マッチングアプリの男〜えなりかずきみたいな喋り方の男

椋のひかり~むくのひかり~

文字の大きさ
41 / 66

41話 今生の別れ

しおりを挟む

「俺もさあ、45歳以上の人にはこういうことは言わないけど、
さっちゃんならまだ間に合うからさ。」
「間に合わないよ。っていうか、欲しくないって思ってるからいいじゃん。
余計なお世話だよ。」
「さっちゃん、今日変だよ。」
「変じゃないよ。変なのはえなり君の方でしょ。」

しばらく沈黙が続いた。

「帰ろっか。」
「うん。」

さちこは「気分が悪いから帰る」とデート相手に意思表示したは生まれて初めてのことだった。

「わかった。お会計するから待ってね。」
「トイレ行ってくる。」
「じゃあトイレ出たらそのままエレベーターの前で待ってて。」
「うん。」

さちこは店を出て、トイレで涙を拭いてエレベーターホールに向かった。

彼はすでにボタンを押して待っていた。
エレベーターに乗るとあからさまに不機嫌に1階のボタンを八つ当たりするように押した。

「ご馳走様でした。」
「おう。」

さちこが後ろから声をかけると
彼は背を向けたままぶっきらぼうな返事をした。

自分から撒いた種なのに反省の色ひとつ見せないどころか逆ギレ気味の態度に
さちこはさらに腹が立ったが、
これで今生の別れと思うとせいせいしていた。

ビルから新宿駅までは行きよりも遠く感じた。
とぼとぼ下を向いて歩くさちこをほったらかすかのように
彼は早々前を歩いていた。

(そんなに不機嫌な態度するならとっとと先に帰れよ。)

二人の距離がどんどん離れて行った。

さちこは彼がそのまま帰るならそれでもいいと思った。
むしろ一人でゆっくり歩きたかった。

彼は20mほど先に進むと振り返り、さちこが追いつくのをじっとこちらを見て待っていた。

さちこが追いつくと彼はさちこの肩を抱き寄せて
「元気出して。」と言わんばかりに揺さぶってきた。

そんなことで機嫌が直るわけだもなく、
さちこは黙って駅まで歩いた。

「姐さん、こっちだから。ここまできたらわかるでしょ?」
「うん。ありがとう。」
「じゃあまたね~。」
「バイバイ。」

(またはないよ。)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

放課後の保健室

一条凛子
恋愛
はじめまして。 数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。 わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。 ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。 あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...