公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

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chapter1__城、再誕

ワガママ娘の再出発

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 静まりかえった馬車内。最初に復活したのはダリルだった。

「やっぱりザラ様、まだ調子が悪いんだね? ユージンに頼んでどこか休憩できる場所へ、」
「違うのよ。実は先日、ナタリエお義姉さまに……」

 前世云々は横に置き。ナタリエ、レスターとの会話を簡潔に伝える。

「……なるほど。それでいつものザラ嬢節をひっこめ、“公爵家にふさわしい振る舞い”に路線変更したんですか」
「う、うん。そんな感じ」
「…………はぁ~~ん???」
(わ。なんか黒っぽいの出た)

 心配げな表情を一変させ、座席にだらりと座り直すと。ダリルがザラを下から睥睨した。

「3年で実績作らなきゃ追放て。ふつーに無理じゃん。サロン終了のお知らせサ終じゃん。……正直そこまで期待してなかったけどさー。オレの人生計画くっそ脱輪したわぁ。とりあえず謝って?」
「あ、はい。ごめんなさい」
「まじかよ」

 素直に謝られ、ますます不機嫌に舌打ちする。愛らしいショタの面影はもはや影も形もない。

「ですが行き先は、あの城ですよね? 積極的に参加している僕が言うのもなんですが……。ダリルの言うようにこのままサロンを続けていても、イゼルラント公がお認めくださるとは思えませんよ」
「わかっているわ。なので皆さんにお願いがあります」

 ザラが開催していたサロンという名目の宴会。その主な参加者は、家の居心地が悪い、嫡男以外の貴族の(不良)子息たち。
 退廃的だが文化的ではない。精神も将来も不安定な、酔っ払いの吹きだまりだ。
 実績どころか3年を待たずに放逐されかねないマイナス行為なのは、エンドレに指摘されるまでもなかった。

 そこでザラが思いついたのは――、

「新たに始める事業にあなたたちを雇いたいの。正式な、きちんとした契約で」

 ダリルとエンドレが驚いた顔になる。ヘルムートが目を開け、横目をむけた。

「正しい契約書の書き方については、エンドレに教えてもらいたいんだけど」
「それは構いませんが……」
「……問題は内容と、報酬額だろ」

 ふんぞり返って言うダリルに頷く。
 それからザラは短い間にあたためた、まだ輪郭のあいまいな事業計画をざっくり語ってみせた。

「ほーん。アンタの頭で考えたプランにしては、案外まともだね」
「なかなか楽しそうなお話だとは思うのですが……」

 二人が真剣な顔を見合わせる。ザラの話をまじめに聞いたうえで、考えているのが伝わってきた。
 だが色よい返事が返ってきそうな空気でもない。

(やっぱりちょっと詰めが甘かったかな……)

 前世で起業した経験などはない。世界の違い以前に、根本的なところが素人考えだろうことは百も承知だ。二人が渋い顔をするのも仕方ないだろう。
 なかば諦めの心地でいると――。

「試用期間1カ月。本契約をするかどうかは、その間の内容次第だ」

 珍しく喋った!!!?
 意外すぎるヘルムートの発言に、三人そろって驚愕する。

(……つまり試用期間で試されるのは、あたしの方ってことか)

「それでいいわ。まずはひと月、よろしくお願いします」

 座ったまま隣に身体を向け、深々と頭を下げる。ヘルムートが軽く頷き返した。
 反対側の席でぽかんとしていた二人が、もう一度顔を見合わせた。

「様子見1カ月かぁ。ま、妥当なとこかな」
「そういうことでしたら、僕も話に乗せていただきましょう」

 真っ先に断ると思っていたヘルムートの返事、それとお試し期間の気楽さからか、二人が承諾する。

「ありがとう、ヘルムート、ダリル、エンドレ! 本契約してもらえるようにこれから頑張ります」

 笑顔になって再び頭を下げると、

「ったく、調子狂うな。二重人格かよ? ワガママ勘違い姫よりはマシだけど」
「君には言われたくないでしょう……。しかしそこまで別人のように演じ分けられるなんて驚きました。意外な才能をお持ちだったんですね」
「あははは……」

 やや困惑の残る二人に愛想笑いを浮かべるザラを、ヘルムートが新種の生物を発見した目で眺めていた。


   凹凹†凹凹


「……って話になったんだけどね。ユージン、あなたもまずは試用期間を、」
「おう、いいぞ」
(二つ返事っ!)

 途中で馬を休ませている間、ユージンに事業計画と馬車内のやり取りを話す。と、あっさり返事が返ってきた。

「えと。今までのいろいろを反省し、心を入れ替えました。別人ばりに」
「ははは。そうみたいだな、やっとなんか慣れてきた」
「うん。だから1カ月試してみて、今後も働いてもいいなと思ったら、ぜひ本契約をご検討……」
「ああ、いいぞ」
「二つ返事っっ!!?」

 熟慮したとは全く思えない即答に、ザラの方が焦ってしまった。

「あっあの、ダイナミックに本契約してくれるのは本当に嬉しいんだけど。ほらあたしって、日頃の行いがアレだったわけで。慎重に時間をかけて見極めた方がいいんじゃないかなって……」
「ふーん。だが俺は基本、姫さんのやることを手伝うって約束したしな」

(そんな約束いつしたんだっけ??)

「……あと呼び方も。これからは呼び捨てで構わないからね」

 これには覚えがあった。酔ってくだを巻き、「ザラ姫とお呼び!」と言ったのだ。一応この国では15歳から飲酒を認められている。
 ユージンがきょとんとした顔で筋肉質な首をわずかに傾げた。

「べつにどっちでもいいけど。じゃあ、ザラ」
 ザラの頭に、大きな手の平がのせられる。

「俺はお前のそばにいるからさ。ま、がんばれ」

「……うん」

 不思議な安堵がじわりと胸に広がって、ザラはほっと息を吐いた。

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