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目覚め その1
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目がさめると全くもって見知らぬ森の中にいた。辺りを見渡すと見えるのは草、木など自然物のみである。それ以外は少なくとも加藤岡謙也の目には入ることはなかった。
(……ここはいったい何処なんだ?)
その疑問が謙也の頭を支配する。全くもって見に覚えがないのだ。なぜ自分がこんなところで寝ているのか、それもわからない。そもそもこんな森に来た覚えするないのだ。
(とりあえず、ここにいたも仕方ない)
謙也はひとまず辺りを探ることにした。もしかしたらちょっと動いたら町にでるかもしれないからだ。
しかしその期待は裏切られ、歩いてもそのようなものは見つからなかった。
「これはいよいよどうするべきか……」
そういって悩み始めたが、悩んで解決策も見つかるわけもない。しかし悩まずにはいられないという状況だが、それでも足を止めることはなかった。
「んっ。あれは……」
謙也が目にしたのは建物であった。しかしどうもボロくさく人が住んでいるとは思えないものであった。いわゆる廃墟というものだ。
その廃墟はかなり大きいのか、木々で覆われている中でもその存在を認識することができたのだ。おそらくあと数百mもあるけばそこにたどり着けるだろう。
(正直人はいないと思うが、いってみるか)
廃墟とはいえ人工物を見つけた謙也は少しばかり表情が明るくなる。謙也が歩いてきた道は整備されていない獣道であったが、それなりに大きな建造物があるということはその建物に行くために整備された道があるかもしれない。そこを辿っていけば町へ出ることも可能だからだ。
そのような期待を寄せながら謙也は力強く前へ進み始める。
しかしどうやらそう簡単にはいかないようだ。謙也は急に恐怖にその身を支配された。なぜそのような恐怖心が生まれたのか、それは自分自身にもわからなかった。しかし『やばい』と、己の脳がそう指令を出しているのだ。だから謙也はその指令に従い、後ろを振り向いた。
そこには鋭利な牙、そして爪が備わった全長2mあるだろう、大きな獣がそこにはいた。それだけではない、その獣には大きな特徴があった。それは巨大な翼であった。まるで鷹のように勇ましい翼がついた。
「っ!」
一瞬謙也は呼吸の仕方を忘れてしまった。忘れてしまうほどの衝撃であった。
その理由は三つだ。一つ目は言わずもがな、今目の前に己の体を二つに切り裂けそうな猛獣がいることによる恐怖。そしてもう一つは、今まで見たこともない動物が目の前に現れたことである。少なくとも図鑑にこのような生物はいなかった。
そして最後は、見たこともない、図鑑にも載っていないであろう生物にも関わらず謙也はその生物のことをどういうわけか知っていることである。
「大型キメラ、『クライガー』……」
自然とその生物の名前が出た、なぜその単語を口にできたのかよくわからない。ネットで調べて覚えたということもない。それにも関わらず頭の中にそのような単語が入っていた。
(なぜ、俺はこいつのことを知っているんだ?クソ、気持ちが悪い)
戸惑いを隠せないが、今はそんな場合ではない。なにせ今にも襲い掛かりそうな猛獣が目の前にいるのにその気持ち悪さについて考えている余裕などないのだ。
「グルルルルッ」
謙也の目の前に立つクライガーは、重心を前に持って行き、戦闘体制に入る。
(前に重心を持っていったのち、こいつは一気に獲物に向かって襲いかかっていくる!それがたとえ数メートル離れていようと、その程度こいつには大した距離ではない!つまりこの距離は危険。なら俺がすべき行動は―――
クライガーは地面に穴があくほどの脚力を持って謙也に襲いかかる
(前に突っ走ること!)
