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昔語り
エピソード28 その2
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★☆やっとボーイとガールがミーツします!☆★
人が三人集まれば序列が生まれる、よろしく米粒ほどの小さな集落にも族長が存在し優劣がつけられていた。
バルベリト一族は、大陸中に住まう人の中で一番優秀だと崇められていた一族だった。
一族の祖先の大魔術師が瘴気の涌き出る渓谷を発見し、そこの噴出する瘴気を抑える魔術を考案したからに他ならない。
濃く重い瘴気の蔓延する渓谷まで行ける人間は、大陸の中でバルベリト一族の者しかおらず、瘴気を抑える魔術を使えるのも同様だった。
故に、一族の中から一番魔力の多い者がその渓谷へと赴き、自身の魔力をそこに注いで、謂わば魔力で蓋をするような状況にすることで瘴気を抑える、人身御供となることが決められていた。
そして、何代目かの人身御供が、ケイトであった。
ケイトはバルベリト家の族長の直系で、生まれた時からその魔力量の多さから次代の魔力の蓋ひとばしらとして目されていた。
両親、特に母親は折角生んだ息子の将来を思って泣き崩れ、不憫に思って甘やかし、父親は自分の血を分けた息子が大陸を救う勇者だと吹聴して、自分と一族の地位を押し上げることをほくそ笑んで、ケイトのしたいように我が儘を許した。
本来はバルベリト家の者として、早くから教育を受けなければならないのだが、勉強を嫌がるケイトには何もさせなかった。
だから魔力は多いが魔法は使えない、一族には都合の良い存在、それがケイトであった。
そんなことにも気がつかず、甘やかされ我が儘いっぱい自由に育った彼は、前任の翁が老衰で亡くなりそうと言う知らせの後、拘束されて転移魔法で強制的に瘴気の渓谷の脇に建つ神殿へと送られてしまったのだった。
バルベリト家に生まれた者は男女問わず、生まれた時に背中に転移の印を刻まれる習わしで、それは魔力の多い者を無理矢理にでも人身御供にしなければならない苦肉の策であった。
初めの者はその責務を重んじて唯唯諾諾と従ったが、それ以外の者は当然嫌がって暴れたり出奔したり、争いになったりした。
その間に前任者が亡くなってしまうと、魔力の蓋が外れて押さえ付けられていた瘴気が反って多く噴き出し、人類滅亡まっしぐらだったことから、強制的に交代させられるようにと、大陸中の賢者が集まって転移と結界魔法を付与した神殿を築き、バルベリト家はその転移の印を刻むことを決めた。
そして、その蓋・の命が尽きる半刻前には一族の長に知らせが届き、次の蓋・と入れ換えることが可能となったのだった。
さて、散々甘やかされていたケイトは、14の年に渓谷送りにされ、結界の施された神殿の中で勝手に魔力を引き出される蓋・とされた。
そんなことが自分の身に起こるだなんて考えても居なかったケイトは怒り、悲しみ、呪った。
自分のこれからの人生が、ここで命尽きるまで魔力を吸い取られるだけなんて!
