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目覚め その2
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「目が覚めたかい?謙也君。そろそろ起きてくれないと僕暇なんだけどな~」
「!」
謙也は慌てて起き始める。意識を失ってから時間もあまり経っていない。だが、そこに怪しい人間がいたことが反射的にそうさせたのだ。
「き、傷は!俺はどう……どうなったんだ!」
謙也は慌てながら自分の体を触って、確認する。だが、そこにはあるべき。なければおかしい傷がなかった。
(そもそもなんで俺は痛みもなく、普通に起き上がってるんだ?俺はさっき、致命傷を追ったはずなのに……)
「そろそろこっちを見て欲しいな~」
その声を聞いてようやく、謙也はその声の方へと視線を向ける。
そこにはなんとも怪しい男がいた。全身黒いタイツのような格好で顔は白い化粧で包まれ、まるで道化のような格好だ。
そしてこの男は俺に突き刺さった剣をさらに深く突き刺した張本人だと謙也は理解した。
「テメェ……」
謙也は睨みつける。ひどい目にあったのだ、それは仕方ないかもしれない。
「おや~。そんな怖い目で睨んでどうしたの?あれ、もしかして僕暴力振るわれる?あら~怖い~。今この場には僕と君だけだから助けも来ないからどうしよ~」
くるくると回りおちゃらけた様な口調で道化は困った様な言葉を述べる。
「……何をふざけている。さっき俺に剣を突き刺しておいて、よくそんなことを言えるな」
謙也は睨みながら、その道化に吐き捨てる。
だが、道化はそれに傷ついた様子もなく、ニヤニヤとしているだけであった。
「それで?その剣は一体どこにいったんだい?」
「!」
そこではっと謙也辺りを見回す。
(ない……剣がない。一体どこに?)
細かく周辺を見渡すが、やはり剣はなかった。あれほどの大きさが無くなるなんてことは考えずらかった。
(この道化が隠したのか?)
そう考えた方が納得いくと謙也は思った。
「僕は隠していないぜ?」
だがその考えを道化は読んだのか、謙也にそう告げる。
そのおかげで余計に謙也は困惑する。それじゃあどこにあるかもう謙也にはわからなかった。
「君が持っているんだよ。謙也くん?」
「俺が?」
「そう。君が持っているのさ。君は認められたのだ。やっぱり僕の目に狂いはなかった」
「?」
理解できなかった。謙也が探している剣を持っていると言われても、謙也の右手にはそのようなものは握られていなかった。自分が持っていると言われても、理解できるはずがなかった。
「まだ理解できてないか~。それじゃあ無理やりそれを理解させてあげよう。僕は優しいからね!」
道化の手が。右手が光り輝く。そこには凄まじいエネルギーが集約されているように思えた。道化はその集約されたエネルギーをまるで野球のピッチャーのように投げる。
そのエネルギーの塊は、謙也が入ってきた扉にぶつかり、凄まじい爆発音が周辺に轟く。
「うっ!」
爆発音とともに、襲いかかる爆風に謙也は思わず防御の姿勢をとる。
「おいおい。そんなふうに縮こまってたらあいつに喰われっちまうぜ?」
「あ、あいつ?」
道化は自分の視線の先を指差す。その方向を謙也も目を向ける。
そこには先ほど謙也の左手を奪ったクライガーがそこにいた。
「なっ!」
クライガーは謙也を今にも襲い掛かりそうなほど殺気立っていた。そして今この場は広いが、入り口は一つ。クライガーがいる方向のみ。とても逃げ切れるとは思えなかった。
「おい!道化。さっきの攻撃をもう一度アイツに!」
謙也は道化に助けを求めようとする。生き残るためには怪しいが、道化に頼る以外はないと考えてだ。
だが、そこに、道化はいなかった。その姿が消えていた。
(いない?)
「ここだよ~」
道化は天井にいた。天井にまるでコウモリのように佇んでいた。重力を考えるとそれはありえないと思えたが、現実として道化はそこにいた。
「ほらほら。俺のほうを見てていいのか?本当に喰われるぞ?」
「!」
そう言われ、謙也は再びクライガーの方へと視線を戻した。そこには口を広げ、謙也を喰らうがために飛びかかるクライガーがいた。
(や、やばい……)
「はぁ。全く」
呆れたように道化はため息をつきながら、右手をはらう。
「うおお!」
その動きと連動するように謙也の身体が横へずれる。
しかしその予想外の力が働いたがため、うまいこと体制を保てず謙也は転げてしまう。
「早く立ち上がりな。そして戦え。死にたくないなら戦え。僕が手伝うだけだ。決して君を直接助けるつもりはない。君がさらに手を失おうがね?」
道化は無慈悲にそう謙也に告げる。その言葉が本気であることは、謙也にもわかった。
(……覚悟を決めるしかない!)