確信を持って謙也は前に進む、目の前にいる猛獣に突っ込むことに恐怖心があるが、謙也にはどういうわけかわからないが、それが正しいという知識があった。その知識が謙也を怯えさせ、その場で足を震えるだけでやられるなどの最悪の事態を免れさせた。
そしてやはりその判断は正しかった。クライガーの腹の下に潜り込み、クライガーはそのまますでに誰もいない場所まで飛んで行った。一度飛びかかるとブレーキをすることができないのだろう。
(次の攻撃パターンは、後ろにいる俺に右爪でフックをするかのような攻撃のはず)
謙也はそのような予測を立て、それに対する防御行動に出る。
そして謙也の予測はまたしても正解であり、クライガーはまるで回転でもするかのように反時計回りで右手にある鋭利な爪で謙也を切り裂こうとする。
それに対する謙也の行動は実にシンプル、後ろに数歩下がり、攻撃が当たらない場所まで避難するただそれだけである。鋭利な爪で当たれば確実に致命傷は免れないものではあるが、ようは右フック。しかもそれを繰り出すまで数秒間とはいえ猶予があった。ならば素人とはいえ、ボクサーのようにスウェーでかわすことなど容易であった。
(クライガーは攻撃の威力こそ高いが、その全てが大振りだ。そして攻撃を外したいま、体勢を大きく崩したはず。その隙に俺は逃げる!)
そして謙也は猛ダッシュで逃げた。その逃げる先は先ほど見つけた廃墟である。廃墟に逃げ込もうと考えたのだ。幸いその距離は数百メートル、持久走にはそれなりに自信がある。1500m走なら4分20秒ほどで走れる。この距離ならば、2分もかからない。
(不思議な感覚だ。こんな大きな怪物は今まで見たこともないし聞いたこともないのにも関わらず、こいつに関する知識を持ち合わせているだけでなく、その知識を存分に使いこなせている事に。)
謙也はまるで、あの猛獣について造詣が深いのではないかと思わせるほどだ。一夜ずけで知識を詰め込んだところで、瞬時にそれを引き出せるものではない。しっかり学ばなければあのように自然に知識を引き出せないのだから。
「あと少しだ」
もう目の前には廃墟があった。あと数十秒もあればその中へ入れるだろう。
だが、やはりと言うべきか物事というものはそう簡単には進まないらしい。後ろから空気を切り裂くような音が聞こえる。その音はどんどん大きくなっていく、近づいてきているのだ。狙いを定めているのだ。大きな牙で今度こそ捉えようとしているのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
謙也に危機管理センサーがあるとするならば、かなり優秀なセンサーだろう。なにせあと少し横に飛び遅れたなら己の上半身は下半身とお別れさせられていたのだから。
(次こいつが襲ってくるとしたら、左前脚がくるはずだ!)
そう判断した謙也はすぐに回避行動に出る。がしかし、クライガーの行動は少し早かった。そして謙也はやはり動きは素人であったのだろう。とりあえず適当に後ろへ下がろうとしたせいか、己の左手が置き去りになってしまった。
その結果、己の左手は綺麗に離されることとなる。ロボットのプラモデルを遊んでいた時にうっかり力を入れすぎてポキっと折れてしまったように、綺麗にその左手がすっ飛んで行った。
そしてその飛んで行った謙也の左手はそのまま数mほど飛んだ先にぽすっと小さな音を立てて地面に落ちた。
「……」
何が起きたのか謙也は理解していない。だがすぐに理解させられる。己の左腕から流れる血によって、生々しいおよそ鼻血を出した時にしかその匂いを嗅ぐことはない匂いを、いやでも嗅ぐことになる。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ亜」
叫んだ、声が枯れるほど叫んだ。目が霞む、涙で霞んでしまう。だけど痛みはない。痛みを感じることはできなかった。それほどの衝撃、だけどそれは今は救いだった。
謙也は走った、逃げるためにあの猛獣から助かるために。その廃墟のドアにタックルし、その中に入りドアを施錠する。必死だった。この間何も考えていないと言っていいほどだ。ほとんど無意識に行動したと言っていいただろう。
「あ、あ、あああぁ!」
そして改めて左に意識を向ける。
「痛い、痛い。あああ……はっ、はぁ!」
うずくまりながら右手で止血しようと左手を抑える。これで効果があるかわからない。だけどそうすることで精神的にはほんの少しばかり穏やかになる。ほんの少しだが。
謙也の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。その涙と鼻水が混じり合った透明な水が地面に流れ落ち、水たまりができるほどであった。
「畜生何で俺が!俺がこんな目に!」
ぶつけようのない怒りが謙也を襲いかかる。なぜ自分がこんな目に合わなくてはならないのか?という疑問が怒りとなったのだ。
「うううううううううううううううう」
しかしあまりここでそんな怒りに支配されて思うがまま動くというわけにも行かなかった。あの猛獣の脅威がさったわけではない。この廃墟に入ってからどこからか鈍い響きが聞こえてくる。おそらくこの建物を破壊しようと試みているのだろう。
(このまま諦めたらいいのに……俺以外にも獲物はたくさんいるだろうが!)
