公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

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chapter2__城、始動

お客様第一号様(2)

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「類は友を呼ぶ……???」
「あ、みんな思ってたこと自分で言った」

 1階、城館西側。
 空き部屋を掃除して新設した、従業員用の食堂兼休憩室。

 ぐったりとテーブルに突っ伏したザラに、正面に座るダリルが呆れ顔を返した。

「お疲れ様。はい、ジャンヌからの差し入れハーブティー」
「疲れた心にしみる~! ……はっ!? あたしの何倍もお疲れ様の人が!?」

 部屋に入ってきた、疲労感を漂わせる長身がドカッと隣の椅子に腰かける。
 アシュレイがハーブティーを渡すと一気に飲み干し、息を吐いた。

「や、前のお前とはびみょーに違うな。あいつは可愛くない……」
「彼をうまく御しているニコロさんもすごいね」
「言えてる。まぁ御してるってよりか、まわりにそれとなく面倒を押し付けてる感じだけどなー」

 ユージンがぼやき。アシュレイの感想にダリルが頷く。

 大都市ビサイツィアの富豪の子息ノヴァ。
 訪問そうそう、道の城一同は台風のような彼の言動に振り回されていた。

 ノヴァを乗せ、カラオケで二人乗りをしたユージン。
 城の周辺を軽く一周して(無事怪我もなく)戻ってくると、そのまま城内を案内させられ、

「ほう、これで跳ね橋の上げ下ろしをするのか。こっちはなんだ? ……わっ!? 落とし格子!? いきなりこんなものが上から降ってくるなんて、僕が怪我したらどうするつもりだ!?」
「おいゴリラ、あの塔の最上階で逆立ちしろ。この歩廊から眺める」
「この穴は? 殺人孔? じゃあ石を落とすから、下で受け止めるんだぞ」

 ……と、やりたい放題。
 今は2階の東西ホールに興味を示し、エンドレにバトンタッチして比較的大人しく、過去の兵士たちの様子や武器防具類の解説を聞いているようだ。

「お客様の悪口はいけません。たとえワガママ三昧ゴーマンの極みお坊ちゃまでも、ありがたい第一号様。真心こめておもてなししましょう。ユージン、クソガキだからってお客様への言葉遣いは丁寧に」
「はいはい」
「さりげなく本音がダダ洩れてんぞー」
「それじゃエンドレが戻ったら、皆はイアンと一緒にお昼休憩に入ってね。あたしは昼食の提供が終わった後でとるから」

 指示をだすと部屋を出て、厨房へ向かう。
(ビサイツィアの一流シェフの料理で肥えた舌を満足させるなんて、現状どうあがいても無理。それでも今できる最高の仕事をしてみせなきゃ!)

 憎まれ口を予想しつつ。ザラは調理用エプロンと三角巾をつけて腕まくりをした。


   凹凹†凹凹


「あーまずかった。想像してたよりはいくぶんマシだったけど」
「完食していただけるなんて感謝の言葉もございません。リッチョ様のお口に合うものをご提供できるよう、以後精進いたします」
「当然だ。……ただしあのデザートだけはまた食ってやってもいい」

(はあ~。なんとか及第点? 前世で一時期、簡単レシピの手作りカスタードプリンにハマっててよかった……)

 ノヴァの昼食を終え、ほっと一息つく。
 自分の昼食も済ませると。なぜか厨房に一人分の食事が残されていた。

「昼休憩にヘルムートさんが来なかったんです。仕事が終わったら行くと言っていたそうですが」
「仕事? そんなに長引くものなんてあったかしら」
「なんでも、皆さんのトイレ掃除をぜんぶ引き受けたそうですよ」
「はっ!? なんで?」
「さあ……。お好きなんですかねぇ、トイレ掃除……」
「トイレ掃除好き!?」

 首を傾げるイアンの言葉に目を白黒させるザラ。

「……とりあえず、先に昼食をとるよう伝えておくわ」
 そう言って食事を休憩室まで運びこみ、トイレを目指す。

(おう……改めて見ると、作業内容とビジュアルのギャップがすごい……)
 数ヶ所あるうちの一つで粛々と掃除をするヘルムートを発見した。ザラに気付いた超絶美形が狭い空間で振り返る。

「どうした」
「こっちのセリフよ。どうして皆のぶんまで掃除を?」
「ああ……」

 掃除を中断させ、昼食の件を伝えがてら質問すると。

「ああいう手合いと私は相性が悪い。事業に支障をきたす悪印象を与えないため、滞在中はなるべく顔を合わせないようにするべきだと判断した」
(……早い話。ノヴァみたいなワガママお坊ちゃまが苦手、と?)

 どうやらノヴァを他のメンバーに任せる代わり、トイレ掃除を引き受けたらしい。

「悪印象って。どーしても敬語を使うのが嫌ってくらい、ああいう子が無理なの?」
「なぜそうなる。必要があればその場にふさわしい言葉遣いに変える」
「じゃあなんで??」

 掃除用具を片付け、なんとなく話を続けたまま隣を歩く。
 廊下の途中でヘルムートが足を止め、ほんの少し顔を俯けてザラを見た。

「私が聞きたいくらいだ。対処法が分かるなら既にそうしている。……なぜかああいった相手には平身低頭しようが効果はなく。対応すればするほど悪循環に陥るんだ」
「えーと。つまり丁重に接するかどうかは関係なく、相手がヘルムートを一方的に嫌うはずだ……ってこと?」

 表情は乏しいものの苦い顔で、小さく頷く。
(ええー。なんか意外。人間関係の悩みなんてあったんだ)
 内心驚き、少しだけ親近感のようなものを湧かせながら。

「もし今までに関わった、似たタイプの人とはうまくいかなかったとしても。その人とノヴァは別の人間よ。同じ結果になるとは限らないじゃない」
「……だが相手は力のある家だ。また失敗し、悪評を立てられたら、」
「そんなの心配してもキリがないし。その時はその時。悪評をはねとばすくらいのいい仕事をして、実力でお客様を勝ち取ればいいだけよ」

 本当はヘルムートの言葉に同調しそうになる面も持ってはいるが。ザラは自分に言い聞かせるように、前向きな言葉を選んだ。
 それまで翳りを帯びていたすみれ色の瞳が、珍しい生物を観察する視線にかわる。

「突如別人のように変貌した君が言うと、妙な説得力があるな。ザラ」
「ま、まぁね」
「その不可解な変身の理由を知りたいのだが……」
「理由っ!? 理由はっ……もう教えたでしょ。ほら、ここへ来る馬車の中で」
「…………」
(なんですかその「私の目は誤魔化せない……」的な敏腕刑事みたいな眼光!?)

「いつか気が向いた時に聞かせてくれ」
「は、はあ……」

 ふっ、と鋭い視線が外される。追い詰められた容疑者のような気分から解放されたザラが、大きく胸をなでおろした。

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