異世界召喚されたオジサン、根暗イケメン第一王子と子作りするってよ

由井実緒

文字の大きさ
12 / 23

11. めっちゃ傷ついた

しおりを挟む


 ヴァリエ王国とゼルフィ王国の親交は深い。特に前王時代のそれは蜜月といっても過言でなく、両家の長子の婚姻により、連合王国を築こうという話が出ていたほどだ。

 だが結局その話は頓挫し、アリエスは国内から二度夫を迎えて子を成し、シュルツは異世界召喚により俺を呼び出し、今に至る。

「ユウマ……私が悪かった」

 頼むから出てきてくれと。弱り果てたシュルツの声が、被ったシーツ越しに聞こえてくる。

 あの後アリエスは満更でも無さそうな顔で、しかし一旦シュルツの話は保留にさせてもらうと、翌朝ゼルフィに帰っていった。

 異世界人の血には価値がある。稀有な「天」の属性を持つ他、魔物を倒す為の優れた資質を秘めているからだ。

 その血を家に取り込もうと目論む勢力は数知れず、ゆえにヴァリエ王国では異世界人との子が生まれた場合、その子を自国の人間と番わせる。例外でゼルフィへの輿入れもあったそうだが、ごく少例だ。

「国王の子は、跡継ぎや万が一の備えで他国には嫁がせづらい。異世界人の血を取り入れるなら、シュルツ様が一王族である方がアリエス様にとっても都合が良い」
「…………」
「合理的な提案だと思います。アリエス様もきっと、前向きに考えられることでしょう」
「……お前に何の相談もなく、勝手に動いて悪かった」

 全くもってその通りだ。

 自分や、生まれてもいない子供を交渉材料にしたことはまだ良い。

 シュルツは王族で、ゆえに彼自身の身は彼だけのものでなく、国のものだ。そうしてシュルツの伴侶となる時点で俺もまた同じ立場になる。そのことも理解はしていた。

 理解は、していたつもりだが。納得できているかというと話は別だ。結論は変わらなくても良い。せめて一言、シュルツの口から自分に話をして欲しかった。

 胸中に湧き上がる怒りと悲しみを、うまく処理できないままシーツを深く被る。そばで何かが身動ぐ音がした後、俺の肩に布越しから大きな手が触れる。

「なんの弁明にも、ならないかもしれないが」

 低く心地良い、シュルツの声がする。

「アリエスがお前を攫うと口にした時、ひどく気が動転したんだ。あの男なら本当にやりかねない。それに、ユウマも私を見限ってアリエスの元に行ってしまうかもと」
「……シュルツ様を置いて行く訳ないじゃないですか」
「そうだな、疑った私が悪かった。だがあの時の私は、アリエスにユウマを取られたくない一心で、気持ちだけが先走っていたんだ。子供を嫁がせるから、ユウマは私の元に留めて欲しいと。そう言えばアリエスは聞き分けると知っていた。彼は異世界の力に興味と野心を抱いているが、ユウマ本人にはさして執着をしていなかったから」
「良かったですねー……俺がシュルツ様みたいに若くも、カッコよくも、背が高くもなくて」
「そうむくれるな、ユウマは今のままが一番魅力的だ」

 我ながら現金なもので。こちらを口説くシュルツの言葉に、沈んでいた心が瞬く間に浮き上がっていくのを感じた。惚れた弱みとはまさにこのことだ。

「……俺に、出てきて欲しいですか?」
「ああ、お前のかわいい顔を見せておくれ」
「タダじゃ出てきませんよ。今回は俺も、本当に傷ついたので」

 口にして、改めて自分の本音を自覚する。
 聞き分けたようでいて、やはり嫌だったのだ。仕方ないこととはいえ、シュルツの口から俺や俺たちの子供を、まるでモノのように扱う言葉が出たことが。

「本当にすまなかった。私に出来る償いがあれば、何でもする」
「じゃあしましょう。セックス」
「っ、それは」
「何でもするって言いましたよね」

 俺の言葉に、シュルツはしばし沈黙を続ける。十数秒の後、自身の肩に置かれていた男の手が、すっと外れる感触を覚えた。

「…………準備がいる。少しの間待ってくれたら、お前の望みに応えよう」

 こころよいとは到底言えないシュルツの、だが確かに待ち望んでいた言葉にシーツを跳ね除けとび起きる。
 
 そんな俺の様子を見てシュルツはぎこちなく、しかしどこかホッとしたような表情を、その美しく精悍な顔に浮かべた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。 「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」 ――新王から事実上の追放を受けたガイ。 副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。 ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。 その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。 兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。 エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに―― 筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。 ※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

処理中です...