悪態をつきながらゆったりと謙也は立ち上がる。何か切り抜ける方法が見つかるかもしれないという期待を胸に抱き立ち上がる。
その時謙也はあることに気がついた。
「出血が止まっている?」
先ほどまでせきとめるにも止められなかった出血が見事に止まっており、心なしか傷口がふさがっているように思えた。自然に回復したわけではない。それにしてはあまりに早すぎる。そんな回復力に期待していたら、それよりも早くに出血死していただろう。
「どうなっているんだ?痛みもなくなっている。それにさっきの化け物だって俺は『クライガー』だって知ってい
た。なんか本を読んでいたわけでもないのに……」
今自分が置かれている状況に困惑するしかなかった。全くもって見に覚えのない知識が頭に入っていたという気持ち悪さ、そして今まで見たこともない猛獣に襲われ左手が奪われるという恐怖、一度に味わったがゆえにもうどういった表情をしていいのか謙也にはわからなかった。
「……とりあえず進むか」
それしか謙也には選択肢がなかった。このままここにいてもずっと安全とは限らない。というか安全だとは思えなかったのだ。何か武器があるのではないか?奴を倒せる何かが。それがあればあの猛獣を倒せるかもしれない。という考えが彼に浮かび上がってきたのだ。
謙也はだいぶ落ち着きを取り戻したのか、ようやく辺りを注意深く観察するだけの余裕が復活してきた。
(やっぱりここって俺が住んでいた日本と違う世界のような気がする……)
頭がパニックになりながら薄々気がついていたが、ここで確信に至る。
加藤岡謙也、17歳どこにでもある普通の高校に通う少々運動に覚えのある高校生である。何か特別に力があったというわけでもないし、クラスで浮いていたような人物でもない。正直他の人間からすれば別段目にかけられるような人物ではない。そして本人もまた至って特別なことが怒らず、過ごしていくものだと考えていた。そう考えていたのに現状は違った。気がついたら森の中で寝ていて、猛獣に襲われ、命からがらここに逃げ込む羽目になる。謙也からすれば全くもって理不尽のような気がしてならなかった。
そしてその逃げ込んだ廃墟もまたただの廃墟ではなかった。
「何だこれ?見たこともない機械があちこちにあるぞ……パソコンか?だが、それにしてはキーボードがないよな……」
謙也は何気なしにその機械を弄り始める。当然ながらその機械は初見だ。説明書なしで正しく動かせる気がしなかった。だが、不思議とどこが電源ボタンで、そしてどういった方法で動かすかなんとなくわかった。それはまるでこの機械と類似するものを知っていたかのようであった。
カチッと最後のボタンを押すとそのコンピューターは起動し始め、空中にキーボードらしきものが浮上する。そして謙也は適当に操作する。すると一つ注目すべきものにたどりつく。
「天下五剣?なんだそれ?」
謙也の目線に合うように日本刀のような剣が映像として表示される。まるで手に取ることができるような感覚であった。
(なんでこんなものが?だいたい天下五剣っていうけど一本しかないじゃないか……)
謙也は何か武器を、それも見たことのない強力な、謙也の左手を奪った猛獣を一撃で殺せるような武器を期待した。しかし出てきたのは日本刀。それが謙也の気分をかなり下げる要因となった。謙也は剣に覚えがない。覚えがあったとしても、例えばライオンに襲われて刀で倒せるだろうかと言われると無理である。とするならば、それ以上の猛獣であるクライガーにこんな鉄の塊一本で挑んでも勝てることはないだろうと考えたのだ。だから気分が落ち込んだのだ。
(いや、まだだ。まだなにかあるはず!)
だが謙也は希望を捨てなかった。いや捨てたくなかった。こんなところで死にたくなかったのだ。訳のわからないまま森で寝ていて、猛獣に襲われ、人生が終わるなんてそんなものはただただ嫌だったのだ。
突如後ろから鈍い音とともに、雄叫びが聞こえてくる。その鈍い音、そしてその雄叫びが何を意味するのか謙也はすぐに理解した。理解したくはないが、理解してしまった。
(アイツがくる!来てしまう!)
