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第105話 艦攻、艦爆、艦戦の歌
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酒が入り興が乗って来ると歌にも熱が入る。
合唱や手拍子があちこちで飛び交い、酒や料理の注文も飛び交う。
「おーい、ソーニャさん。こっちに酒を頼む。」
「おーい…えーと…新入りの何ちゃんだっけ。まあいいや。とにかくこっちに料理を頼む。」
矢継ぎ早の注文に、ソーニャ以下の女給たちがテキパキと応えて行く。
注文を受ける調理場もてんてこ舞いで、次々と注文を捌いて行った。
出雲や蛟龍といった大型艦が出港すると、お客もだいぶん減るが、今日は出雲が入港中である。
救いと言えば、勘定は全て属領首府持ちなので、いちいち金銭を遣り取りしなくても良いことであった。
またどこかで合唱が始まる。
見たか銀翼この雄姿
日本男児が精こめて
作って育てたわが愛機
空の護りは引き受けた
来るなら来てみろ赤蜻蛉
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
誰が付けたか荒鷲の
名にも恥じないこの力
霧も嵐も何のその
重い爆弾抱え込み
南京ぐらいは一またぎ
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
金波銀波の海超えて
曇らぬ月こそわが心
正義の日本知ったかと
今宵また飛ぶ荒鷲よ
御苦労しっかり頼んだぜ
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
翼に日の丸乗り組は
大和魂の持主だ
敵機はあらまし潰したが
あるなら出て来いおかわり来い
プロペラばかりか腕も鳴る
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
歌い始めは飛行機乗りの誰かであろう。
しかし、よく知られた「荒鷲の歌」であり、大合唱となった。
次は、天山搭乗員の誰かが「雷撃隊隊歌」を歌い始めた。映画にも取り入れられた歌ではあるが、ほかの艦船勤務者などにはあまり知られていないらしく、皆は手拍子で応じている。
狂瀾怒涛の飛沫浴び
海原低く突っ込めば
雨霰降る弾幕も
突撃肉薄雷撃隊
我が猛襲におびえたる
敵艦隊は逃げ惑う
何ぞ逃さぬ小癪めと
疾風迅雷追い迫る
赤誠込めて放ちたる
魚雷はあとを引き受けて
敵艦目がけて真っしぐら
忽ち上がる水柱
大轟音と諸共に
敵艦一瞬影も無し
「どう」と挙がる勝鬨も
嬉し涙の男泣き
暴戻不遜米英の
奢れる敵艦何者ぞ
我等捨て身の体当たり
向こうところに敵は無し
ああ皇國の華と咲き
七つの海に翼はり
敵を索めて幾千里
行くぞ必殺雷撃隊
海軍搭乗員らしいグループの中からは
「ワァーッ!」
という歓声が上がった。
「よおし、艦爆隊も負けておられんぞ!」
誰かが叫んだ。
蛟龍搭載の艦爆は、対潜哨戒の九九式艦爆と、偵察用の彗星艦爆が少数だけであったが、搭載零戦の多く特攻用であり、搭乗員には艦爆からの転向者が多くいた。
だから、搭乗員にも、艦爆乗りとしての思いが強かったのである。
「艦爆隊の歌」が始まった。
妖雲低く乱れ飛び
狂風飄々吹き荒ぶ
嵐の空に雄々しくも
降魔の翼羽搏ける
ああ猛きかな艦爆隊
熱風氷雨の荒れ狂う
七つの海に敵を見ば
たぎる血潮は火とぞ燃え
今こそ翳さん破邪の剣
爆音轟々発艦す
見よ堂々の大編隊
密雲衝いて進撃す
憩い忘れし訓練も
唯この一挙と思う時
我が腕さらに躍るかな
敵艦隊の断末の
防禦砲火に戦闘機
如何に我等を拒むとも
何ぞ恐れん日本魂
敵艦目指しまっしぐら
突撃せよの命令に
我が身は仮令燃えるとも