謙也はそう腹をくくる。
正直な話、恐怖心はあった。当然だ。目の前にいるのは謙也の左手を奪った猛獣。そして謙也は高校生レベルの身体能力しかない。今にも漏らしてしまいそうだ。泣いて怯えて、助けてくれと叫びたい気分だった。
だが、助けてくれる人間はいない。道化はニヤニヤしているだけだ。
不思議なことに逃げ道を完全防がれたことで、謙也は覚悟を決めることができた。窮鼠猫を嚙む。その言葉が今謙也にはぴったりなのかもしれない。
「一つ。教えてあげるよ。右手をかざすんだ。あの獣が襲い掛かった時にね」
「はぁ?そんなことで……」
そんなことで止まるわけがない。謙也は反論したくなる。だが、どうやら道化に注意している暇はないようだ。
「グオオオオオオオオオオオ」
クライガーは謙也に飛びかかり、大きな右手で襲いかかる。確実に謙也を仕留めるべく。
「くっ!」
謙也は大きく右に飛び、攻撃をかわす。
謙也がいた先の壁はクライガーの攻撃力に耐えきれず、車が衝突したようにグシャリと壊れていた。
それに一瞬謙也は冷や汗をかくが、再び意識を集中する。
謙也は左右を見渡した。すると己が今いる場所がまずいことが理解した。
謙也の左右は機械などが置かれてあまりスペースがない。こんな場所では、横にそれて逃れるということが難しい。左手だけ失うなど以上に恐ろしい被害を被ることになる。
(早くここから出ないと!)
謙也はすぐに行動に移す。だが……
「逃げる必要はないぜ!」
ドンっと謙也の体が重くなる。まるで両足に何か重りをつけられたかのような感覚に襲われる。
(足が動かない……)
全力で力を入れるが、とても動ける気配がしない。これではとてもこの場を離れることができない。
そしてそうこうしているうちに、クライガーは再び謙也に同じように襲いかかる。逃げ切れる状況ではない。
そんな状況であるにも関わらず、道化はニヤニヤとしている。この状況が自分にとって好ましいと思っているようだった。
「手は動くだろ?なら手を使いな。足が使えないなら手を使うんだ。さっき教えてやっただろ?右手を使うんだ」
(……ふざけやがって!)
怒りがこみ上げてきたが、謙也はそれを内心に留めておいた。いま叫んでも仕方がないからだ。
クライガーはもう目の前、仮に横が空いていたとしても、もう遅い。できるのは右手を構えることのみ。
「うああああああああああああああ」
藁にもすがる思いで謙也は右手を突き出した。もうこれしかなかった。
轟!
窓一つない部屋で、台風が起きているわけでもないこの天候で、凄まじい風が謙也の周りに発生した。謙也を守るように、盾となって。
「グオオオオオオオオオオオ」
クライガーは吠える。だが、それは謙也を襲いかかる際の闘志から出たものではない。その風の盾に激突したことが原因だ。
風に激突したクライガーの腕が、体が、風が鋭利な刃物となって切り刻み。小さな、だが、多数の傷をつけているのだ。特に謙也に襲いかかった右手は特に切り刻まれていた。その成果後ろにのけぞった後、その手からは大量の血が流れていた。
「これは……」
驚きを隠せなかった。一体何が起こったのか理解できなかったのだ。
「魔法だ。風の魔法。それも強力なね」
「魔法だと?」
「そう魔法だ。この世界には魔法があるのだ。そして君はその才能がある!君はさっき剣を突き刺されたことで、力を得た!強力な力が!右手に剣を持っているように意識してみな?」
謙也はその言葉に無意識に従う。それがこの場合最善だと無意識に理解していたのだ。
謙也の周りを覆っていた風が右手に集まる。
「うっ!」
集まった風のエネルギーが凄まじく。思わず体がよろけそうになる。だが、それをなんとか踏ん張る。
そして右手に現れる。それは先ほど謙也を突き刺した刀だった。
―――天下五剣の一つ、童子切安綱。
風を司る刀である。
「それで倒せるだろう?」
道化は相も変わらず天井にぶら下がりながら、楽しそうに謙也に告げた。
「!」
謙也は慌てて起き始める。意識を失ってから時間もあまり経っていない。だが、そこに怪しい人間がいたことが反射的にそうさせたのだ。
「き、傷は!俺はどう……どうなったんだ!」
