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第114話 我レ現地ニ安着セリ
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機体が港の上空に差し掛かったところで
「45度、ヨーソロー、0度。」
と、機長で正操縦員の兵曹長が、進路変更を告げた。
これで、機首はほぼ真北を向いたことになる。
「各機は付いているか?」
「付いております。重爆は、我と同時に変針、零戦隊も続いて変針しました。」
機長の問いに、副操縦員の一等兵曹が答えた。
編隊は、海上から奥地に向かって飛行しているが、3,500m上空から見下ろす大地には、森林や耕作地、街や村が点在し、これらを繋ぐ道路が、編隊の進行方向、つまり王都に向かって延びている。
やがて、操縦席の前方に、うすぼんやりと街らしいものが見えてきた。
山花は、機長にケッペルを操縦席へ呼んでもらい、着陸場所の案内をしてもらうことにした。
「前方に見えるのが、王都ですか?」
エンジンの爆音に負けじと、山花が大声でケッペルに訊くと
「左様でございます。今、眼下に見え始めているのが、王都クラズヘイムでございます。」
ケッペルも大声で答えて寄越した。
上空から見るクラズヘイムは、デ・ノーアトゥーン同様に城壁で囲まれているが、その規模が桁違いに大きい。
中央に城があって、放射状に延びた道路沿いに城下町が発達しているようであるが、城壁に囲まれた地域だけでも、デ・ノーアトゥーンの数倍はありそうだった。
そして、城内の道路は、城門を潜り城外の街道へと続いていて、各地からの街道が王都へ通じる様になっていると思われた。
「すべての道はローマへ続く、か。」
山花がボソッと呟くと
「何でございましょう?」
とケッペルが話し掛けて来た。
「いえ、何でもありません。ところで、練兵場はどのあたりでしょうか?」
山花は、話題を切り替えて尋ねた。
「西の城門の外側、耕作地が白く禿げた様な場所がお分かりか。」
ケッペルは、機首前方左側を指差して言った。
山花が目を凝らして見ると、確かに、パッチワークのような耕作地の一角が、禿げているように見える場所があった。
彼は、右側操縦席の機長の耳元に顔を近付け
「機長、あそこが着陸予定地だが、分かるか?」
と、ケッペルと同じ様に指を差して言った。
機長の兵曹長も、機首左側を凝視していたが
「ああ、わかりました。あの地面が白く見える一角ですね。」
と納得したように言った。
「そうだ。あそこへ降りるぞ。」
山花は、そう言ってから、ふと思い立ったように
「ケッペル男爵、ちょっとお城にご挨拶して行きましょうか。」
と言って、彼にしては珍しく、いたずらっぽく笑った。
ケッペルは、何となく察した様子で
「お手柔らかに願いまする。」
そう答えた。
山花は、機長に指示をして、クラズヘイムの市街地を高度300mの低空で東から西に突っ切り、その際、城の上空も低空で飛び越える算段をした。
まず、零戦隊が3機編隊で飛行し、その後を陸攻と重爆が並行して飛び越える手筈である。
5機は、いったんクラズヘイムの東側へ抜け、編隊を整えてから、真西にコースを取った。
まず、零戦3機が市街上空に差し掛かる。
零戦五二型は、推力式排気管を採用しているので、排気音が弾ける独特の爆音を出すため、威圧感があった。
道路を行き交う人々は、何事かと驚いて上空を見上げ、家々の窓からも、驚いた表情の人々が上空を見上げている。
四式重爆飛龍は、強制空冷方式のエンジンで、「キーン」という独特のタービン音を響かせるため、これも、知らない人間からすれば独特の気障りさがあった。
編隊がお城の上空に差し掛かると、これも、城から外に飛び出す人、バルコニーや窓から上空を見上げる人々で、てんやわんやの騒ぎである。
「どうだ。よぉくその目に刻み付けておけよ。これが日の丸飛行隊だ!」
飛行機乗りではない山花であるが、久し振りに愉快な気持ちになった。
さて、着陸であるが、予定地の練兵場は、上空から一見すると、立ち木や岩石もなく、目立った凹凸も見当たらない。
山花は、まず、零戦のうち一機を試しに着陸させ、陸攻と重爆の着陸に差し支えないか確認させることにした。
一機の零戦が、練兵場の西側から進入し、3点着陸の姿勢でゆっくりと降りて行った。
