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別の世界から来た傲慢たる救世主
ウィリアム
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リクとウィリアムは近寄ることなく、お互い睨み合っていた。
「貴様が噂の救世主とやらか?その銃を持っているということはおそらくそうなのだろう。だが……ふん!何とも救世主には見えん」
「俺とて別に望んでいない」
リクはウィリアムの馬鹿にしたような発言に特に気にすることなく返す。
「だが……せっかくこうして会えたのだ。ネズミ駆除だけで帰るのももったいない。少し楽しもうじゃないか」
ウィリアムはそう言ってリクにゆっくり、しかし確実に近づいてきた。
「それ以上近づくな。近づくなら―――」
「撃つか?俺を?その後自慢の銃を持って俺を撃ち殺すか?」
ウィリアムは挑発するようにリクに問いかける。そして己の眉間をトントンと叩きながらリクに告げる。
「よろしい!いいだろう!撃て!俺の眉間にぶちかますことを許可してやろう」
「なっ!何を……」
ウィリアムの提案にリクは動揺する。
(こいつ何を言っている?撃てだと?この銃はただの銃でないことを先程の会話から察するにあの男も知っているはず。にも関わらず撃てだと?)
自殺を望んでいるとしか思えないその言葉にどうしようもなくリクは動揺する。
「どうした?撃たないのか?撃つためにそれはあるのだ?敵を殺すためにそれはあるのだ。そして敵である私は、撃たれても構わないと言っている。ならばこの場において正解はただ一つ。撃ち殺すことだ。出なければそれは存在する意味がない。それを所持する意味はない」
ウィリアムは笑いながらリクにそう促す。
「さあ!撃ってみせろ!」
その叫びに耐えきれなかったのかリク自身もわからない。だがリクは撃たねばならないと思った。目の前にいる者は間違いなく自身にとって害であると考えた。だからリクは促されて、空気に流されて撃ってしまったというのは否定できなかったが、同時に確かに『殺意』を持って銃の引き金を引いた。
「ぐおおおぉ!」
魔力によって生み出された銃弾はウィリアムの眉間を貫き、脳にまで達したのか、血飛沫を上げウィリアムは地面に倒れた。
「はぁはぁ」
あまりのことに思わず息を荒げる。以前動揺したままだ。人を殺してしまったことが原因であるか否かは本人も理解していない。
だがこれでひとまず嫌な緊張からは解放される。リクはそう考えた。眉間を貫かれたのだ即死していると考えるのは至極当然だった。
「……くっ!はは。……はは!」
笑い声が聞こえる。そしてその笑い声はそこから発せられるとは思えないところから聞こえてきた。
「くはははは!はははは!……愉快。実に愉快だ。今日は実に良い日だ。その武器は凄まじい。そしてそれを扱う貴様も中々にやる。撃たれた最中確かに貴様から明確な『殺意』を感じた!愉快だ。愉快でたまらん!」
笑い声の主は先程、眉間を打たれて即死したと思われたウィリアムからであった。
「嘘だろ……」
素直な感想がリクの口から漏れた。
「どれほどの威力か少し確かめたくなったのだ。素晴らしい威力だ。未だに傷口が完全には修復せぬ。完全にはな」
ウィリアムはそう言いながら眉間を指さした。リクはウィリアムが指で指し示しているところを確認すると、確かに傷があった。しかし銃でそれも一撃で頭を吹き飛ばすほどの威力で撃たれたにしてはあまりにも小さかった。そして今でも小さい傷はスッと何事もなかったかのように消え去っていった。
「どうした?何を驚いている?私が先程の攻撃で絶命すると思ったか?残念ながらそれでは殺せん。それでは死ねん。それでは私は倒せない」
「……クソ!」
