公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

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chapter2__城、始動

お客様第一号様(1)

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 自由都市ビサイツィア。

 イゼリア半島の南東に位置する大きな港町だ。
 自由都市の名の通り、ここはイゼルラント領ではない。

 かつて独立した国だったものがリンネバルト王国に併合された。半島内の他の陸地はイゼルラント公爵家の領地となったものの、この都市だけは規模の大きさ、有力家の支配力の強さから公爵家の手に余った。
 そのため評議会が任命した総督のもと、自治を行っている。

 貿易で繁栄した海洋国家。今もなお『イゼリア海の王女』と讃えられる水の都。

 残念ながら、イゼリア半島中央部(道の城周辺)はここへの“素通り地点”。
 馬をかえる必要がないなら立ち寄る理由もない田舎……そんな認識が一般的だ。

(逆に言えば、きっかけさえあればついでに立ち寄ってもらえる可能性はある。どうにかビサイツィアの知名度に乗っかって、この城を宣伝するには……ん??)

「ヘルムート? 何してるの?」

 2階、東ホール。
 中央に位置するメインホールの両側にはそれぞれ、今のところ物置と化している小ホールがある。西側ホールの方がやや広い。
 これらは城の兵士の詰所のように使われていたらしく、武器や甲冑などの類が残されていた。ユージンがアシュレイの救出に使った長槍も壁に飾られている。

 その東ホールの奥。壁を見ていたヘルムートが、入口のザラを振り返った。

「ああ……、いや。何でもない」
「??」

 口ごもったあと、引き返してくるとそのままザラの横を通り過ぎる。
 手には以前ダリルが作製した、城の見取り図が握られていた。

(以前に比べてかなり喋るようになったものの。相変わらず謎が多いなー)
(ただ意外と5人の中で一番、事業の運営にやる気がありそう。でも見限られたら一番、とりつく島もなく去っていきそう……。好きなものとか、引きとめられそうな要素が全然思いつかない)
(知識豊富で現実的なアイディア出しが得意。ぜひ本契約してほしい人材だけど)

「……って、先の心配してる場合じゃない。有能な人材がいるうちに、目の前の問題を一つでも多く解決しておかなきゃ」

 小首を傾げて見送った後ろ姿を、宣伝方法を相談したいザラは慌てて追いかけた。


   凹凹†凹凹


「こちらはノヴァ・リッチョ様。自分は側仕えのニコロっす」

 馬車から降りた青年が気さくな笑顔で、豪華な座席に座る少年を片手で示す。
 紹介された10歳くらいの少年が腕を組み、開け放たれたドアの先、城門前に迎えに出てきたザラたちをじろじろと見下ろした。

「リッチョ家。ビサイツィアの名門家の一つだ」
「貴族ではありませんが。ヘタな貴族より金も権力もある、大商人のご令息ですよ」
(ま、まじですか~~)

 こそっとヘルムート、エンドレが耳打ちする。
 突然の大物の訪問に、ザラは内心冷や汗をかきつつ笑顔で最敬礼した。

「いらっしゃいませリッチョ様。ご訪問いただきまことに光栄です」
「だろうな。この僕が来てやるなんて奇跡でしかない、ボロ城だもん」
(んっ……)

 高飛車に言い放ち、ニコロの手を借りて馬車を降りる。
 頭を下げた姿勢のまま、顔だけ向けたザラの前まで来ると、

「まー顔は悪くないけど。なんだよそのドレス! ダサいし似合ってないし。だいぶ前に流行りが終わった型落ち品じゃないか」

(うぐっ……! 子どもの正直な感想は時に凶器……!)
(仕方ないじゃない。手持ちの中ではこのベージュのドレスくらいしか、接客できる程度に落ち着いたデザインのものがないんだから)

 見下すような目で言うノヴァ。
 地味にダメージを受けるザラの隣にエンドレが進みでた。

「僭越ながらお客様。これはでございます」
「お客様をおもてなしする我々が、最先端をまとってしゃしゃり出るわけにはまいりません。主人を立てるため、執事がわざと流行遅れの物を身につけるのと一緒です」
(ナイスフォロー、エンドレさん)

「ふんっ。そんなの言われなくてもわかってるよ」

 顔をそむけて言うやいなや、一人でズカズカ城門をくぐっていく。
 すると途中で厩舎に目を止め、方向転換した。後を追ってきたザラたちに横目を向けると、厩舎の窓から顔をだした一頭を指差す。

「あのクソでかい馬に乗せろ」
「お、お客様っ!??」

 指を差されたカラオケが「ん?」と顔を向ける。
 あわてふためくザラが再び頭を下げた。

「申し訳ございません。あれは砂窟馬という荒馬。危険ですので乗馬はご遠慮を」
「なんだよ、ここにいるってことは飼い馴らしたんだろ。いいから乗せろよ」
「大変申し訳ございませんが……」
「やだ。絶対乗る。の~せ~ろ~~!!」
「おお客様っ! どどどうかご遠慮くださいいっ!!」

 ノヴァがザラの肩に両手をかけガクガク揺さぶる。完全に駄々っ子だ。

「わかったわかった。俺が二人乗りしてやるよ」

 ノヴァをザラから引き離し、ユージンが苦笑する。

「おい筋肉ゴリラ。僕に少しでも怪我をさせたらこんなボロ城、二度と営業できなくなるからそのつもりでな」
「「…………」」
「あ~~すいませんね。うちの坊ちゃんてば、ご覧の通り好奇心旺盛でして。こちらに興味津々みたいなんで、ひとつよろしくお願いします」

 ふんぞり返ってユージンに指をつきつけるノヴァ。軽い調子でぺこりと一礼するニコロ。

((((((しょっぱなから厄介なのが来た……))))))

 一同の心の声が見事にハモった。

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