そう絶望していたが、それは何もケイトに限ったことでは無くて、彼の前任者もその前もその前も、なんならこんな魔術を思い付いた初代であっても、後悔と憎しみを募らせていることを後に知ることになった。
大陸中の魔術者が憐憫を込めて造ったであろう神殿には、数多くの蓋・が死なない魔法がかけられていて、食事も風呂も排泄も、快適に過ごせる空間が拡がっていた。
ただ、そこに生活するのは自分一人。
孤独に苛まれて、自分の身を憐れに嘆いて、狂う者も多かった。
狂うのは良いが、死なれては困ると、自死を禁ずる魔法もかけれていたので、蓋・とされた者は他者を召喚して殺してもらおうと考えるのだった。
ご多分に漏れず、ケイトも同様に考えて、召喚魔法を構築し続けた。
何せ時間はたっぷりとあるし、過去の者たちが残した日記やら魔術書やらが数多残されていたので、始めは魔方陣すら書けなかったのに天賦の才に寄るものか、メキメキと上達していった。
魔法以外にすることは無いし、誰彼に咎められることも無い孤独の中、ケイトの日常は魔法を考えることに終始した。
早くこの緩い地獄から解放されたい、その為に自分を殺してくれる者を呼び寄せたい、孤独の中、ケイトも狂っていたのだろう。
ある日、ケイトは閃いた。
完璧な魔方陣なのに、何も召喚出来ないのは、瘴気を防ぐ魔力の蓋として多くの魔力を吸い取られているからだ。
召喚に必要な魔力をなんとか補わなければ、この魔法が成功することはない、自分を殺してくれる者を呼び寄せることが出来ないのだ、と。
だから、かつての蓋たちも魔術が発動しなかったのだが、魔力なら溢れるほど沸いてきている、この瘴気こそ魔力その物ではないか!
その逆転の発想を元に、ケイトは召喚魔法を再構築していった。
そして、ケイトが蓋・として神殿送りにされて10年を経て、完璧な召喚魔法を完成させたのだった。
今や魔法が出来ないケイトでは無い、神殿にかけられていた結界から勢い勇んで飛び出していった。
この世にケイト以上に魔力が多く魔法の使える魔術師は居ない、弱い者の結界破りなぞ造作もない。
その身が瘴気によって焼け爛れるのも厭わず、瘴気の渓谷に大魔方陣を展開した。
底から噴き出す濃く強い瘴気、それを魔力として利用して、ケイトは願い自身の魔力を注入した。
(ダレカ、ダレカ、アイニキテ)
身が裂け骨が砕かれ、魂が引きちぎられるような瘴気の濁流に揉まれて、意識を失う寸前、細く白い手が伸ばされているのを見つけ、必死で手を伸ばし掴み取り、ぐぐっと引き寄せた。
瘴気の濁流の中から引っ張り出したその塊を連れて、意識を神殿の内部へと戻して、残った魔力を全て使って転移魔法を使い、意識を手放したのだった。
「ねえ、ねえ大丈夫?」
ひんやりとした感触に意識を浮上させられて、ほうと深い息を吐いた。
ゆっくりと目を開ければ、ケイトの頬に冷たい手を当て、顔を覗き込んでいる見知らぬ少女がいた。
「あ、うちのことわかる?声聞こえる?ねえ、痛い?」
少女がまた聞いてきたのに、答えようと言葉を出そうとしても、ヒューヒューと息が抜けるだけ。
「あ、まだ治って無いみたい。あなた誰?ここはどこ?って聞いてもまだ答えられないか。ここ天国なのかな?あなた、ドロドロに肉が熔けて骸骨みたく骨が見えていたのに、だんだん元に戻っていくんだもん。ビックリした。あ、喉も元通り、身体も。服も戻ってる、なにこれ!」
覗き込んでいた少女が実況してくれた通り、自身の姿が元に戻ったようだった。
手をグーパーと試して、身を起こす。
着ているのは、いつものまっ白い衣服。