今度は一発ではなく、複数発ウィリアムに向けて発砲する。
それらは全てウィリアムの体に命中し、ウィリアムをよろけさせるが、それだけであった。ウィリアムは右足に力を入れ倒れることを拒み、ニヤリと笑いながらリクを見つめた。
「戦闘は未だ素人。未だ戦を知らぬ半端者。それにも関わらず、先程の一発では倒せぬと理解するや否や、追撃を容赦なく入れる。動揺しながらも攻撃の手を緩めないとは……。実に愉快。愉―――」
言い終わる前にリクは追撃でもう一度眉間を撃ち抜いた。
だがやはりウィリアムを殺すことはできない。膝をつかせることもできない。そしてその実に楽しそうな笑みをなくすことすら出来なかった。
「愉快だ。愉快だ。これが救世主。こいつが救世主か!一切容赦もないこの男が救世主か!そして『あの男』は救世主ではないということか!ふふ愉快でしかないな」
「あの男?」
リクは疑問を口にする。
「貴様はまだ知らんで良い。知る必要などない。それよりも貴様。私に容赦なくぶちかましたのだ。ぶちかます以上それはぶちのめされる覚悟があるということだ。否。覚悟があるとみなす!ゆくぞ」
ウィリアムは右足で強く地面を蹴り、数十メートル離れていたリクとの距離を一瞬で詰め、拳を鳩尾にめり込ませる。
「うげぇ!」
情けない声を発しながらリクは吹き飛ばされ、後ろにあった土の壁に打ち付けられる。
「かっ……はぁっ!」
肺の中の酸素を一気に奪われた苦しみまでも襲いかかり、リクはすぐに酸素を取り込もうと試みる。
「ぬう!」
だがそれよりも早くウィリアムは左足でリクを蹴り上げる。
リクの体重は少なくとも65kgはある。だが、ウィリアムはそんなリクを左足で蹴り上げることで宙に浮かせた。
そして追撃にリクの顔面に右ストレートを決める。
ぐしゃっと心地の悪い音が響き渡る。同時にリクはさらに吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「どうした?もう終わりか?こんなものか?救世主?」
「!」
勢いよく立つ元気はリクになかった。だからそのまま転がることでウィリアムの方へとむき、発砲する。
「いいぞ!戦意を喪失せぬとは!だが、それでは私を殺せんと言ったはずだ!」
もはや庇うこともなくウィリアムはその攻撃を受けながらこちらに向かってきた。だが―――
(そんなことはわかっている!よく理解した。俺は理解力がある方だ!今の攻撃の目的は俺が立ち上がることだ。ゆったりと立ち上がるためにした攻撃だ。倒すためのものではない!)
「歯を食いしばれ救世主!」
ウィリアムはもう一度右拳に力を入れ、その拳をリクの腹に叩き込む。
その攻撃をリクは、腹筋を固めて、あえてその拳をくらった。
その衝撃は凄まじいものであった。来ると分かっていても耐えられるものではなかった。
「ぐええぇ」
思わず食べた者が出てきそうなほど出会った。しかしそれで死ぬほどではなかった。
(……こいつは俺を殺すために攻撃しているのではなく、痛めつけるために攻撃をしている。だったら『死ぬことはない』。それさえ分かればいい。それさえ分かったから行動に移せた)
リクは拳を叩き込まれるのとひきかえに自身の拳銃をウィリアムの左胸に押し当てた。すなわち心臓にだ。
そして発砲。確実に殺すために、殺意をもってリクは躊躇うことなく発砲した。
「……愉快。今のは、中々に焦ったぞ。小僧」
―――しかしそれでもなおウィリアムを殺すことはできなかった。
「先程から貴様は勇敢だ。誠覚悟とやらができている。勇気がある!闇から這い上がるための勇気がある。戦を切り抜けるための勇気がある。しかし……。しかしそれは言うなれば自分の闇を。その闇を受け入れ戦う勇気。とても『らしくない』。誰もが想像する救世主とは程遠い」
