俺の部屋はニャンDK 

白い黒猫

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今日は何の日?

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 動物園って考えてみたら、子供時代以来訪れていない。遊園地とかそちらの方が楽しく感じていたのだろう。
 水族館には高校の時に行った。それはデートだった事もあり、魚の事は殆ど覚えていない。
 撮影していたのも彼女ばかりで記憶にあるのはイルカだけ。何をしにいっていたのか? とも今考えると思う。
 こういった施設の本来の楽しみ方を俺は忘れていたようだ。
 柑子さんと巡る動物園は、彼女が獣医学系の学生だけあり、その説明が詳しくて面白い。
 より細かく動物を見ることで多くの発見があり勉強になる。
 様々な動物の事を楽しそうに語る柑子さんをビデオモードで記録する。カメラを向けられて始めは照れていた柑子さんも慣れてくるとノリノリになってくる。より生き生きした表情になったことで、素敵な動画になったと思う。
 編集してプレゼントしてあげようと思う。

「お二人さん、良かったらコチラで記念写真撮りませんか~♪ フラミンゴバックに映え写真撮れますよ♪」
 そう動物園の職員にそう声掛けられ、其方に目を向け俺は少しひく。
 本日の日付と【Happy Valentine】という文字の入った看板とハートの可愛い花輪が見えたから。つまりはそこで撮影するとハートを背負った形でフラミンゴを背景に二人の写真。そんなラブラブ写真が撮影出来るというもの。
 それで今日が何の日だったか今更のように思い出す。
「折角のバレンタインデートじゃないですか~! どうぞ♪ どうぞ~?」
 固まっている俺たちを照れととったのようだ。パワーと凄みのある笑顔のお姉さんは、グイグイと誘い俺達をハートの前に誘導する。
「ほら~二人とも固いよ~! もっと近づいて!! もっと~! そうもっと!! そうだ彼女さん腕なんか組んじゃって~! そうそんな感じ~! いいね~!」
 余りにも職員さんの写真にかける情熱が凄まじくて笑ってしまう。そのタイミングでシャッターが押され、撮影は無事終了した。

 解放されて二人で同じタイミングで笑ってしまう。
「俺もこんど【ねこやまもり】で緊張している人を相手にあのノリでいこうかな」
 そう漏らす俺に柑子さんはブッと吹き出す
「その場合、動画だから乕尾くんの声入りまくるよ」
「じゃあ、ダメだね」
 二人で声を出して笑い、目があった事で俺は思い出す。
「そうだ……あの。こんな大切な日に動物園に誘ってゴメン」
 柑子さんは困ったように笑う。
「忘れてる? この日を指定したのは私だよ。私が誘ったの! そういう日に」
 二人で候補となる日を三日程あげて、最終的に【この日】と決めたのは柑子さんだった。
「この日さ、学校も休みなのに友達は皆デートで忙しいって!
 それで寂しくて……。私だって予定がある所を皆に示したいじゃない!」
 まぁ、俺も彼女がいないから誘いやすかったのだろう。納得する。
「そんな日を過ごす相手が俺のような奴でゴメン。もう少しオシャレしてくるべきだったね」
「お洒落するにはまだ寒いよ! 乕尾くんのお洒落……。それはそれで見てみたかった気はする。
 でも! いつもの乕尾くんが一番いいよ! 落ち着くし楽しい!
 そうそう、チョコも用意したの……。 ハイ!」
 そう言いながらリュックから赤い包みを出して俺に突き出す。
「あ、ありがとう! 嬉しい! なんか本格的なんだね」
 まさかバレンタインっぽく楽しむ為にここまでしてくれるなんて、少し感動する。
『本格的?』 そう言って首を傾げる柑子さん
「いやバレンタインらしく過ごすために、チョコまで用意しているなんて! ちょっと感動した。
 でも……ゴメンね。俺……何も用意してなくて」
 目を丸くしたまま、俺の言葉を聞いて戸惑う顔を見せる柑子さんに、俺は笑いかける。
「だって、女の子って友達とチョコを交換しあうのが普通なんだろ? 友チョコとかいって」
 男にはその風習はまだ浸透していない。話をしていると柑子さんに非常に困った顔をされる。
「そうだ! ホワイトデーもどこかいく? その時俺が頑張るから! クッキーとかお菓子を用意してさ!」
 俺がそう続けると柑子さんが何故か笑い出す。そんなにウケる事を言ったつもりはない。
「分かった! ならばホワイトデーの予約承りました!
 ……今日はさ……。
 折角だから、今からバレンタインらしくデートみたいな感じで楽しもうか」
 ニッコリそう、笑って俺の手を取りそのまま歩きだす。まるで本物のカップルみたいに。
 なんかこういうのって照れ臭くて恥ずかしい。でも繋いだ柑子さんの手の温もりが心地よく気分を楽しく盛りあがる。
 こんな感じで歩いていても愛について語り合う筈はない。話すことはそれまでと同じ。互いの家族のこと、大学の事、好きな事、好きな食べ物。そんな他愛ない事話しながら笑う。一緒に動物の写真を撮ったり、互いを撮り合ったり。園内を満喫して過ごした。
 電車で今日撮影した画像を見ながら過ごし根小山森に戻る。
 商店街のリーズナブルなイタリア料理店で食事した。柑子さんを家まで送って竹子さんに挨拶して部屋に帰る。