練兵場の端から100mほどのところに接地した零戦は、土埃を巻き上げながらそのまま地上走行を続け、反対の東側の端まで行くと、器用にくるりと転回した。
転回した零戦は、再びゆっくりと地上滑走を行い、そのまま西端に戻ると、再びくるりと転回して東側を向き、停止した。
地上滑走中、搭乗員がしきりに左右に首を振り、練兵場の様子を確認していたが、最終的に、両腕で大きな輪を作り、「着陸差支えなし」の合図を送って来た。
ここで、重爆が、脚とフラップを降ろしてゆっくりと西側から着陸コースに入り、練兵場の端から200~300mのところで主脚を着地させ、瀬踏みをするようにして数百m滑走した後に、尾輪を接地させて完全に着地、更に300mほど滑走したところで一旦停止して、誘導のため副操縦士が天窓を開けて上半身を出してから機首を左に向けて進み、着陸コースを陸攻のために空けた。
ブーブー
陸攻の中ではブザーが鳴り、機体が着陸態勢に入ることを告げた。
重爆と同じコースで着陸態勢に入り、脚とフラップを下げる。
着陸操作は機長が行い、副操縦員は周囲の見張りを行っている。
機長がスロットルを絞り、機首を僅かに上げ、徐々に機体を降下させて行く。
練兵場の端を通過したところで副操縦員が合図を送ると、機長は、機首上げのままスロットルを思い切って絞り、主脚を接地させ、続けて尾輪を接地させた。
地上滑走の速度が十分落ちたところで、重爆同様、副操縦員が天窓を開放して上半身を機外へ出し、地上滑走を誘導した。
上空で待機していた零戦二機は、陸攻と重爆が無事着陸したのを見届けた後、続いて練兵場に着陸し、先に着陸した一機と列線を組んだ。
「我レ現地ニ安着セリ」
陸攻から根拠地隊宛てに無線報告が飛んだ。
山花がホッと一息ついたのも束の間、周囲を見渡すと、兵士たちが近付いて来るのが見えた。
「機銃射撃用意、陸戦隊戦闘準備。ただし、別命あるまでの発砲を厳禁する。」
山花が命じた。
重爆でも、機銃員は射撃準備、挺身隊員は戦闘準備を整えていることだろう。
だが、とにかく、グリトニル辺境伯とイザベラ姫を城へ送り届けなければ、まだ任務は終わらない。
「話の分かる奴が居れば良いが。」
そう山花は思った。
「45度、ヨーソロー、0度。」
と、機長で正操縦員の兵曹長が、進路変更を告げた。
これで、機首はほぼ真北を向いたことになる。
「各機は付いているか?」
「付いております。重爆は、我と同時に変針、零戦隊も続いて変針しました。」
機長の問いに、副操縦員の一等兵曹が答えた。
編隊は、海上から奥地に向かって飛行しているが、3,500m上空から見下ろす大地には、森林や耕作地、街や村が点在し、これらを繋ぐ道路が、編隊の進行方向、つまり王都に向かって延びている。
やがて、操縦席の前方に、うすぼんやりと街らしいものが見えてきた。
山花は、機長にケッペルを操縦席へ呼んでもらい、着陸場所の案内をしてもらうことにした。
「前方に見えるのが、王都ですか?」
エンジンの爆音に負けじと、山花が大声でケッペルに訊くと
「左様でございます。今、眼下に見え始めているのが、王都クラズヘイムでございます。」
ケッペルも大声で答えて寄越した。
上空から見るクラズヘイムは、デ・ノーアトゥーン同様に城壁で囲まれているが、その規模が桁違いに大きい。
中央に城があって、放射状に延びた道路沿いに城下町が発達しているようであるが、城壁に囲まれた地域だけでも、デ・ノーアトゥーンの数倍はありそうだった。
そして、城内の道路は、城門を潜り城外の街道へと続いていて、各地からの街道が王都へ通じる様になっていると思われた。
「すべての道はローマへ続く、か。」
山花がボソッと呟くと
「何でございましょう?」
とケッペルが話し掛けて来た。
「いえ、何でもありません。ところで、練兵場はどのあたりでしょうか?」
山花は、話題を切り替えて尋ねた。
「西の城門の外側、耕作地が白く禿げた様な場所がお分かりか。」
ケッペルは、機首前方左側を指差して言った。
山花が目を凝らして見ると、確かに、パッチワークのような耕作地の一角が、禿げているように見える場所があった。
彼は、右側操縦席の機長の耳元に顔を近付け
「機長、あそこが着陸予定地だが、分かるか?」
と、ケッペルと同じ様に指を差して言った。
機長の兵曹長も、機首左側を凝視していたが