「……さっきからなんだ!救世主!救世主と。俺はやる気はないね!」
「知らん。そんなことは私の知ったことではない。ただ貴様は救世主である。猫に犬と言っても仕方あるまい。どれだけ否定しようと、どれだけ粘ろうと、猫は猫だ。それと一緒だ。貴様は貴様。ただの救世主。そしてあいつは救世主にはなれぬ我々のようなゴミ処理係。ただその事実を、その一点について再確認したまでよ」
リクは何を言っているのか理解していない。だが、ウィリアムは気にしない。理解されるために呟いたのではない。あくまで自分自身、事実を再確認するために行ったものなのだから。
「さて。次の遊びに行こうか。貴様は私が殺さぬだろうと踏んであのような行為に出たのだろう?」
「……」
リクは何も答えなかった。
「それは正解だ。別に殺すつもりはない。だが、怪我をさせぬつもりはないということはない。むしろ怪我を、大怪我を負わせるつもりだ。そのつもりで殴った。そのつもりで蹴った。俺の拳で骨の一つや二つ砕けているはずだ。そう砕けた。だが、今のお前の体はなんら怪我を負っていない」
「!」
リクはその時自分の体を正確に把握することができた。痛みはまだある。腹を殴られた特有の足にくる重い痛み。気を失うような鋭い痛みどちらも襲いかかってくる。だが、その割にリクは怪我を負っていなかった。骨折もなければ、
内出血もない。地面に叩きつけられた時にできるはずの擦り傷すらなかった。
「貴様自身理解していないようだ。自動回復。自己再生。その技を!その技術を!貴様はどうやら無意識ながら行なっているようだ」
「何それ怖い。俺の体一体どうなったのだ?」
少しばかり笑みを浮かべながらふざけたような口調で呟く。少しばかり余裕ができた証拠だ。
「別に何もなっていない。ただ力の使い方を覚えてきただけだ。さて次はこいつで相手してやろう」
ウィリアムは着ていたコートの中から一枚の紙を取り出し、それを放り投げると。そこから何か大きな棒状のものが現れた。
それはメイスであった。それも以上に大きな。ウィリアムの身長に近いぐらいの大きなメイスであった。
ウィリアムはそのメイスを軽々と片手で持ち、素振りをする。ただそれだけで風圧が生まれ、リクをよろけさせる。
そして同時にリクは全身冷や汗をかく。
(よくわからないが俺は怪我を治すのが早いらしい。全く知らんが。だがあれは無理だ。あんなのを食らって無事であるはずがない。あれはダメだ!)
リクの予想はおそらく正しい。むしろウィリアムの筋力を持ってメイスで攻撃されて無事であると予想する方が難しい。
「キィイイイイイイイイイアア!」
雄叫びをあげながらウィリアムは向かっていくる。
「そこまでよ」
もはやウィリアムの攻撃は避けられない。そう思い歯を食いしばった時、後ろから女性の声が聞こえてきた。
「貴様が噂の救世主とやらか?その銃を持っているということはおそらくそうなのだろう。だが……ふん!何とも救世主には見えん」
「俺とて別に望んでいない」
リクはウィリアムの馬鹿にしたような発言に特に気にすることなく返す。
「だが……せっかくこうして会えたのだ。ネズミ駆除だけで帰るのももったいない。少し楽しもうじゃないか」
ウィリアムはそう言ってリクにゆっくり、しかし確実に近づいてきた。
「それ以上近づくな。近づくなら―――」
「撃つか?俺を?その後自慢の銃を持って俺を撃ち殺すか?」
ウィリアムは挑発するようにリクに問いかける。そして己の眉間をトントンと叩きながらリクに告げる。
「よろしい!いいだろう!撃て!俺の眉間にぶちかますことを許可してやろう」
「なっ!何を……」
ウィリアムの提案にリクは動揺する。
(こいつ何を言っている?撃てだと?この銃はただの銃でないことを先程の会話から察するにあの男も知っているはず。にも関わらず撃てだと?)