体が震える。どうしようもなく震える。このまま頭を抱えながらしゃがみこみながら子供の様に泣きたい気分である。
そんな衝動に駆られるが、それを懸命に押さえ込みながら走り出す。とにかく前へ行ってなんとかしてやり過ごそうと考えてだ。
「クソ!ここは開かないのか!」
ドンドンと固く閉ざされた扉を叩きながら悪態をついていた。謙也はさらに奥に進んだ先で見つけた最後の扉であった。しかし中には入れない。
「……結局何も解決策が見つからない」
頭を抱えながらヨロヨロと壁にもたれかかる。左手を失い体力もだいぶ削れてしまったのも原因だろう。
だが謙也はそのもたれかかった時、無意識にもその近くにあったパネルに右手を重ねた。
機械はまだ作動していたようだ。謙也の右手を読み取り、先ほど必死に謙也が殴りつけた扉があっさりと開いたのだ。
「……なんだよ。そういうことならそう言ってこれよ」
苦笑いしながらも少し喜びの感情を混ぜた言葉だった。そして謙也はその部屋に入っていく。
その場所はなんともただ広い場所だという感想が謙也に浮かんだ。その壁の周辺にはよくわからない機材が並んでおり、触ってしまうと面倒なことになりそうだという感じが謙也にはした。
だが、最も注意が惹かれるのはその中央にあったこの物であった。
それは日本刀であった。この施設はそれなりの期間使われていないことがわかる。だが、その刀はなんとも綺麗な状態で保たれており、そして埃が被っている様子など見られなかった。
「これが天下五剣とかいうやつか?ここはこれはなぜか研究しているというわけか……だが、こんな刀一つであんな奴を倒せるようには思えないぞ。せめてなんか銃とかあればよかったのに……」
辺りを見回してもそんなものはなく、やはり武器といえばこの刀だけであった。改めてその事実を確認した謙也は落胆してしまう。
「だけどないよりはマシか……」
もしかしたらちょっと相手を怯ませることぐらいはできるかもしれない。そう考え、謙也はその刀に近づいた。
だが謙也はその刀を取ることができなかった。重たくて持てなかったとかそういう理由ではなかった。刀が避けたのだ。謙也が刀に触れようとした瞬間、宙に浮いたのだ。
「は?」
謙也は理解できなかった。予想外のことが起きて謙也は間抜けな声が漏れてしまう。
そしてその宙に浮いた刀は一直線に謙也の胸に突き刺さるようために向かっていった。
「がっ!はっ…」
肺に残っていた酸素がすべて吐き出される。
いや、酸素だけではない。背中がお湯で濡れたときのように暖かい。謙也の血液である。それが大量に流れているのだ。
―――死
それだけが謙也の頭に浮かんだ。痛みに気を取られている暇なんかなかった。ゆったりと自分が死んでいくことだけが感じ取られた。
(……なんで、俺が……こんな目に?)
その疑問が突如湧いて起こってきた。どうして自分がこんな理不尽な目に合わなければいけないのかという怒りが湧いてきた。
(死にたくない……)
まだまだやりたい事がある。死にたくない。その思いが次に頭を支配する。
だが、体は動かず。次第に冷たくなっていく。いやでも死がもう間近に迫っていることを突きつけられる。
「あらあらあらあら……大変なことになっているねぇ~大丈夫?」
どこからか声が聞こえる。その声は心配するようなことを言っているが、その感情には一切謙也を心配しているようには思えなかった。
(た、助けて…助けてくれ……)
だがそんなことを謙也は気にする余裕はない。今重要なのは死にかけているところに人がいるということだ。
謙也はその人物の方向へと手を伸ばす。助けてくれと救いの手を求める。
するとその人物の顔がうっすらと見えてきた。
だが、細かく観察する暇はない。ただ理解できたのはその人物はニヤニヤと下品に笑っていたことであった。
その人物は謙也の手を取らなかった。手に取ったのは謙也に刺さっている刀だ。
そしてその刀をさらに深く謙也に突き刺したのだ。
「がっ!!……っは」
謙也は意識していなかった痛みを強制的に意識させられる。
「ほらほら痛みに耐えな。それが生き残る道だよ。耐えた先に力があるのだよ」
その人物のいう意味は謙也には理解できなかった。
理解しようとすることもできない。そのまま謙也は意識を失ってしまった。
(……ここはいったい何処なんだ?)
