100 / 226
一巡目(二〇二二)
第78匙 現実世界放浪カレー:パンチマハル(D16)
しおりを挟む
火曜日の夜に書き手が訪れたのは、JRの水道橋駅、JRの御茶ノ水駅、そして、メトロの神保町駅を三角形の点にした場合に、その三角形の中ほどに位置している〈パンチマハル〉であった。
つまり、この店には、どの駅からも同じような移動距離でアクセス可能なのだが、書き手は、神保町駅から錦華通り、というルートを選択した。
この錦華通りを選んだのは、かつて〈インドカレー・カーマ〉に赴く際に使った既知の道だったので、未知の店に行く時には既知の道を使った方が迷わずに行ける、という判断からである。
書き手が神保町駅でメトロを出たのは十八時半過ぎであった。
ガイドブックや店のブログの情報によると、パンチマハルの夜営業時間帯のラスト・オーダーは二〇時、まだ充分な時間があったのだが、ガイドブックの注意事項にあった「売り切れ次第終了」の文言が、書き手に既知の道を選ばせ、さらに、その足を速めさせたのである。
店に到着した書き手が、店内に足を踏み入れてみると、その印象は、まさしく〈印度〉であった。
というのも、店内には、インドの地図だけではなく、店主がインドを放浪していた時のものと思われる写真や、おそらくヒンドゥー教のものと思われる幾つもの神像(多分、ガネーシャ)が置かれていたからである。
察するに、この店の店主は、インド放浪の経験があって、そうしたインド好きが高じて店を開いたのかもしれない。
しかし、この認識は、書き手の第一印象に過ぎなかったようだ。
ガイドブックの店紹介ページによると、店主は、「カレー屋での独立を思い立ち、美味しいカレーを求めて色々な国や地方を旅」し、「結局自分で(カレーを)編み出す事にした」と書かれていたからだ。
カレー、ないしは、究極のスパイスを求めて旅するなんて、まるで漫画やドラマ、フィクション的な行動力である。
とまれ、たしかに、店内に入った時の店の印象は、「インドぉ~」だったのだが、それは、店主のカレー放浪の一部を切り取ったものであって、おそらく、カレーを求めて巡った国や地域は、インドに限定される分けではないようだ。
ガイドブックには、この店の分類は、インドカレーとはされてはおらず、「ジャンル分け不可 唯一無二のオリジナルカレー」と書かれていたのだ。
そもそもの話、店名には、「インディアン」ではなく、「エスニック(民族的)」という文言が頭に付いている。
つまるところ、この事は、パンチマハルのカレーが、インドに限定されるものではない事を意味していよう。
さて、着座した書き手が、メニュー一覧を見たところ、チキン、キーマ、やさい、インド、ドライカレーなどが並んでいたのだが、十九時前のこの時点において既に、チキン・カレーなど、終わってしまっている品もあった。そのため、書き手は〈キーマカレー〉を選ぶ事にした。
メニューのキーマカレーには、「鶏ひき肉たっぷりのサラサラカレー」という説明が為されていた。
この「サラサラ」というワードは、他のメニューの説明書きにも入っていたのだが、この「サラサラ」こそが店のカレーの特徴なのかもしれない。
ガイドブックによると、このサラサラ感は、「玉葱を使わない」事によって生み出されているらしい。
やがてトレイに載せられ、提供されたカレー・ライスは、ワンプレート式ではなく、白米が置かれた平らな皿、赤みの強いカレーが入れられた椀という、セパレート式であった。
このカレーこそが、世界を放浪した結果、店主がたどり着いた「ジャンル分け」不可能な、「サラサラ」なオリジナルカレーなのであろう。
〈訪問データ〉
神保町エスニックカレー&ヌードル パンチマハル:神保町・水道橋
D16
十一月八日・火曜日・十八時四十五分
キーマカレー:一〇〇〇円(現金)
〈参考資料〉
「パンチマハル」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、ページ。
〈WEB〉
「パンチマハル公式ブログ」、二〇二三年二月九日閲覧。
つまり、この店には、どの駅からも同じような移動距離でアクセス可能なのだが、書き手は、神保町駅から錦華通り、というルートを選択した。
この錦華通りを選んだのは、かつて〈インドカレー・カーマ〉に赴く際に使った既知の道だったので、未知の店に行く時には既知の道を使った方が迷わずに行ける、という判断からである。
書き手が神保町駅でメトロを出たのは十八時半過ぎであった。
ガイドブックや店のブログの情報によると、パンチマハルの夜営業時間帯のラスト・オーダーは二〇時、まだ充分な時間があったのだが、ガイドブックの注意事項にあった「売り切れ次第終了」の文言が、書き手に既知の道を選ばせ、さらに、その足を速めさせたのである。
店に到着した書き手が、店内に足を踏み入れてみると、その印象は、まさしく〈印度〉であった。
というのも、店内には、インドの地図だけではなく、店主がインドを放浪していた時のものと思われる写真や、おそらくヒンドゥー教のものと思われる幾つもの神像(多分、ガネーシャ)が置かれていたからである。
察するに、この店の店主は、インド放浪の経験があって、そうしたインド好きが高じて店を開いたのかもしれない。
しかし、この認識は、書き手の第一印象に過ぎなかったようだ。
ガイドブックの店紹介ページによると、店主は、「カレー屋での独立を思い立ち、美味しいカレーを求めて色々な国や地方を旅」し、「結局自分で(カレーを)編み出す事にした」と書かれていたからだ。
カレー、ないしは、究極のスパイスを求めて旅するなんて、まるで漫画やドラマ、フィクション的な行動力である。
とまれ、たしかに、店内に入った時の店の印象は、「インドぉ~」だったのだが、それは、店主のカレー放浪の一部を切り取ったものであって、おそらく、カレーを求めて巡った国や地域は、インドに限定される分けではないようだ。
ガイドブックには、この店の分類は、インドカレーとはされてはおらず、「ジャンル分け不可 唯一無二のオリジナルカレー」と書かれていたのだ。
そもそもの話、店名には、「インディアン」ではなく、「エスニック(民族的)」という文言が頭に付いている。
つまるところ、この事は、パンチマハルのカレーが、インドに限定されるものではない事を意味していよう。
さて、着座した書き手が、メニュー一覧を見たところ、チキン、キーマ、やさい、インド、ドライカレーなどが並んでいたのだが、十九時前のこの時点において既に、チキン・カレーなど、終わってしまっている品もあった。そのため、書き手は〈キーマカレー〉を選ぶ事にした。
メニューのキーマカレーには、「鶏ひき肉たっぷりのサラサラカレー」という説明が為されていた。
この「サラサラ」というワードは、他のメニューの説明書きにも入っていたのだが、この「サラサラ」こそが店のカレーの特徴なのかもしれない。
ガイドブックによると、このサラサラ感は、「玉葱を使わない」事によって生み出されているらしい。
やがてトレイに載せられ、提供されたカレー・ライスは、ワンプレート式ではなく、白米が置かれた平らな皿、赤みの強いカレーが入れられた椀という、セパレート式であった。
このカレーこそが、世界を放浪した結果、店主がたどり着いた「ジャンル分け」不可能な、「サラサラ」なオリジナルカレーなのであろう。
〈訪問データ〉
神保町エスニックカレー&ヌードル パンチマハル:神保町・水道橋
D16
十一月八日・火曜日・十八時四十五分
キーマカレー:一〇〇〇円(現金)
〈参考資料〉
「パンチマハル」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、ページ。
〈WEB〉
「パンチマハル公式ブログ」、二〇二三年二月九日閲覧。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる