フェイタリズム

倉木元貴

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合同合宿会 2

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 いくら嘘をつくのが下手な僕でも電話越しで見抜かれるほどではないとは思う。勘だけど、これは多分如月さんが鎌をかけているだけだと思う。
 一か八か賭けに出てみよう。
 
「いやー、山河内さんからの電話で起きたんだよ」
 
「それにしては出るのが早かったと思うのですが?」
 
「遅刻したんじゃないかって焦っていたからね。今内心遅刻じゃなくてよかったと思っているよ」
 
 この流れはまずい。今まで如月さんとの言い合いに僕が勝ったことはない。どこかでこの会話を終わらせたいけど、如月さんの気分次第だから、終わりが見えない。
 今考えられる最短の終わらせ方は、間違いなく僕が自白することだ。だが、そんなことはできない。今日はまだ始まったばかりなのだ。少しでも平安に、今日という日を過ごしたいのだ。
 
「そうなんですね。それはやはりいいことしましたね。それはそうと、一花ちゃんの電話は気付きましたか?」
 
「いやー、全くだよ」
 
「ですよね。ところでかけ返そうとは思わなかったのですか?」
 
「だ、だから、それは山河内さんの電話で初めて気づいたから……」
 
「ですよね。そうでしたよね。では何故ゲームだけはログインできるのですか?」
 
 僕はもう終わったかもしれない。
 これも如月さんが鎌をかけているだけだと信じたいけど、この自信のある話し方、何かを知っている時のトーンだ。
 でも一応、知らないふりで一度通そう。
 
「何の話かな? ゲーム? それは今ログインしたばかりだよ?」
 
「そうですかね。私のところでは三十分前になっていますよ。“ランド”さん」
 
 如月さんはやはり知っていた。
 “ランド”と言うのは僕がどのゲームにも付けるプレイヤー名だ。この名は、樹や綾人にも言ってはいない。それを如月さんが知っていると言うことは、如月さんは僕がどのゲームをしているのか知っていると言うこと。それに、如月さんが僕のログイン時間を知っていると言うことは、どれかのゲームで如月さんとはフレンドになっていると言うことか。
 そんなところで監視されているとは知らず、僕は進むべき道を間違えた。
 
「どのゲーム?」
 
「前に駅で汽車を待っている時にしていた三国志のゲームです」
 
「プレイヤー名は?」
 
「中田さんと同じような名前ですよ」
 
 如月さんは下の名前は歌恋だから、“ラブソング”とかにしているのかな。
 僕のフレンドにそんなダサい名前はいなかったはずだ。途中で名前を変えている奴もいるから一概にそうとは言えないけど。
 
「ど、どれ?」
 
「もうなんでわからないのですか。正解は“二月”ですよ。二月を和風月名にすれば何になりますか?」
 
 “如月”だ。
 僕は初めからおかしいと思っていたのだ。僕より遥かにランクの高いプレイヤーが何故僕をフレンドに登録していたのか。おかげでクエストがスイスイ進むようにはなっけど。まさかそれが如月さんだったとは。
 
「それで、なんの話をしていたのだっけ?」
 
「怒っていないので大丈夫ですよ! では」
 
 そう言って電話は切られたが、あれは絶対に怒っていた。
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