腹に抱けるこの一弾
命中ずば何ぞ斃るべき
身は弾丸となり急降下
つゆ生涯を期せずして
鬼神の如く奮戦す
艦爆隊の鋭鋒に
敵艦隊は影もなし
ああ勇ましや艦爆隊
見よ東天は雲もなく
狂瀾怒涛もおさまりて
旭日燦と皇国の
前途を照らす艦爆隊
ああ偉なるかな艦爆隊
艦攻、艦爆とくれば、次は当然、艦戦である。
「よおし、次は俺達、戦闘機隊の番だ!」
艦戦乗りと思しき一人が歌い始め、合唱が広がった。
鋼の翼羽搏いて
天翔け征かん戦闘機
見よ壮烈の空戦に
空行く心誰か知る
嗚呼逞しき戦闘機
大和魂胸に秘め
爆音高く飛び立てば
見よ必墜の鉄撃に
脆くも落ちる米英機
嗚呼勇ましき戦闘機
太平洋に印度洋
征空隊の征くところ
見よ隼鷹の羽搏きに
我に刃向かう敵機なし
嗚呼偉なるかな戦闘機
醜の御楯と空征かば
雲染む屍若桜
見よ大君の御為に
死して闘う戦闘機
嗚呼壮なり戦闘機
歌が終わると
「帝国海軍、万歳!艦攻、艦爆、艦戦万歳!」
という声が一斉に上がった。
「よおし。元の世界に戻ったら、思いっ切り暴れて死んでやるぞ!」
「そうだ!俺たちは帝国軍人だ。天皇…」
誰かが言い掛けたところで、その場の全員が一斉に立ち上がり不動の姿勢を取った。
「天皇陛下の御為に、最後のご奉公をなさねばならない!」
彼が言い終わると
「そうだ!訳の分からん世界のために死んでたまるか!」
と誰かが叫んだ。
どうも妙な方向へ話が向かっている。
「みんな、何でいきなり姿勢を正したの?」
またブリギッテがソーニャに訊いた。
訊かれたソーニャは、唇に左手の人差し指を当てながら
「あのね、あの人たちの国、二ホンの皇帝陛下のことに触れる時は、ああしなくちゃ不敬に当たるんですって。あんまり触れちゃいけないらしいから、アンタも気を付けてね。」
と小声で諭すように言った。
「さあ、湿っぽいのは止めだ。景気良く行こうぜ!」
誰かが言い、「太平洋行進曲」歌い始めた。
別の誰かがハーモニカを持っていたらしく、歌に合わせて伴奏を始めると、天に全体に合唱が広がって行った。
明るい曲調に、店内の雰囲気も明るくなって行った。
合唱や手拍子があちこちで飛び交い、酒や料理の注文も飛び交う。
「おーい、ソーニャさん。こっちに酒を頼む。」
「おーい…えーと…新入りの何ちゃんだっけ。まあいいや。とにかくこっちに料理を頼む。」
矢継ぎ早の注文に、ソーニャ以下の女給たちがテキパキと応えて行く。
注文を受ける調理場もてんてこ舞いで、次々と注文を捌いて行った。
出雲や蛟龍といった大型艦が出港すると、お客もだいぶん減るが、今日は出雲が入港中である。
救いと言えば、勘定は全て属領首府持ちなので、いちいち金銭を遣り取りしなくても良いことであった。
またどこかで合唱が始まる。
見たか銀翼この雄姿
日本男児が精こめて
作って育てたわが愛機
空の護りは引き受けた
来るなら来てみろ赤蜻蛉
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
誰が付けたか荒鷲の
名にも恥じないこの力
霧も嵐も何のその
重い爆弾抱え込み
南京ぐらいは一またぎ
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
金波銀波の海超えて
曇らぬ月こそわが心
正義の日本知ったかと
今宵また飛ぶ荒鷲よ
御苦労しっかり頼んだぜ
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
翼に日の丸乗り組は
大和魂の持主だ
敵機はあらまし潰したが
あるなら出て来いおかわり来い
プロペラばかりか腕も鳴る
ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ
