日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨

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第115話 欲しがりません勝つまでは

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 エンジンを止めた陸攻の後部胴体左側日の丸の乗降口から、花川少尉以下の陸戦隊5名がまず降機し、次いで山花大佐が降機した。

 重爆からも、挺身隊員たちが降機し、周囲を警戒している。

 陸攻からは、続けて、ケッペル男爵とグリトニル辺境伯が降り、グリトニルは、胴体内のアールトと一緒に、イザベラ姫の降機に手を貸した。

 イザベラが、出雲に乗艦したときのように乗馬ズボンを穿いてくれれば簡単だったが、今回は、普段のようにドレスを着用しており、乗機も降機も手間が掛かる。

 イザベラの後から、アールトと機長の矢切飛行兵曹長が降りて来たが、ペアの残りの搭乗員は、副操縦員は自席で待機、ほかの者は機銃座で機銃を構えている。

 こちらを目指す人の群れは、輪を縮める様に近付いている。

 場所が練兵場であるから、群衆の多くは兵士たちであり、その手には着剣したマスケット銃が握られている。

 その表情は一様に険しく、お世辞にも友好的とは言えない。

 すると、兵士の群れの中から、胸甲と兜を身に着け、栗毛色の馬に跨った騎士らしい人物が前に進み出て来た。

「問う。栄えある王国騎士団の練兵場に、前触れなくワイバーンで降り立つ貴殿らは何者か!」

 その騎士の手には槍が握られており、「寄らば撃つ」の構えである。

「控えよ!こちらにおわすは、ミズガルズ王国第二王女イザベラ・ラーシュニン・ファン・ミズガルズ殿下なるぞ!また、その隣におわすは、ブリーデヴァンガル属領主代官にしてグリトニル王国王子セーデルリンド・グレーゲルソン・ファン・グリトニル殿下なるぞ!」

 アールトが、周囲に響き渡る大音声で呼ばわった。

 その騎士は、アールトの台詞を聞き終わる前に馬から飛び降り、地面に片膝を着いた。

 周囲の兵士たちも、一斉に片膝を着いた。

「ははー。臣は、王国騎士アンダーソン、練兵場教練担当を務める者にございます。知らぬこととは申せ、御無礼、平にご容赦頂きますよう、お願い申し上げまする。」

 アンダーソンは、深く頭を下げて言った。

「宮仕えは、どこでも大変だなぁ。」

 矢切飛曹長は、目の前の光景を見ながらぼんやりと思った。
 そして、ハッとして

「高貴な人とは聞いていたが、俺は、とんでもなく偉い人たちを運んで来たのか。」

 と改めて気付いた。

 矢切は、「とにかく高貴な人を乗せるので気を付けろ。」ぐらいの説明しか受けていなかったから、周囲が仰々しくひれ伏せるような高貴な身分の人物を乗せているとは、さすがに思っていなかったのである。

「やべえな。俺、あの若い貴族にタメ口きいちまった。航空弁当代わりの缶詰とかも、気軽に勧めたな。」

 グリトニルが気さくに応じるものだから、機中で矢切は

「ねえ、若殿様。」

などと気軽に呼び、口の肥えているであろうグリトニルに、糧食である牛肉缶詰や稲荷ずしの缶詰を勧めて食べさせていたのである。 
  
「まあ、今更、四の五の言ってもしゃあないな。」

 矢切は、文句を言われないのだからそれで良い、と割り切ることにした。

「騎士アンダーソン。」
「ははっ!」
「両殿下は、お城に赴かれる。速やかに馬車を2台準備せよ。」
「ははっ!」

 アンダーソンの手配で、素早く馬車が2台用意されたが、間に合わせのもので、姫君が乗る馬車とは言い難かった。

 城までの警護は、花川少尉以下の陸戦隊が行い、鹿島少尉以下の挺身隊は、機材の警備に当たることになった。

 任務分担に特に理由はなく、どちらもお城行きを希望したので、花川と鹿島がジャンケンをしたところ、花川が勝っただけのことであった。

 馬車の1台にグリトニルとイザベラ、アールト、警護の陸戦隊花川少尉ほか1名と騎士が、もう1台にケッペルと山花、警護の陸戦隊員3名と騎士が乗り込み、お城へと進み始めた。

 山花と陸戦隊員たちは、デ・ノーアトゥーンとは比較にならない王都の賑やかさに目を見張った。

 彼らの祖国は、戦争のため疲弊が著しいが、今、眼前に広がっているのは、彼らが想像もできない平和で豊かな光景であった。

 窓外の光景を食い入るように見つめる山花にケッペルが

「異世界からの稀人には、我が国の光景がお気に召したとお見受けする。」

と言った。

「いえ、我々の知らない世界に、これほど豊かな国があるとは思いもしませんでした。」

 山花は正直に答えた。

「これは痛み入ります。民草が豊かに暮らせるということは、我が王による治世が正しく行き届いている証にございます。」

 ケッペルは、少々自慢気に言い、続けた。

「山花様のお国も、あのように大きな軍艦を建造し、多数の『ヒコーキ』を飛ばしている科学をお持ちなのですから、さぞ豊かなのでございましょうな。」

 このケッペルの言葉は、山花の胸に刺さった。

 確かに、日本は、戦艦や空母、航空機を製造し運用しているが、国民生活は疲弊、窮乏の度合いを深め、食料その他の物資欠乏は甚だしく、政府は

「欲しがりません勝つまでは」
「足りぬ足りぬは工夫が足りぬ」

などというスローガンを掲げ、実態から国民の目を逸らさせようと必死であった。

 そんな祖国の実態と眼前の光景を対比して、山花は「国の豊かさ」について考えざるを得なかった。

「我が政府や軍のお偉方が、この街の様子を見たらどう思うだろうか。」

 街の豊かさに圧倒された山花は、ふと思った。

「いや。でも、結局は満州やほかのアジアのように、できるだけ資源を確保しようとするだけの、貧困な発想になるのかな。」

 彼は、石油発見のときの自分を思い出すと、少し嫌な気分になった。
  
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