自殺を望んでいるとしか思えないその言葉にどうしようもなくリクは動揺する。
「どうした?撃たないのか?撃つためにそれはあるのだ?敵を殺すためにそれはあるのだ。そして敵である私は、撃たれても構わないと言っている。ならばこの場において正解はただ一つ。撃ち殺すことだ。出なければそれは存在する意味がない。それを所持する意味はない」
ウィリアムは笑いながらリクにそう促す。
「さあ!撃ってみせろ!」
その叫びに耐えきれなかったのかリク自身もわからない。だがリクは撃たねばならないと思った。目の前にいる者は間違いなく自身にとって害であると考えた。だからリクは促されて、空気に流されて撃ってしまったというのは否定できなかったが、同時に確かに『殺意』を持って銃の引き金を引いた。
「ぐおおおぉ!」
魔力によって生み出された銃弾はウィリアムの眉間を貫き、脳にまで達したのか、血飛沫を上げウィリアムは地面に倒れた。
「はぁはぁ」
あまりのことに思わず息を荒げる。以前動揺したままだ。人を殺してしまったことが原因であるか否かは本人も理解していない。
だがこれでひとまず嫌な緊張からは解放される。リクはそう考えた。眉間を貫かれたのだ即死していると考えるのは至極当然だった。
「……くっ!はは。……はは!」
笑い声が聞こえる。そしてその笑い声はそこから発せられるとは思えないところから聞こえてきた。
「くはははは!はははは!……愉快。実に愉快だ。今日は実に良い日だ。その武器は凄まじい。そしてそれを扱う貴様も中々にやる。撃たれた最中確かに貴様から明確な『殺意』を感じた!愉快だ。愉快でたまらん!」
笑い声の主は先程、眉間を打たれて即死したと思われたウィリアムからであった。
「嘘だろ……」
素直な感想がリクの口から漏れた。
「どれほどの威力か少し確かめたくなったのだ。素晴らしい威力だ。未だに傷口が完全には修復せぬ。完全にはな」
ウィリアムはそう言いながら眉間を指さした。リクはウィリアムが指で指し示しているところを確認すると、確かに傷があった。しかし銃でそれも一撃で頭を吹き飛ばすほどの威力で撃たれたにしてはあまりにも小さかった。そして今でも小さい傷はスッと何事もなかったかのように消え去っていった。
「どうした?何を驚いている?私が先程の攻撃で絶命すると思ったか?残念ながらそれでは殺せん。それでは死ねん。それでは私は倒せない」
「……クソ!」
今度は一発ではなく、複数発ウィリアムに向けて発砲する。
それらは全てウィリアムの体に命中し、ウィリアムをよろけさせるが、それだけであった。ウィリアムは右足に力を入れ倒れることを拒み、ニヤリと笑いながらリクを見つめた。
「戦闘は未だ素人。未だ戦を知らぬ半端者。それにも関わらず、先程の一発では倒せぬと理解するや否や、追撃を容赦なく入れる。動揺しながらも攻撃の手を緩めないとは……。実に愉快。愉―――」
言い終わる前にリクは追撃でもう一度眉間を撃ち抜いた。
だがやはりウィリアムを殺すことはできない。膝をつかせることもできない。そしてその実に楽しそうな笑みをなくすことすら出来なかった。
「愉快だ。愉快だ。これが救世主。こいつが救世主か!一切容赦もないこの男が救世主か!そして『あの男』は救世主ではないということか!ふふ愉快でしかないな」
「あの男?」
リクは疑問を口にする。
「貴様はまだ知らんで良い。知る必要などない。それよりも貴様。私に容赦なくぶちかましたのだ。ぶちかます以上それはぶちのめされる覚悟があるということだ。否。覚悟があるとみなす!ゆくぞ」
ウィリアムは右足で強く地面を蹴り、数十メートル離れていたリクとの距離を一瞬で詰め、拳を鳩尾にめり込ませる。
「うげぇ!」
情けない声を発しながらリクは吹き飛ばされ、後ろにあった土の壁に打ち付けられる。
「かっ……はぁっ!」
肺の中の酸素を一気に奪われた苦しみまでも襲いかかり、リクはすぐに酸素を取り込もうと試みる。
「ぬう!」
だがそれよりも早くウィリアムは左足でリクを蹴り上げる。
リクの体重は少なくとも65kgはある。だが、ウィリアムはそんなリクを左足で蹴り上げることで宙に浮かせた。
そして追撃にリクの顔面に右ストレートを決める。
ぐしゃっと心地の悪い音が響き渡る。同時にリクはさらに吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「どうした?もう終わりか?こんなものか?救世主?」
「!」
勢いよく立つ元気はリクになかった。だからそのまま転がることでウィリアムの方へとむき、発砲する。
「いいぞ!戦意を喪失せぬとは!だが、それでは私を殺せんと言ったはずだ!」
もはや庇うこともなくウィリアムはその攻撃を受けながらこちらに向かってきた。だが―――
(そんなことはわかっている!よく理解した。俺は理解力がある方だ!今の攻撃の目的は俺が立ち上がることだ。ゆったりと立ち上がるためにした攻撃だ。倒すためのものではない!)