謙也は慌てながら自分の体を触って、確認する。だが、そこにはあるべき。なければおかしい傷がなかった。
(そもそもなんで俺は痛みもなく、普通に起き上がってるんだ?俺はさっき、致命傷を追ったはずなのに……)
「そろそろこっちを見て欲しいな~」
その声を聞いてようやく、謙也はその声の方へと視線を向ける。
そこにはなんとも怪しい男がいた。全身黒いタイツのような格好で顔は白い化粧で包まれ、まるで道化のような格好だ。
そしてこの男は俺に突き刺さった剣をさらに深く突き刺した張本人だと謙也は理解した。
「テメェ……」
謙也は睨みつける。ひどい目にあったのだ、それは仕方ないかもしれない。
「おや~。そんな怖い目で睨んでどうしたの?あれ、もしかして僕暴力振るわれる?あら~怖い~。今この場には僕と君だけだから助けも来ないからどうしよ~」
くるくると回りおちゃらけた様な口調で道化は困った様な言葉を述べる。
「……何をふざけている。さっき俺に剣を突き刺しておいて、よくそんなことを言えるな」
謙也は睨みながら、その道化に吐き捨てる。
だが、道化はそれに傷ついた様子もなく、ニヤニヤとしているだけであった。
「それで?その剣は一体どこにいったんだい?」
「!」
そこではっと謙也辺りを見回す。
(ない……剣がない。一体どこに?)
細かく周辺を見渡すが、やはり剣はなかった。あれほどの大きさが無くなるなんてことは考えずらかった。
(この道化が隠したのか?)
そう考えた方が納得いくと謙也は思った。
「僕は隠していないぜ?」
だがその考えを道化は読んだのか、謙也にそう告げる。
そのおかげで余計に謙也は困惑する。それじゃあどこにあるかもう謙也にはわからなかった。
「君が持っているんだよ。謙也くん?」
「俺が?」
「そう。君が持っているのさ。君は認められたのだ。やっぱり僕の目に狂いはなかった」
「?」
理解できなかった。謙也が探している剣を持っていると言われても、謙也の右手にはそのようなものは握られていなかった。自分が持っていると言われても、理解できるはずがなかった。
「まだ理解できてないか~。それじゃあ無理やりそれを理解させてあげよう。僕は優しいからね!」
道化の手が。右手が光り輝く。そこには凄まじいエネルギーが集約されているように思えた。道化はその集約されたエネルギーをまるで野球のピッチャーのように投げる。
そのエネルギーの塊は、謙也が入ってきた扉にぶつかり、凄まじい爆発音が周辺に轟く。
「うっ!」
爆発音とともに、襲いかかる爆風に謙也は思わず防御の姿勢をとる。
「おいおい。そんなふうに縮こまってたらあいつに喰われっちまうぜ?」
「あ、あいつ?」
道化は自分の視線の先を指差す。その方向を謙也も目を向ける。
そこには先ほど謙也の左手を奪ったクライガーがそこにいた。
「なっ!」
クライガーは謙也を今にも襲い掛かりそうなほど殺気立っていた。そして今この場は広いが、入り口は一つ。クライガーがいる方向のみ。とても逃げ切れるとは思えなかった。
「おい!道化。さっきの攻撃をもう一度アイツに!」
謙也は道化に助けを求めようとする。生き残るためには怪しいが、道化に頼る以外はないと考えてだ。
だが、そこに、道化はいなかった。その姿が消えていた。
(いない?)
「ここだよ~」
道化は天井にいた。天井にまるでコウモリのように佇んでいた。重力を考えるとそれはありえないと思えたが、現実として道化はそこにいた。
「ほらほら。俺のほうを見てていいのか?本当に喰われるぞ?」
「!」
そう言われ、謙也は再びクライガーの方へと視線を戻した。そこには口を広げ、謙也を喰らうがために飛びかかるクライガーがいた。
(や、やばい……)
「はぁ。全く」
呆れたように道化はため息をつきながら、右手をはらう。
「うおお!」
その動きと連動するように謙也の身体が横へずれる。
しかしその予想外の力が働いたがため、うまいこと体制を保てず謙也は転げてしまう。
「早く立ち上がりな。そして戦え。死にたくないなら戦え。僕が手伝うだけだ。決して君を直接助けるつもりはない。君がさらに手を失おうがね?」
道化は無慈悲にそう謙也に告げる。その言葉が本気であることは、謙也にもわかった。
(……覚悟を決めるしかない!)