「ああ、わかりました。あの地面が白く見える一角ですね。」
と納得したように言った。
「そうだ。あそこへ降りるぞ。」
山花は、そう言ってから、ふと思い立ったように
「ケッペル男爵、ちょっとお城にご挨拶して行きましょうか。」
と言って、彼にしては珍しく、いたずらっぽく笑った。
ケッペルは、何となく察した様子で
「お手柔らかに願いまする。」
そう答えた。
山花は、機長に指示をして、クラズヘイムの市街地を高度300mの低空で東から西に突っ切り、その際、城の上空も低空で飛び越える算段をした。
まず、零戦隊が3機編隊で飛行し、その後を陸攻と重爆が並行して飛び越える手筈である。
5機は、いったんクラズヘイムの東側へ抜け、編隊を整えてから、真西にコースを取った。
まず、零戦3機が市街上空に差し掛かる。
零戦五二型は、推力式排気管を採用しているので、排気音が弾ける独特の爆音を出すため、威圧感があった。
道路を行き交う人々は、何事かと驚いて上空を見上げ、家々の窓からも、驚いた表情の人々が上空を見上げている。
四式重爆飛龍は、強制空冷方式のエンジンで、「キーン」という独特のタービン音を響かせるため、これも、知らない人間からすれば独特の気障りさがあった。
編隊がお城の上空に差し掛かると、これも、城から外に飛び出す人、バルコニーや窓から上空を見上げる人々で、てんやわんやの騒ぎである。
「どうだ。よぉくその目に刻み付けておけよ。これが日の丸飛行隊だ!」
飛行機乗りではない山花であるが、久し振りに愉快な気持ちになった。
さて、着陸であるが、予定地の練兵場は、上空から一見すると、立ち木や岩石もなく、目立った凹凸も見当たらない。
山花は、まず、零戦のうち一機を試しに着陸させ、陸攻と重爆の着陸に差し支えないか確認させることにした。
一機の零戦が、練兵場の西側から進入し、3点着陸の姿勢でゆっくりと降りて行った。
練兵場の端から100mほどのところに接地した零戦は、土埃を巻き上げながらそのまま地上走行を続け、反対の東側の端まで行くと、器用にくるりと転回した。
転回した零戦は、再びゆっくりと地上滑走を行い、そのまま西端に戻ると、再びくるりと転回して東側を向き、停止した。
地上滑走中、搭乗員がしきりに左右に首を振り、練兵場の様子を確認していたが、最終的に、両腕で大きな輪を作り、「着陸差支えなし」の合図を送って来た。
ここで、重爆が、脚とフラップを降ろしてゆっくりと西側から着陸コースに入り、練兵場の端から200~300mのところで主脚を着地させ、瀬踏みをするようにして数百m滑走した後に、尾輪を接地させて完全に着地、更に300mほど滑走したところで一旦停止して、誘導のため副操縦士が天窓を開けて上半身を出してから機首を左に向けて進み、着陸コースを陸攻のために空けた。
ブーブー
陸攻の中ではブザーが鳴り、機体が着陸態勢に入ることを告げた。
重爆と同じコースで着陸態勢に入り、脚とフラップを下げる。
着陸操作は機長が行い、副操縦員は周囲の見張りを行っている。
機長がスロットルを絞り、機首を僅かに上げ、徐々に機体を降下させて行く。
練兵場の端を通過したところで副操縦員が合図を送ると、機長は、機首上げのままスロットルを思い切って絞り、主脚を接地させ、続けて尾輪を接地させた。
地上滑走の速度が十分落ちたところで、重爆同様、副操縦員が天窓を開放して上半身を機外へ出し、地上滑走を誘導した。
上空で待機していた零戦二機は、陸攻と重爆が無事着陸したのを見届けた後、続いて練兵場に着陸し、先に着陸した一機と列線を組んだ。
「我レ現地ニ安着セリ」
陸攻から根拠地隊宛てに無線報告が飛んだ。
山花がホッと一息ついたのも束の間、周囲を見渡すと、兵士たちが近付いて来るのが見えた。
「機銃射撃用意、陸戦隊戦闘準備。ただし、別命あるまでの発砲を厳禁する。」
山花が命じた。
重爆でも、機銃員は射撃準備、挺身隊員は戦闘準備を整えていることだろう。
だが、とにかく、グリトニル辺境伯とイザベラ姫を城へ送り届けなければ、まだ任務は終わらない。
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そう山花は思った。
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