顔を上げて、目の前にいる少女をもう一度見た。
肩にかかる黒い髪に黒い瞳の少女。
彼女も白いゆったりとした服を着ていた。
彼女の目を黙って見つめていると、
「ねえ、あなた誰?ここはどこ?」
先程と同じ質問をされた。
「俺はケイト。ここは瘴気の渓谷にある神殿」
「ねえ、さっきここに飛ばされて来た時、骸骨みたいになってたのに、今は人の姿になっているのはなんで?神様なの?天使それとも悪魔?」
「外の瘴気に触れると焼け爛れて普通は死ぬんだ。だけど俺はこの神殿に心身を縛られているから自ら死ぬことは出来ない。神殿の治癒術によって治療されて元に戻された、ただの人だ」
少女にそう答えると、彼女はへえ~っと身を引いて驚きの声を上げ、
「わ、これ、異世界転生ってやつじゃない?マジかー!」
と、喜色を含んだ声を上げたのだった。
人が三人集まれば序列が生まれる、よろしく米粒ほどの小さな集落にも族長が存在し優劣がつけられていた。
バルベリト一族は、大陸中に住まう人の中で一番優秀だと崇められていた一族だった。
一族の祖先の大魔術師が瘴気の涌き出る渓谷を発見し、そこの噴出する瘴気を抑える魔術を考案したからに他ならない。
濃く重い瘴気の蔓延する渓谷まで行ける人間は、大陸の中でバルベリト一族の者しかおらず、瘴気を抑える魔術を使えるのも同様だった。
故に、一族の中から一番魔力の多い者がその渓谷へと赴き、自身の魔力をそこに注いで、謂わば魔力で蓋をするような状況にすることで瘴気を抑える、人身御供となることが決められていた。
そして、何代目かの人身御供が、ケイトであった。
ケイトはバルベリト家の族長の直系で、生まれた時からその魔力量の多さから次代の魔力の蓋ひとばしらとして目されていた。
両親、特に母親は折角生んだ息子の将来を思って泣き崩れ、不憫に思って甘やかし、父親は自分の血を分けた息子が大陸を救う勇者だと吹聴して、自分と一族の地位を押し上げることをほくそ笑んで、ケイトのしたいように我が儘を許した。
本来はバルベリト家の者として、早くから教育を受けなければならないのだが、勉強を嫌がるケイトには何もさせなかった。
だから魔力は多いが魔法は使えない、一族には都合の良い存在、それがケイトであった。
そんなことにも気がつかず、甘やかされ我が儘いっぱい自由に育った彼は、前任の翁が老衰で亡くなりそうと言う知らせの後、拘束されて転移魔法で強制的に瘴気の渓谷の脇に建つ神殿へと送られてしまったのだった。
バルベリト家に生まれた者は男女問わず、生まれた時に背中に転移の印を刻まれる習わしで、それは魔力の多い者を無理矢理にでも人身御供にしなければならない苦肉の策であった。
初めの者はその責務を重んじて唯唯諾諾と従ったが、それ以外の者は当然嫌がって暴れたり出奔したり、争いになったりした。
その間に前任者が亡くなってしまうと、魔力の蓋が外れて押さえ付けられていた瘴気が反って多く噴き出し、人類滅亡まっしぐらだったことから、強制的に交代させられるようにと、大陸中の賢者が集まって転移と結界魔法を付与した神殿を築き、バルベリト家はその転移の印を刻むことを決めた。
そして、その蓋・の命が尽きる半刻前には一族の長に知らせが届き、次の蓋・と入れ換えることが可能となったのだった。
さて、散々甘やかされていたケイトは、14の年に渓谷送りにされ、結界の施された神殿の中で勝手に魔力を引き出される蓋・とされた。
そんなことが自分の身に起こるだなんて考えても居なかったケイトは怒り、悲しみ、呪った。
自分のこれからの人生が、ここで命尽きるまで魔力を吸い取られるだけなんて!
