Identity

ゆびわ

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俺は絶対許せねぇ!

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今、現在。
大人~しく治療(というか荒療治)を施されている俺は、暇をもてあます。
風通しを良くするために開かれたガラス戸はやけに大きい。全開にしているが、空気を循環させるのにそこまで開く必要があるのだろうか。……壁一面だぞ?カーテンが舞い上がっちゃってもう~、バサバサくるんだけど。
ところで………

「何でスカートなの?」

いちばんの問題はそこだろう。なぜロング丈であるとはいえ、大の男が女モンのメイド服なんか着ているんだか。

「何か?」
「いや、何か?ってさぁ……何でか聞いてるのに」
「何か問題でも?」

あぁ、ダメだこりゃ。表情何一つ変わらずにただ平然と、淡々としている。

「こっちでは男がスカートなんて普通の世界なの?ズボン作る技術無いとか?」
「そんなわけないだろう。マスターの趣味だ」
「……へぇ、そう」

聞かないでいた方がいいのかなこれ。詮索しない方がいい?やめとくか。

「寒そうだな、足」
「確かに寒いな。足が冷える」
「そのマスターに言わないの?逆らっちゃダメとか?」
「そういう訳では……これは罰だからな」
「やらかしたのか」
「いや、余興のだな」
「余興?」

話を聞いてみればこういうことらしい。
少し前に宴会をやっていて、あまりに盛り上がったもんだからと余興にゲームをしたと。
そこで大負けをしたから罰ゲームとしてマスターがとっておきのを用意しておくっつーことで渡された物を着てこんなナリをしている、と。
これで3日間過ごせ、だとさ。

「はぁ~……あんまりだな、そりゃ。婿行けねぇやな、お前さん」
「そのつもりもないがな」
「よく引き受けたよ。俺ならそんなマスターこっちから願い下げだ。男としての尊厳を踏みにじりやがって」

すると、驚いたように目を見開かれた。

「……尊厳?」
「無いのか、お前さんには。こう、守るべきもんがあるだろう」
「……………従者にそんな考えはあるわけがない」
「アンタだって一人の人間だろう?人形じゃないんだ」
「人形ではない、マスターの一部だ」

そいつにしては偉く力の入った声で言う。意固地になる部分が違うんじゃないのか。確かに俺みたいな自由人とは相容れないような性格なんだろう。だからって、間違ってるんじゃないのか。何をしてもいいって訳じゃないだろう。

「結局は一緒じゃないか。てか何だよ、マスターの一部だって」
「マスターの体の一部ということだ。割と式神にも似た存在だ」
「……はぁ、よく分からないけれど、敢えての人型を作る辺りも趣味が悪い。こんなんを平気でさせておいて、気に入らないよ」
「あまりマスターを悪く言うな」
「その前にアンタが侮辱されてるのに気付けよ!」

その瞬間、ぶわぁっと風が吹き込みあらゆる物が舞い上がる。俺は……確かに見たぞ。コイツのメイドスカートが突風に煽られ、中身が見えた。
布地の揺らめきが落ち着くや否や、ガッと掴んでめくりあげる。

「何だよこれは………」
「やめてくれ、めくらないでくれ」

こんなの、女にやるのも失礼だ。ましてや男だというのに。

「玩具じゃないんだぞ!!」
「……………」

見えたのは革と金属で出来た拘束具が付いた陰部だった。うまく着けられなかったのか、傷も幾分か付いている。
その紐にはレースのフリルがあしらわれている。

「ちょっとやり過ぎじゃないのかこれ……風で染みたろう、傷も」
「俺のことはいい。自分の具合を治せ」
「んなこと言っていられるか!こんなことされて黙っているなんて……!」
「………いいから、ムキになるな。横になってろ」

ゆっくりと寝かしつけるようにして布団を被せてくるけれど、このまま寝られるわけがなかった。

「そんなもの脱げ。俺の服なら少しある。着ても構わないから」
「………小さくて着られないな」

初めて表情が緩んだ。ふんわり微笑むそいつは、何だか物悲しい感じがしたような気がする。
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