異世界召喚されたオジサン、根暗イケメン第一王子と子作りするってよ

由井実緒

文字の大きさ
11 / 15

10. 何言ってんの!?

しおりを挟む


「ワハハ! 中々イケるクチじゃあないか!」
「そう言うアリエス様こそ。おや、杯が空いてますなぁ」
「ああどうも……ハハ! こぼれるこぼれる! 容赦がないなぁ、ユウマは」

 けたけたと大声を上げつつ、アリエスは薄桃色に染まったなまめかしい喉元を逸らし、注がれた赤葡萄酒を煽る。

 食事会とその後の遊覧を終えた夜。アリエスの寝所としてあつらえた豪奢な居室の中、俺とシュルツは彼に呼び付けられ三人での酒盛りに興じていた。

 もっとも盛り上がってるのは俺とアリエスのみで、シュルツは部屋の隅にて水割りの酒をちみちみと飲みながらこちらの様子をつぶさに観察している。まあ彼の性格上、こういったバカ騒ぎは好まないだろうと一人アリエスの相手をすること早一時間。

「やはりヴァリエの酒は格別だなぁ」
「ですねぇ。中でもこれは、アリエス様の生まれ年に作られた一級品だそうで」

 つまり決して、こんな風にガバガバ飲んで良い代物ではない。そう分かっていながらも、思わず杯が進んでしまう。美味い。何より飲みやすかった。
 酒はそこそこに強い自信がある。その上で、この世界の酒全般はどうやら見た目よりもずっと度数が低いらしい。

「いやぁユウマは本当に酒が強い! 異世界の客人はみな酒豪と聞いていたが、周りの者もそうだったのか?」
「ええ、俺より強い人ばかりでしたよ」

 まあ俺や周りが強いというより、この世界の人間がアルコールに弱いという方が正しいのだろうが。目の前の例外を除いて。

「ハハ! それじゃあ、異世界にはいくつ酒樽があっても足りないな!」

 アリエスは頬を桜色に染め、ひどく上機嫌な様子だ。艶やかな白銀の髪はゆらゆらと体の動きに合わせて揺れ、宝石のような緑の瞳はとろりと蕩けている。

 大分酔いも回ってきたことだろう。ここに至るまでに飲み干された、ずらりと居並ぶ空き瓶の壮観さを横目に口をひらく。

「アリエス様。実はこのたび折り入って、お願いしたいことが……」
「んんー? 酒宴の席でのねだりとはまぁ、さかしいことで。いいよ、聞こうじゃないか」
「シュルツ様がどうしたら俺のことを抱いてくれるか今一度、経験豊富なアリエス様のご高説をたまわりたく」

 部屋の隅でシュルツが酒を噴き出す。まあ無理もないだろう。

「ユ、ユウマ。いきなり何を」
「うーん、そこに本人も居ることだし直接聞いたら?」
「以前聞いたのですが……自分達にはまだ早いとだけ言われ、今日でちょうど二週間になります」
「なんだ洒落臭い。フラミス叔父上の媚薬でも盛るなりしてさっさと押し倒してしまえ」

 おおむね俺と似た意見だな。そう思う間もなくシュルツに羽交締めされ、大きな手で口を塞がれる。

「今のは忘れてくれ、アリエス」
「ユウマに手を付ける気がないなら、いっそ俺が攫ってしまおうか」

 なんて事言うんだこの酔いどれ国王。俺を抱きしめるシュルツの腕にも、力がこもる。

「お前が言うと洒落にならない」
「洒落じゃないと言ったら?」
「…………」
「隣がいつまでもお家騒動してちゃこっちも困るんだよ。さっさと既成事実作って身を固めることだ。異世界の邦人を伴侶とし、お前が王となれ。シュルツ」

 それは、後々俺が切り出そうとしていた本題だった。

 暗にシュルツが王位に乗り気でないと仄めかし、自身もまたそうであるとアリエスに伝え、協力をあおぐ算段。しかしこの流れは、いささか不味い気もする。

「……! ……!」
「こらユウマ、暴れない。今大事な話をしてるんだから」
「私は王にはならない」
「は?」
「アリエス、お前にはきちんと話をしておくべきだった。私は引き続き政務に携わるが、王位はエクスに譲る」

 シュルツの予想外の言葉に、俺もアリエスも目を丸くする。

 まさか馬鹿正直に、他国の王を前にそれを公言するとは思いもしなかった。
 今この状況で、その言葉が容易に受け入れられる訳がないとシュルツも分かっている筈。しかし、それでも彼の目は本気だった。

 俺が、王にならないという彼の言葉を受け入れた時のよう。心を込めて真実を打ち明ければ、きっとアリエスも分かってくれると。そう思っているのだろうか。

 アリエスはしばし無言だったが、やがて手に持った杯をぐいと煽った後。その桜色の唇を開く。

「そのワガママを通すだけの算段は?」
「お前の協力があれば、あるいは」
「俺にメリットがないね」
「今は、そうだな。だからこれは空手形になるが……」

 シュルツは俺の口を解放し、代わりにその手を下に滑らせ、平らな腹に触れる。

「将来、ユウマとの間に子が出来たらゼルフィに嫁がせる。その時私が王でない方が、お前にとっても都合が良いだろう」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。 「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」 ――新王から事実上の追放を受けたガイ。 副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。 ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。 その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。 兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。 エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに―― 筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。 ※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

オメガなのにムキムキに成長したんだが?

未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。 なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。 お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。 発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。 ※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。 同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。

処理中です...