」
寛太が少し驚きつつも訊く。
その言葉に少女は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに何か納得するように頷いた。
「はい。見つかりました。なんでも今病院にいるらしいんです」
「その友達は大丈夫なのか?」
「分かりません。だから、今から確認も兼ねてお見舞いに行こうと思いまして」
少女の顔が少しだけ曇った。それだけ友達のことが心配なのだろう。
「それじゃあ、私は早く友達のところへ行ってあげたいので、失礼します」
「ああ、気を付けてな。最近、物騒らしいし」
「ええ。でも、きっともう大丈夫ですよ」
少女は俺たちの横を通り、歩いて行った。
「大丈夫かしらね……」
心配そうに千歳が呟く。
「そうだな……」
俺も心配ではあったが、正直、千歳の猫のことで頭がいっぱいになっていた。
いったい、どうすればよいのだろう。
寛太ならどうするだろう。そう考えた俺は寛太を見た。
「…………」
寛太が不自然に黙っていた。
先ほど歩いて行った少女の方向を見て、何か考えているようだ。
「どうしたんだ、寛太?」
「……いや、ちょっとな」
「何か気になることでもあったの?」
「……たぶん俺の勘違いだろうよ。気にすることないさ」
俺たちの言葉に寛太は煮え切らない答えしか返さなかった。
その態度を訝しくは思ったが、寛太も言う気はないようだ。
俺たちは追及をやめ、先を急ぐことにした。
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