歌い始めは飛行機乗りの誰かであろう。
しかし、よく知られた「荒鷲の歌」であり、大合唱となった。
次は、天山搭乗員の誰かが「雷撃隊隊歌」を歌い始めた。映画にも取り入れられた歌ではあるが、ほかの艦船勤務者などにはあまり知られていないらしく、皆は手拍子で応じている。
狂瀾怒涛の飛沫浴び
海原低く突っ込めば
雨霰降る弾幕も
突撃肉薄雷撃隊
我が猛襲におびえたる
敵艦隊は逃げ惑う
何ぞ逃さぬ小癪めと
疾風迅雷追い迫る
赤誠込めて放ちたる
魚雷はあとを引き受けて
敵艦目がけて真っしぐら
忽ち上がる水柱
大轟音と諸共に
敵艦一瞬影も無し
「どう」と挙がる勝鬨も
嬉し涙の男泣き
暴戻不遜米英の
奢れる敵艦何者ぞ
我等捨て身の体当たり
向こうところに敵は無し
ああ皇國の華と咲き
七つの海に翼はり
敵を索めて幾千里
行くぞ必殺雷撃隊
海軍搭乗員らしいグループの中からは
「ワァーッ!」
という歓声が上がった。
「よおし、艦爆隊も負けておられんぞ!」
誰かが叫んだ。
蛟龍搭載の艦爆は、対潜哨戒の九九式艦爆と、偵察用の彗星艦爆が少数だけであったが、搭載零戦の多く特攻用であり、搭乗員には艦爆からの転向者が多くいた。
だから、搭乗員にも、艦爆乗りとしての思いが強かったのである。
「艦爆隊の歌」が始まった。
妖雲低く乱れ飛び
狂風飄々吹き荒ぶ
嵐の空に雄々しくも
降魔の翼羽搏ける
ああ猛きかな艦爆隊
熱風氷雨の荒れ狂う
七つの海に敵を見ば
たぎる血潮は火とぞ燃え
今こそ翳さん破邪の剣
爆音轟々発艦す
見よ堂々の大編隊
密雲衝いて進撃す
憩い忘れし訓練も
唯この一挙と思う時
我が腕さらに躍るかな
敵艦隊の断末の
防禦砲火に戦闘機
如何に我等を拒むとも
何ぞ恐れん日本魂
敵艦目指しまっしぐら
突撃せよの命令に
我が身は仮令燃えるとも
腹に抱けるこの一弾
命中ずば何ぞ斃るべき
身は弾丸となり急降下
つゆ生涯を期せずして
鬼神の如く奮戦す
艦爆隊の鋭鋒に
敵艦隊は影もなし
ああ勇ましや艦爆隊
見よ東天は雲もなく
狂瀾怒涛もおさまりて
旭日燦と皇国の
前途を照らす艦爆隊
ああ偉なるかな艦爆隊
艦攻、艦爆とくれば、次は当然、艦戦である。
「よおし、次は俺達、戦闘機隊の番だ!」
艦戦乗りと思しき一人が歌い始め、合唱が広がった。
鋼の翼羽搏いて
天翔け征かん戦闘機
見よ壮烈の空戦に
空行く心誰か知る
嗚呼逞しき戦闘機
大和魂胸に秘め
爆音高く飛び立てば
見よ必墜の鉄撃に
脆くも落ちる米英機
嗚呼勇ましき戦闘機
太平洋に印度洋
征空隊の征くところ
見よ隼鷹の羽搏きに
我に刃向かう敵機なし
嗚呼偉なるかな戦闘機
醜の御楯と空征かば
雲染む屍若桜
見よ大君の御為に
死して闘う戦闘機
嗚呼壮なり戦闘機
歌が終わると
「帝国海軍、万歳!艦攻、艦爆、艦戦万歳!」
という声が一斉に上がった。
「よおし。元の世界に戻ったら、思いっ切り暴れて死んでやるぞ!」
「そうだ!俺たちは帝国軍人だ。天皇…」
誰かが言い掛けたところで、その場の全員が一斉に立ち上がり不動の姿勢を取った。
「天皇陛下の御為に、最後のご奉公をなさねばならない!」
彼が言い終わると
「そうだ!訳の分からん世界のために死んでたまるか!」
と誰かが叫んだ。
どうも妙な方向へ話が向かっている。
「みんな、何でいきなり姿勢を正したの?」
またブリギッテがソーニャに訊いた。
訊かれたソーニャは、唇に左手の人差し指を当てながら
「あのね、あの人たちの国、二ホンの皇帝陛下のことに触れる時は、ああしなくちゃ不敬に当たるんですって。あんまり触れちゃいけないらしいから、アンタも気を付けてね。」
と小声で諭すように言った。
「さあ、湿っぽいのは止めだ。景気良く行こうぜ!」
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