その疑問が謙也の頭を支配する。全くもって見に覚えがないのだ。なぜ自分がこんなところで寝ているのか、それもわからない。そもそもこんな森に来た覚えするないのだ。
(とりあえず、ここにいたも仕方ない)
謙也はひとまず辺りを探ることにした。もしかしたらちょっと動いたら町にでるかもしれないからだ。
しかしその期待は裏切られ、歩いてもそのようなものは見つからなかった。
「これはいよいよどうするべきか……」
そういって悩み始めたが、悩んで解決策も見つかるわけもない。しかし悩まずにはいられないという状況だが、それでも足を止めることはなかった。
「んっ。あれは……」
謙也が目にしたのは建物であった。しかしどうもボロくさく人が住んでいるとは思えないものであった。いわゆる廃墟というものだ。
その廃墟はかなり大きいのか、木々で覆われている中でもその存在を認識することができたのだ。おそらくあと数百mもあるけばそこにたどり着けるだろう。
(正直人はいないと思うが、いってみるか)
廃墟とはいえ人工物を見つけた謙也は少しばかり表情が明るくなる。謙也が歩いてきた道は整備されていない獣道であったが、それなりに大きな建造物があるということはその建物に行くために整備された道があるかもしれない。そこを辿っていけば町へ出ることも可能だからだ。
そのような期待を寄せながら謙也は力強く前へ進み始める。
しかしどうやらそう簡単にはいかないようだ。謙也は急に恐怖にその身を支配された。なぜそのような恐怖心が生まれたのか、それは自分自身にもわからなかった。しかし『やばい』と、己の脳がそう指令を出しているのだ。だから謙也はその指令に従い、後ろを振り向いた。
そこには鋭利な牙、そして爪が備わった全長2mあるだろう、大きな獣がそこにはいた。それだけではない、その獣には大きな特徴があった。それは巨大な翼であった。まるで鷹のように勇ましい翼がついた。
「っ!」
一瞬謙也は呼吸の仕方を忘れてしまった。忘れてしまうほどの衝撃であった。
その理由は三つだ。一つ目は言わずもがな、今目の前に己の体を二つに切り裂けそうな猛獣がいることによる恐怖。そしてもう一つは、今まで見たこともない動物が目の前に現れたことである。少なくとも図鑑にこのような生物はいなかった。
そして最後は、見たこともない、図鑑にも載っていないであろう生物にも関わらず謙也はその生物のことをどういうわけか知っていることである。
「大型キメラ、『クライガー』……」
自然とその生物の名前が出た、なぜその単語を口にできたのかよくわからない。ネットで調べて覚えたということもない。それにも関わらず頭の中にそのような単語が入っていた。
(なぜ、俺はこいつのことを知っているんだ?クソ、気持ちが悪い)
戸惑いを隠せないが、今はそんな場合ではない。なにせ今にも襲い掛かりそうな猛獣が目の前にいるのにその気持ち悪さについて考えている余裕などないのだ。
「グルルルルッ」
謙也の目の前に立つクライガーは、重心を前に持って行き、戦闘体制に入る。
(前に重心を持っていったのち、こいつは一気に獲物に向かって襲いかかっていくる!それがたとえ数メートル離れていようと、その程度こいつには大した距離ではない!つまりこの距離は危険。なら俺がすべき行動は―――
クライガーは地面に穴があくほどの脚力を持って謙也に襲いかかる
(前に突っ走ること!)
