公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

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chapter1__城、再誕

もうチヤホヤしなくていいよ

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(――さて。どーしたものか)

(ひとまず今はまだ、お金に困ってないんだよね)
(というよりおねだりでせしめた大金をうならせ、ほぼ毎日、サロンと称したどんちゃん騒ぎで文字通りバラまくっていう、どうしようもない放蕩生活してた結果。とりまきまでできちゃって)

 義父のイゼルラント公は、ザラがねだるままに金を渡す。
 その大部分は後見人の成金男爵から出ているようだ。どうやら必要経費として請求すると、かなりの額を送ってくるらしい。むしろザラのおねだりは、金を出させる良い口実になっているのかもしれない。

 だがそれもこれも。あと3年の辛抱だからこその大盤振る舞いなのだろう。

(実績って簡単にいうけど。大貴族が認めるレベルの功績を、無知無学、底辺平民だったあたしがたった3年で作り上げられるわけが……、)

 今の意識は『ごく平均的な日本人、つまりけして悪くはない教育水準で育った一般人』。ろくな教育を受けずに成長した“ザラ”は影を潜めている。
 とはいえこの世界での実績作りなど、まるで見当がつかないのは同じだ。

(居場所のない公爵家に認めてほしいか? っていう気持ちの問題もあるなぁ)

 ついでにマグダレナとの間にも、家族の情らしきものは存在しない。
 自分の足を引っ張るだけの娘とは、あっさり縁を切りそうな野心家だ。

(ともかく数年は経済的な心配をしなくてよさそうな点は、本当にありがたいよね。この好条件があるうちに自立の道を模索しよう)

 3年後にどこにいるのか、何を選ぶのか。まだあらゆる面で五里霧中だ。
 しかしまずは生計の立て方を考え実践、必要があれば軌道修正する。それが当面、妥当な行動だろう。

(急いては事を仕損じる。ゆっくりコツコツやっていくしかないよね。慌てない慌てない、ひとやす……)

「ザラ様、なんだか元気ないね。まだお腹イタイ?」
「えっ? ……ううん、もう平気よ」

 とりまき令息の一人、正面に座るダリルが顔をのぞきこんできた。
 考えごとを打ち切って言うと、にっこり愛らしい微笑みが返ってくる。

「よかったぁ~。でも無理しちゃダメだよっ?」
「ありがとう」
「「……あっ……!?」」

 ダリルとその隣に座るエンドレが同時にあんぐり口を開け、慌てて閉じた。

(今後のためにも、早く“今のあたし”に慣れてほしいんだけどな)

 空気が凍りついた馬車内から、窓の外へ視線を移す。
 王都にある公爵家の屋敷をたって2時間ほどだろうか。景色はいつの間にかのんびりした田園風景になっていた。

 味方のいない公爵家でダラダラしていても仕方がない。幸い体調もケロリと治ったので、さっさと移動することにしたのだった。
 少しだけ景色を眺めて気分転換すると、ザラは車内に目を戻した。


(気配り上手な可愛いショタ。……ただし時々がめつさと腹黒がチラ見えするのは気のせいか)

 ダリル・ブレーメ

 子爵家次男。14歳。
 やわらかなチョコレート色の髪、若草色の瞳。

 (あざと)カワイイ、天使のような美少年。
 芸術全般が得意で、特にピアノの腕はかなりのもの。“サロン”でも彼の演奏は大好評だった。(ただ基本酔っ払いばかりなので、まじめに聴く者がどれだけいたかは定かではない……。)

 しかしこの世界も、芸術の世界は厳しいらしい。
 さらに貴族社会は何事にも家格が大きく影響する。なかなか才能を発揮する場に恵まれないようだ。


(博識で上品な紳士。されど隠し切れないお金目当て感、女タラシが玉にきず?)

 エンドレ・フーバー

 伯爵家三男。20歳。
 一つに束ねた青灰色の長髪、アッシュブラウンの瞳。

 先祖に宰相をつとめた者もいるという、学者肌の貴公子。弁が立ち、小難しい議論をふっかけた相手を次々と論破する姿をよく披露している。
 ついでに女性と見れば声をかける姿もよく目撃されている。

 少々困った癖もあるようだが、貴賤の別なく、物腰柔らかで紳士的。
 その博学ぶりも、うまく引き出せば様々な場面で重宝することだろう。


(頼れる脳筋……いや好青年アニキ。肉体労働なら喜んで買ってでてくれる、貴重な人材。でもこまかい話は通じないみたい)

 ユージン・ゼッキンゲン

 侯爵家七男。19歳。
 明るいブロンズの髪、琥珀色の瞳。

 図抜けた長身と鍛えぬかれた体躯、これぞ由緒ある騎士系名家のご子息といった風貌だ。(※だが騎士ではない。)

 今は御者になって、この4頭立て馬車をかるがると操っている。馬の扱いに慣れているようだ。
 面倒見のよい性格なのだろう。それに他の者と比べ、ワガママ放題のザラに対しても誠実さを感じる態度だった。
 今のところ現実面で一番頼りがいのある、ありがたい存在である。


(――そして。なんでここにいるのか謎すぎる人)

 ヘルムート・エレンベルク

 侯爵家次男。17歳。
 淡い亜麻色の髪、バイオレットの瞳。

 美形が多い貴族の中でもとびぬけた容姿。さらに噂では、やんごとなきお方から目をかけられるほど有能だという。
 これでもう少し愛想があれば、完璧すぎていっそ嫌味になりそうだ。

(遊ぶ金欲しさや、公爵家とのコネ作り目当てにも見えない。噂が本当ならその必要もないだろうし。口数・表情・リアクション全体的に極薄。クール通り越してもはやツンドラ?? なにもかも謎……まぁそのあたりはおいおい考えるとして、)


「ねえ、皆にお願いがあるの」

「なぁに? 大好きなザラ様のお願い、ぼくがぜ~んぶ叶えちゃうよ☆(依頼料と報酬をもらえれば)」
「麗しいご令嬢に頼っていただけるなんて光栄なことです。なんでもおっしゃってください。(あなたのお金を使って解決します)」

 営業スマイルを浮かべる二人と対照的に、隣のヘルムートは優雅に腕を組み目を閉じていた。会話に加わる気はないらしい。
 そんな温度差のある車内を、ぐるりと見渡してから続ける。


「もうチヤホヤしなくていいよ」

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