マッチングアプリの男 大仏君編

８．電話

「そろそろ寝る準備するね～　おやすみなさい。」
「一瞬、話せる？」

突然の質問に不意を突かれた。

（普通（独身のてい）ならここで電話出れるはずだよね。
ここで断るのも怪しまれるし、ここで既婚だからと説明するのもめんどくさいし、、、
よし、ここはとりあえず電話に出よう。）

夫は寝室でちょうど寝るところだったので、
風呂場に移動して電話を受ける算段を頭の中で張り巡らせた。

「ちょっとだけなら。」

洗面所でスマホを持って待っていると２分後に電話が鳴った。

「もしもし。」
「もしもし。どうですか？」
「あ、はい。なんかイメージと違った。大人っぽい感じ。」
「そう？東京弁だからじゃない？」

（確かにかつての落ち武者の話し方に似てる。）

「大丈夫？声高くない？」
「あーそれ気にしてたの？大丈夫だよ。」
「じゃあ、よかった。というわけで、おやすみなさい。」
「うん、ありがとう。おやすみなさい。」

電話の向こうでは屋外からかけている雰囲気が伝わった。

（さっきの間は電話をかけるために
実家だからわざわざ外に出る準備をしてたのか。
声を聴かせるためにわざわざ電話でチェックしてもらおうとするなんて、
なんてかわいげがある男なんだ。
しかもほんとにわずかな時間で、こちらとしてもありがたかった。笑）

彼への好感度は日に日に上がっていった。