確信を持って謙也は前に進む、目の前にいる猛獣に突っ込むことに恐怖心があるが、謙也にはどういうわけかわからないが、それが正しいという知識があった。その知識が謙也を怯えさせ、その場で足を震えるだけでやられるなどの最悪の事態を免れさせた。
そしてやはりその判断は正しかった。クライガーの腹の下に潜り込み、クライガーはそのまますでに誰もいない場所まで飛んで行った。一度飛びかかるとブレーキをすることができないのだろう。
(次の攻撃パターンは、後ろにいる俺に右爪でフックをするかのような攻撃のはず)
謙也はそのような予測を立て、それに対する防御行動に出る。
そして謙也の予測はまたしても正解であり、クライガーはまるで回転でもするかのように反時計回りで右手にある鋭利な爪で謙也を切り裂こうとする。
それに対する謙也の行動は実にシンプル、後ろに数歩下がり、攻撃が当たらない場所まで避難するただそれだけである。鋭利な爪で当たれば確実に致命傷は免れないものではあるが、ようは右フック。しかもそれを繰り出すまで数秒間とはいえ猶予があった。ならば素人とはいえ、ボクサーのようにスウェーでかわすことなど容易であった。
(クライガーは攻撃の威力こそ高いが、その全てが大振りだ。そして攻撃を外したいま、体勢を大きく崩したはず。その隙に俺は逃げる!)
そして謙也は猛ダッシュで逃げた。その逃げる先は先ほど見つけた廃墟である。廃墟に逃げ込もうと考えたのだ。幸いその距離は数百メートル、持久走にはそれなりに自信がある。1500m走なら4分20秒ほどで走れる。この距離ならば、2分もかからない。
(不思議な感覚だ。こんな大きな怪物は今まで見たこともないし聞いたこともないのにも関わらず、こいつに関する知識を持ち合わせているだけでなく、その知識を存分に使いこなせている事に。)
謙也はまるで、あの猛獣について造詣が深いのではないかと思わせるほどだ。一夜ずけで知識を詰め込んだところで、瞬時にそれを引き出せるものではない。しっかり学ばなければあのように自然に知識を引き出せないのだから。
「あと少しだ」
もう目の前には廃墟があった。あと数十秒もあればその中へ入れるだろう。
だが、やはりと言うべきか物事というものはそう簡単には進まないらしい。後ろから空気を切り裂くような音が聞こえる。その音はどんどん大きくなっていく、近づいてきているのだ。狙いを定めているのだ。大きな牙で今度こそ捉えようとしているのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
謙也に危機管理センサーがあるとするならば、かなり優秀なセンサーだろう。なにせあと少し横に飛び遅れたなら己の上半身は下半身とお別れさせられていたのだから。
(次こいつが襲ってくるとしたら、左前脚がくるはずだ!)
そう判断した謙也はすぐに回避行動に出る。がしかし、クライガーの行動は少し早かった。そして謙也はやはり動きは素人であったのだろう。とりあえず適当に後ろへ下がろうとしたせいか、己の左手が置き去りになってしまった。
その結果、己の左手は綺麗に離されることとなる。ロボットのプラモデルを遊んでいた時にうっかり力を入れすぎてポキっと折れてしまったように、綺麗にその左手がすっ飛んで行った。
そしてその飛んで行った謙也の左手はそのまま数mほど飛んだ先にぽすっと小さな音を立てて地面に落ちた。
「……」
何が起きたのか謙也は理解していない。だがすぐに理解させられる。己の左腕から流れる血によって、生々しいおよそ鼻血を出した時にしかその匂いを嗅ぐことはない匂いを、いやでも嗅ぐことになる。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ亜」
叫んだ、声が枯れるほど叫んだ。目が霞む、涙で霞んでしまう。だけど痛みはない。痛みを感じることはできなかった。それほどの衝撃、だけどそれは今は救いだった。
謙也は走った、逃げるためにあの猛獣から助かるために。その廃墟のドアにタックルし、その中に入りドアを施錠する。必死だった。この間何も考えていないと言っていいほどだ。ほとんど無意識に行動したと言っていいただろう。
「あ、あ、あああぁ!」
そして改めて左に意識を向ける。
「痛い、痛い。あああ……はっ、はぁ!」
うずくまりながら右手で止血しようと左手を抑える。これで効果があるかわからない。だけどそうすることで精神的にはほんの少しばかり穏やかになる。ほんの少しだが。
謙也の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。その涙と鼻水が混じり合った透明な水が地面に流れ落ち、水たまりができるほどであった。
「畜生何で俺が!俺がこんな目に!」
ぶつけようのない怒りが謙也を襲いかかる。なぜ自分がこんな目に合わなくてはならないのか?という疑問が怒りとなったのだ。
「うううううううううううううううう」
しかしあまりここでそんな怒りに支配されて思うがまま動くというわけにも行かなかった。あの猛獣の脅威がさったわけではない。この廃墟に入ってからどこからか鈍い響きが聞こえてくる。おそらくこの建物を破壊しようと試みているのだろう。
(このまま諦めたらいいのに……俺以外にも獲物はたくさんいるだろうが!)
悪態をつきながらゆったりと謙也は立ち上がる。何か切り抜ける方法が見つかるかもしれないという期待を胸に抱き立ち上がる。
その時謙也はあることに気がついた。
「出血が止まっている?」
先ほどまでせきとめるにも止められなかった出血が見事に止まっており、心なしか傷口がふさがっているように思えた。自然に回復したわけではない。それにしてはあまりに早すぎる。そんな回復力に期待していたら、それよりも早くに出血死していただろう。
「どうなっているんだ?痛みもなくなっている。それにさっきの化け物だって俺は『クライガー』だって知ってい
た。なんか本を読んでいたわけでもないのに……」
今自分が置かれている状況に困惑するしかなかった。全くもって見に覚えのない知識が頭に入っていたという気持ち悪さ、そして今まで見たこともない猛獣に襲われ左手が奪われるという恐怖、一度に味わったがゆえにもうどういった表情をしていいのか謙也にはわからなかった。
「……とりあえず進むか」
それしか謙也には選択肢がなかった。このままここにいてもずっと安全とは限らない。というか安全だとは思えなかったのだ。何か武器があるのではないか?奴を倒せる何かが。それがあればあの猛獣を倒せるかもしれない。という考えが彼に浮かび上がってきたのだ。
謙也はだいぶ落ち着きを取り戻したのか、ようやく辺りを注意深く観察するだけの余裕が復活してきた。
(やっぱりここって俺が住んでいた日本と違う世界のような気がする……)
頭がパニックになりながら薄々気がついていたが、ここで確信に至る。
加藤岡謙也、17歳どこにでもある普通の高校に通う少々運動に覚えのある高校生である。何か特別に力があったというわけでもないし、クラスで浮いていたような人物でもない。正直他の人間からすれば別段目にかけられるような人物ではない。そして本人もまた至って特別なことが怒らず、過ごしていくものだと考えていた。そう考えていたのに現状は違った。気がついたら森の中で寝ていて、猛獣に襲われ、命からがらここに逃げ込む羽目になる。謙也からすれば全くもって理不尽のような気がしてならなかった。
そしてその逃げ込んだ廃墟もまたただの廃墟ではなかった。
「何だこれ?見たこともない機械があちこちにあるぞ……パソコンか?だが、それにしてはキーボードがないよな……」
謙也は何気なしにその機械を弄り始める。当然ながらその機械は初見だ。説明書なしで正しく動かせる気がしなかった。だが、不思議とどこが電源ボタンで、そしてどういった方法で動かすかなんとなくわかった。それはまるでこの機械と類似するものを知っていたかのようであった。
カチッと最後のボタンを押すとそのコンピューターは起動し始め、空中にキーボードらしきものが浮上する。そして謙也は適当に操作する。すると一つ注目すべきものにたどりつく。
「天下五剣?なんだそれ?」
謙也の目線に合うように日本刀のような剣が映像として表示される。まるで手に取ることができるような感覚であった。
(なんでこんなものが?だいたい天下五剣っていうけど一本しかないじゃないか……)
謙也は何か武器を、それも見たことのない強力な、謙也の左手を奪った猛獣を一撃で殺せるような武器を期待した。しかし出てきたのは日本刀。それが謙也の気分をかなり下げる要因となった。謙也は剣に覚えがない。覚えがあったとしても、例えばライオンに襲われて刀で倒せるだろうかと言われると無理である。とするならば、それ以上の猛獣であるクライガーにこんな鉄の塊一本で挑んでも勝てることはないだろうと考えたのだ。だから気分が落ち込んだのだ。
(いや、まだだ。まだなにかあるはず!)
だが謙也は希望を捨てなかった。いや捨てたくなかった。こんなところで死にたくなかったのだ。訳のわからないまま森で寝ていて、猛獣に襲われ、人生が終わるなんてそんなものはただただ嫌だったのだ。
突如後ろから鈍い音とともに、雄叫びが聞こえてくる。その鈍い音、そしてその雄叫びが何を意味するのか謙也はすぐに理解した。理解したくはないが、理解してしまった。
(アイツがくる!来てしまう!)