「歯を食いしばれ救世主!」
ウィリアムはもう一度右拳に力を入れ、その拳をリクの腹に叩き込む。
その攻撃をリクは、腹筋を固めて、あえてその拳をくらった。
その衝撃は凄まじいものであった。来ると分かっていても耐えられるものではなかった。
「ぐええぇ」
思わず食べた者が出てきそうなほど出会った。しかしそれで死ぬほどではなかった。
(……こいつは俺を殺すために攻撃しているのではなく、痛めつけるために攻撃をしている。だったら『死ぬことはない』。それさえ分かればいい。それさえ分かったから行動に移せた)
リクは拳を叩き込まれるのとひきかえに自身の拳銃をウィリアムの左胸に押し当てた。すなわち心臓にだ。
そして発砲。確実に殺すために、殺意をもってリクは躊躇うことなく発砲した。
「……愉快。今のは、中々に焦ったぞ。小僧」
―――しかしそれでもなおウィリアムを殺すことはできなかった。
「先程から貴様は勇敢だ。誠覚悟とやらができている。勇気がある!闇から這い上がるための勇気がある。戦を切り抜けるための勇気がある。しかし……。しかしそれは言うなれば自分の闇を。その闇を受け入れ戦う勇気。とても『らしくない』。誰もが想像する救世主とは程遠い」
「……さっきからなんだ!救世主!救世主と。俺はやる気はないね!」
「知らん。そんなことは私の知ったことではない。ただ貴様は救世主である。猫に犬と言っても仕方あるまい。どれだけ否定しようと、どれだけ粘ろうと、猫は猫だ。それと一緒だ。貴様は貴様。ただの救世主。そしてあいつは救世主にはなれぬ我々のようなゴミ処理係。ただその事実を、その一点について再確認したまでよ」
リクは何を言っているのか理解していない。だが、ウィリアムは気にしない。理解されるために呟いたのではない。あくまで自分自身、事実を再確認するために行ったものなのだから。
「さて。次の遊びに行こうか。貴様は私が殺さぬだろうと踏んであのような行為に出たのだろう?」
「……」
リクは何も答えなかった。
「それは正解だ。別に殺すつもりはない。だが、怪我をさせぬつもりはないということはない。むしろ怪我を、大怪我を負わせるつもりだ。そのつもりで殴った。そのつもりで蹴った。俺の拳で骨の一つや二つ砕けているはずだ。そう砕けた。だが、今のお前の体はなんら怪我を負っていない」
「!」
リクはその時自分の体を正確に把握することができた。痛みはまだある。腹を殴られた特有の足にくる重い痛み。気を失うような鋭い痛みどちらも襲いかかってくる。だが、その割にリクは怪我を負っていなかった。骨折もなければ、
内出血もない。地面に叩きつけられた時にできるはずの擦り傷すらなかった。
「貴様自身理解していないようだ。自動回復。自己再生。その技を!その技術を!貴様はどうやら無意識ながら行なっているようだ」
「何それ怖い。俺の体一体どうなったのだ?」
少しばかり笑みを浮かべながらふざけたような口調で呟く。少しばかり余裕ができた証拠だ。
「別に何もなっていない。ただ力の使い方を覚えてきただけだ。さて次はこいつで相手してやろう」
ウィリアムは着ていたコートの中から一枚の紙を取り出し、それを放り投げると。そこから何か大きな棒状のものが現れた。
それはメイスであった。それも以上に大きな。ウィリアムの身長に近いぐらいの大きなメイスであった。
ウィリアムはそのメイスを軽々と片手で持ち、素振りをする。ただそれだけで風圧が生まれ、リクをよろけさせる。
そして同時にリクは全身冷や汗をかく。
(よくわからないが俺は怪我を治すのが早いらしい。全く知らんが。だがあれは無理だ。あんなのを食らって無事であるはずがない。あれはダメだ!)
リクの予想はおそらく正しい。むしろウィリアムの筋力を持ってメイスで攻撃されて無事であると予想する方が難しい。
「キィイイイイイイイイイアア!」
雄叫びをあげながらウィリアムは向かっていくる。
「そこまでよ」
もはやウィリアムの攻撃は避けられない。そう思い歯を食いしばった時、後ろから女性の声が聞こえてきた。
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