謙也はそう腹をくくる。
正直な話、恐怖心はあった。当然だ。目の前にいるのは謙也の左手を奪った猛獣。そして謙也は高校生レベルの身体能力しかない。今にも漏らしてしまいそうだ。泣いて怯えて、助けてくれと叫びたい気分だった。
だが、助けてくれる人間はいない。道化はニヤニヤしているだけだ。
不思議なことに逃げ道を完全防がれたことで、謙也は覚悟を決めることができた。窮鼠猫を嚙む。その言葉が今謙也にはぴったりなのかもしれない。
「一つ。教えてあげるよ。右手をかざすんだ。あの獣が襲い掛かった時にね」
「はぁ?そんなことで……」
そんなことで止まるわけがない。謙也は反論したくなる。だが、どうやら道化に注意している暇はないようだ。
「グオオオオオオオオオオオ」
クライガーは謙也に飛びかかり、大きな右手で襲いかかる。確実に謙也を仕留めるべく。
「くっ!」
謙也は大きく右に飛び、攻撃をかわす。
謙也がいた先の壁はクライガーの攻撃力に耐えきれず、車が衝突したようにグシャリと壊れていた。
それに一瞬謙也は冷や汗をかくが、再び意識を集中する。
謙也は左右を見渡した。すると己が今いる場所がまずいことが理解した。
謙也の左右は機械などが置かれてあまりスペースがない。こんな場所では、横にそれて逃れるということが難しい。左手だけ失うなど以上に恐ろしい被害を被ることになる。
(早くここから出ないと!)
謙也はすぐに行動に移す。だが……
「逃げる必要はないぜ!」
ドンっと謙也の体が重くなる。まるで両足に何か重りをつけられたかのような感覚に襲われる。
(足が動かない……)
全力で力を入れるが、とても動ける気配がしない。これではとてもこの場を離れることができない。
そしてそうこうしているうちに、クライガーは再び謙也に同じように襲いかかる。逃げ切れる状況ではない。
そんな状況であるにも関わらず、道化はニヤニヤとしている。この状況が自分にとって好ましいと思っているようだった。
「手は動くだろ?なら手を使いな。足が使えないなら手を使うんだ。さっき教えてやっただろ?右手を使うんだ」
(……ふざけやがって!)
怒りがこみ上げてきたが、謙也はそれを内心に留めておいた。いま叫んでも仕方がないからだ。
クライガーはもう目の前、仮に横が空いていたとしても、もう遅い。できるのは右手を構えることのみ。
「うああああああああああああああ」
藁にもすがる思いで謙也は右手を突き出した。もうこれしかなかった。
轟!
窓一つない部屋で、台風が起きているわけでもないこの天候で、凄まじい風が謙也の周りに発生した。謙也を守るように、盾となって。
「グオオオオオオオオオオオ」
クライガーは吠える。だが、それは謙也を襲いかかる際の闘志から出たものではない。その風の盾に激突したことが原因だ。
風に激突したクライガーの腕が、体が、風が鋭利な刃物となって切り刻み。小さな、だが、多数の傷をつけているのだ。特に謙也に襲いかかった右手は特に切り刻まれていた。その成果後ろにのけぞった後、その手からは大量の血が流れていた。
「これは……」
驚きを隠せなかった。一体何が起こったのか理解できなかったのだ。
「魔法だ。風の魔法。それも強力なね」
「魔法だと?」
「そう魔法だ。この世界には魔法があるのだ。そして君はその才能がある!君はさっき剣を突き刺されたことで、力を得た!強力な力が!右手に剣を持っているように意識してみな?」
謙也はその言葉に無意識に従う。それがこの場合最善だと無意識に理解していたのだ。
謙也の周りを覆っていた風が右手に集まる。
「うっ!」
集まった風のエネルギーが凄まじく。思わず体がよろけそうになる。だが、それをなんとか踏ん張る。
そして右手に現れる。それは先ほど謙也を突き刺した刀だった。
―――天下五剣の一つ、童子切安綱。
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「それで倒せるだろう?」
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