体が震える。どうしようもなく震える。このまま頭を抱えながらしゃがみこみながら子供の様に泣きたい気分である。
そんな衝動に駆られるが、それを懸命に押さえ込みながら走り出す。とにかく前へ行ってなんとかしてやり過ごそうと考えてだ。
「クソ!ここは開かないのか!」
ドンドンと固く閉ざされた扉を叩きながら悪態をついていた。謙也はさらに奥に進んだ先で見つけた最後の扉であった。しかし中には入れない。
「……結局何も解決策が見つからない」
頭を抱えながらヨロヨロと壁にもたれかかる。左手を失い体力もだいぶ削れてしまったのも原因だろう。
だが謙也はそのもたれかかった時、無意識にもその近くにあったパネルに右手を重ねた。
機械はまだ作動していたようだ。謙也の右手を読み取り、先ほど必死に謙也が殴りつけた扉があっさりと開いたのだ。
「……なんだよ。そういうことならそう言ってこれよ」
苦笑いしながらも少し喜びの感情を混ぜた言葉だった。そして謙也はその部屋に入っていく。
その場所はなんともただ広い場所だという感想が謙也に浮かんだ。その壁の周辺にはよくわからない機材が並んでおり、触ってしまうと面倒なことになりそうだという感じが謙也にはした。
だが、最も注意が惹かれるのはその中央にあったこの物であった。
それは日本刀であった。この施設はそれなりの期間使われていないことがわかる。だが、その刀はなんとも綺麗な状態で保たれており、そして埃が被っている様子など見られなかった。
「これが天下五剣とかいうやつか?ここはこれはなぜか研究しているというわけか……だが、こんな刀一つであんな奴を倒せるようには思えないぞ。せめてなんか銃とかあればよかったのに……」
辺りを見回してもそんなものはなく、やはり武器といえばこの刀だけであった。改めてその事実を確認した謙也は落胆してしまう。
「だけどないよりはマシか……」
もしかしたらちょっと相手を怯ませることぐらいはできるかもしれない。そう考え、謙也はその刀に近づいた。
だが謙也はその刀を取ることができなかった。重たくて持てなかったとかそういう理由ではなかった。刀が避けたのだ。謙也が刀に触れようとした瞬間、宙に浮いたのだ。
「は?」
謙也は理解できなかった。予想外のことが起きて謙也は間抜けな声が漏れてしまう。
そしてその宙に浮いた刀は一直線に謙也の胸に突き刺さるようために向かっていった。
「がっ!はっ…」
肺に残っていた酸素がすべて吐き出される。
いや、酸素だけではない。背中がお湯で濡れたときのように暖かい。謙也の血液である。それが大量に流れているのだ。
―――死
それだけが謙也の頭に浮かんだ。痛みに気を取られている暇なんかなかった。ゆったりと自分が死んでいくことだけが感じ取られた。
(……なんで、俺が……こんな目に?)
その疑問が突如湧いて起こってきた。どうして自分がこんな理不尽な目に合わなければいけないのかという怒りが湧いてきた。
(死にたくない……)
まだまだやりたい事がある。死にたくない。その思いが次に頭を支配する。
だが、体は動かず。次第に冷たくなっていく。いやでも死がもう間近に迫っていることを突きつけられる。
「あらあらあらあら……大変なことになっているねぇ~大丈夫?」
どこからか声が聞こえる。その声は心配するようなことを言っているが、その感情には一切謙也を心配しているようには思えなかった。
(た、助けて…助けてくれ……)
だがそんなことを謙也は気にする余裕はない。今重要なのは死にかけているところに人がいるということだ。
謙也はその人物の方向へと手を伸ばす。助けてくれと救いの手を求める。
するとその人物の顔がうっすらと見えてきた。
だが、細かく観察する暇はない。ただ理解できたのはその人物はニヤニヤと下品に笑っていたことであった。
その人物は謙也の手を取らなかった。手に取ったのは謙也に刺さっている刀だ。
そしてその刀をさらに深く謙也に突き刺したのだ。
「がっ!!……っは」
謙也は意識していなかった痛みを強制的に意識させられる。
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