そう絶望していたが、それは何もケイトに限ったことでは無くて、彼の前任者もその前もその前も、なんならこんな魔術を思い付いた初代であっても、後悔と憎しみを募らせていることを後に知ることになった。
大陸中の魔術者が憐憫を込めて造ったであろう神殿には、数多くの蓋・が死なない魔法がかけられていて、食事も風呂も排泄も、快適に過ごせる空間が拡がっていた。
ただ、そこに生活するのは自分一人。
孤独に苛まれて、自分の身を憐れに嘆いて、狂う者も多かった。
狂うのは良いが、死なれては困ると、自死を禁ずる魔法もかけれていたので、蓋・とされた者は他者を召喚して殺してもらおうと考えるのだった。
ご多分に漏れず、ケイトも同様に考えて、召喚魔法を構築し続けた。
何せ時間はたっぷりとあるし、過去の者たちが残した日記やら魔術書やらが数多残されていたので、始めは魔方陣すら書けなかったのに天賦の才に寄るものか、メキメキと上達していった。
魔法以外にすることは無いし、誰彼に咎められることも無い孤独の中、ケイトの日常は魔法を考えることに終始した。
早くこの緩い地獄から解放されたい、その為に自分を殺してくれる者を呼び寄せたい、孤独の中、ケイトも狂っていたのだろう。
ある日、ケイトは閃いた。
完璧な魔方陣なのに、何も召喚出来ないのは、瘴気を防ぐ魔力の蓋として多くの魔力を吸い取られているからだ。
召喚に必要な魔力をなんとか補わなければ、この魔法が成功することはない、自分を殺してくれる者を呼び寄せることが出来ないのだ、と。
だから、かつての蓋たちも魔術が発動しなかったのだが、魔力なら溢れるほど沸いてきている、この瘴気こそ魔力その物ではないか!
その逆転の発想を元に、ケイトは召喚魔法を再構築していった。
そして、ケイトが蓋・として神殿送りにされて10年を経て、完璧な召喚魔法を完成させたのだった。
今や魔法が出来ないケイトでは無い、神殿にかけられていた結界から勢い勇んで飛び出していった。
この世にケイト以上に魔力が多く魔法の使える魔術師は居ない、弱い者の結界破りなぞ造作もない。
その身が瘴気によって焼け爛れるのも厭わず、瘴気の渓谷に大魔方陣を展開した。
底から噴き出す濃く強い瘴気、それを魔力として利用して、ケイトは願い自身の魔力を注入した。
(ダレカ、ダレカ、アイニキテ)
身が裂け骨が砕かれ、魂が引きちぎられるような瘴気の濁流に揉まれて、意識を失う寸前、細く白い手が伸ばされているのを見つけ、必死で手を伸ばし掴み取り、ぐぐっと引き寄せた。
瘴気の濁流の中から引っ張り出したその塊を連れて、意識を神殿の内部へと戻して、残った魔力を全て使って転移魔法を使い、意識を手放したのだった。
「ねえ、ねえ大丈夫?」
ひんやりとした感触に意識を浮上させられて、ほうと深い息を吐いた。
ゆっくりと目を開ければ、ケイトの頬に冷たい手を当て、顔を覗き込んでいる見知らぬ少女がいた。
「あ、うちのことわかる?声聞こえる?ねえ、痛い?」
少女がまた聞いてきたのに、答えようと言葉を出そうとしても、ヒューヒューと息が抜けるだけ。
「あ、まだ治って無いみたい。あなた誰?ここはどこ?って聞いてもまだ答えられないか。ここ天国なのかな?あなた、ドロドロに肉が熔けて骸骨みたく骨が見えていたのに、だんだん元に戻っていくんだもん。ビックリした。あ、喉も元通り、身体も。服も戻ってる、なにこれ!」
覗き込んでいた少女が実況してくれた通り、自身の姿が元に戻ったようだった。
手をグーパーと試して、身を起こす。
着ているのは、いつものまっ白い衣服。
顔を上げて、目の前にいる少女をもう一度見た。
肩にかかる黒い髪に黒い瞳の少女。
彼女も白いゆったりとした服を着ていた。
彼女の目を黙って見つめていると、
「ねえ、あなた誰?ここはどこ?」
先程と同じ質問をされた。
「俺はケイト。ここは瘴気の渓谷にある神殿」
「ねえ、さっきここに飛ばされて来た時、骸骨みたいになってたのに、今は人の姿になっているのはなんで?神様なの?天使それとも悪魔?」
「外の瘴気に触れると焼け爛れて普通は死ぬんだ。だけど俺はこの神殿に心身を縛られているから自ら死ぬことは出来ない。神殿の治癒術によって治療されて元に戻された、ただの人だ」
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