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chapter2__城、始動
お客様第一号様(4)
しおりを挟む道の城ノヴァ捜索班の活動はやや方向性を変え、罠の総点検へと移行した。
「城中の落とし穴(※下に尖った杭あり。)片っ端から調べて!!」
「天井から槍を降らせる装置を動かした形跡は!?」
「このレバーはたしか、隠しクロスボウで一斉掃射するやつ……」
「牢獄塔の拷問部屋にはいなかったよ~」
とりあえずは命にかかわる危険な罠にかかった様子はなく。
一同が安堵の息をもらすも。依然としてノヴァの行方はつかめないままだ。
「精霊の宴会に迷い込んだ、ってかぁ?」
「精霊の宴会?」
「不可解な失踪をそう呼んだりするんです。いわゆる民間伝承ですね」
(へ~、神隠し的な。こっちの世界にもあるんだ)
ダリルのぼやきを解説するエンドレ。アシュレイがどこまで本気なのかわからない笑顔で言う。
「宴会が終われば戻ってくるかもね。精霊たちの食べ物に手をつけていなければ」
「ん? 持たされた弁当箱を開けなきゃいいんじゃなかったか?」
「伝承にも諸説ありますから」
「そういうのほとんど知らないなぁ。サービス業をやっていくうえで、そういった知識もある程度必要かしら」
「では勉強内容に加えましょう。なんなら夜、お部屋で眠る前に1話ずつお聞かせしても……」
「あ、それ効率いいかも」
「あほかっ!! どうみても下心しかねーだろっ!!」
停滞した状況のせいか。微妙に話題が逸れていくなか、ヘルムートが席を立った。
「もう一度城内を見回ってくる」
そう言って退室するのを視線だけで見送り、ダリルが沈黙を破る。
「……あいつも謎だよな。オレらの宴会に迷い込んだ精霊、って感じ」
「幼い頃から将来を嘱望されていたらしいね」
「彼の家なら、あれほど有能でなくても宮廷でなんらかの役職につけるでしょうに」
「そんなエリートコースまっしぐらなはずの人が、どうしてこんなとこでトイレ掃除なんかしてるんだろ」
「いやお前がやらせてるんだが」
(ワガママタイプとの人間関係の話は、皆にしてないみたいね……)
ふとそんなことを考えてから、仕切り直すように立ち上がる。
「雑談はここまでにして。今度はもっと範囲を広げた捜索活動を――」
「――っザラ!!!」
言葉の途中、ドアが勢いよく開く。
焦った顔のユージンがとびこんでくると、ザラを見て張り詰めた空気を緩ませた。
「よかった……無事か」
「え、あたし?? なんともないわよ?」
「城に戻ったら、おかしな気配がしてよ」
今もそれを感じるのか、わずかに鼻にしわを寄せながら報告する。
「今のところ村で見かけた奴はいないそうだ。周辺を軽くひと回りして、帰り道も捜したが見つからなかった」
「そう……。では改めてよく捜してみましょう。……ユージン?」
「こっちだ」
部屋の外で鼻をひくつかせるユージンが手招きすると、階段をのぼりはじめた。
四人が怪訝な顔を見合わせる。
「なんだなんだ。ノヴァのにおいを嗅ぎつけたのか!?」
「本当にできそうだから怖いんですよ」
「五感も第六感も鋭いのは間違いないだろうね」
(ユージン……警察犬なのかな??)
人間離れした能力を次から次へと垣間見せる青年の背中を、ザラは一瞬状況を忘れ、ほのぼのと追いかけた。
凹凹†凹凹
2階、東ホール。
その奥まで進んだユージンがじっと壁を見つめる。
(あれ? なんだろうこの既視感)
「この先に何かいる」
「先って。行き止まりだぜ?」
「……いえ。言われてみれば、この間取りには少々違和感があります」
「西ホールに比べて、少し狭いよね。他の階はもっと奥行きがあるのに」
「まさか……この先に、隠し部屋が?」
アシュレイの補足で、気付いたザラが可能性を口にした。
地下には(落とし穴とともに)城壁の外へ脱出できる隠し通路が存在する。他にもその手の仕掛けがあっても不思議ではない。
「古城の隠し部屋か~。埋蔵金とか出たりして」
「夢のある話だけど、今はノヴァを捜すのが先よ」
「そうですね。わかりやすい入口や、中へ入る仕掛けなども見当たらないですし」
「……」
「ユージン、この先からノヴァ君のにおいがするの?」
「いやにおいはわからん。だが妙な気配が……、あとヘルムートもいる気がする」
「「「ヘルムートもっっ!!?」」」
「なにあいつまで地味に失踪してんだよ!?」
「彼は魔法使い……精霊に仲間だと思われたのかな?」
「今そういうのいいですから!」
「うちの城で世にも奇妙なストーリーが増産されていくっ!?」
慌てふためく面々を背に、ユージンが首をほぐし、肩を回す。
「しょうがねー。……ぶっ壊すか!!」
(ふええぇん! 設備投資もままならないのに、修繕費がかさんでくよ~~!)
半泣きのザラの前で屈強な拳がうなりを上げ、轟音を響かせて壁にめり込んだ。
二度、三度と拳を打ち込むと――。
あっけなく壁に大きな穴があいた。ユージンがそこから窮屈そうに身体をすべりこませる。ザラたちがそれに続いた。
窓のない部屋には冷たくこもった空気と暗闇が広がっていた。夜目がきくザラでも中の様子がわからないほど、濃い闇だ。
「おーい。ヘルムート、いるか~」
「あいつはどうやって中に……って、魔法か」
「でしょうね。もともと間取りからここを怪しんでいて、入る算段をつけていたのでしょうし」
「それで捜索を兼ね、人目を避けての侵入を試みたんだろうね」
「違法だとかいってたくせに、なにげに使ってるよなー」
「いい意味でタガが外れているのかな。ザラのそばにいるとそうなるの、わかる」
「ちょ、ちょっと!? あたしのせいにしないで!?」
「いい意味で、なんだけど」
「それにしてもこの暗闇は危険ですね。一度戻ってランタンを……、」
「――小うるさいネズミ共め……」
突然投げられた声に、皆がお喋りを止め闇の奥を振り向く。
くぐもった含み笑いが部屋に響いた。
「僕の城を這いまわる害獣ども。まとめて駆除してやる!!」
ザラの目にうすく映る、部屋の隅で佇むシルエットが手にした杖を振りかざした。
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