 御機嫌で戻った俺だが、部屋の空気というか雰囲気が滅茶苦茶悪かった。
 何故かサバとモノが怒っているようで怖い。マイペースなモノは兎も角、いつもは出迎えてくれるサバからして行動がオカシイ。
 俺に少し近づいてから、足を止めシャーと威嚇してくる。その様子に気が付いたのか、モノまでやって来て警戒心MAXな様子で俺を見上げる。何故か酷く責められている気がする。話しかけて宥めても機嫌が直らない。そんな険悪な雰囲気が怖くてシャワーに逃げこむ。
 シャワーを浴びて出てくると、部屋が荒れ果てていた。
 大音量でテレビが鳴り響き、洗濯物を放り込んだ籠が激しく倒されたのか部屋の反対側にまで転がっている。
 そして俺のリュックを開けられており、中のものが散乱していた。柑子さんから貰ったチョコの入った紙袋も出され、ボロボロにされている。中の包みも部屋の端に吹き飛んでいる。
 家の猫は女の子な事もあるのか、ネットでよく見るヤンチャで走り暴れ回る猫のような事はあまりしない。
 ただ人相が悪いだけで、乱暴者ではなく寧ろ日向ぼっこなどしてノンビリと過ごす事を好む。だから突然部屋を荒らされて驚くしかない。
 まあ猫は器用なので結構予想外の事をしでかして驚かされることはある。
 前足って本当に器用で出来る事が多い。台所の棚が開けられて中に入り込んでいたり、細い高い所にある棚に座ってたりする。モノは高い所が結構好きなようだ。
 リモコンを使いテレビを付けたりチャンネルを勝手に替えたりしてくることがある。
 少し開いたリュックのチャックも開けて中に入り込む。今その能力を最大限に活用しまくり俺に嫌がらせ? をしてきている。
 テレビがついており何故か大音量。台所の扉につけているタオルハンガーのタオルがどこかに消えている。
 俺は慌ててテレビを消して、チョコの包を拾い冷蔵庫にしまう。そして散らばったものを集めリュック片づけてキッチリとチャックを占める。これが中途半端だったから開けられたのだろう。
 怖い顔をつくり二匹を叱るが、シラっとした表情で無視される。
 何故か逆に咎めるような目で見上げているのは気の所為だろうか?
 ネコ科の動物は触れ合っていない。しかし羊とか様々な草食動物に触れたことがいけないのだろうか?
 猫って、やはり神経は繊細で敏感。よく分からない匂いを纏った俺が怖かったのかもしれない。
 身体を洗って着替えた為か、先程のように威嚇とかしてこないけどいつもより遠巻き状態。
 何故ここまで機嫌が悪いのか分からない。近所の猫や散歩中の犬と遊んできた時に少し態度が悪くなるが、ここまでオカシクなることは無い。初対面の時より関係が悪い状態にすら感じる。しかも二体一で俺の分が悪い。

 俺は台所に行き猫が大好きなスティックタイプの猫用オヤツの包を棚から取り出す。すると不機嫌を気取りながらも目がオヤツに熱く向けられているのが分かる。猫に絶大な人気というコチラ。この二匹も大ファン。
 余りにも食べる時のテンションが高く、最初不安にもなった。ハイ状態の様子に怖さを感じるので、あげる時は一猫ひとりにつき一本までと決めている。
 食べて興奮気味になった二匹をブラッシング等して落ち着かせる。それで丁度よい感じになるからだ。
 さっきまでの剣呑な目が、スティック見た途端に期待でキラキラと輝いている。怒りの感情よりオヤツの方が気になっているようだ。俺の足に手をやり掴まり立ちをしてくる。

 ヤクザな顔の癖に顔を傾けて可愛くお強請りしている。コレで今回は乗り越えられそうだ
 夢中でオヤツを舐めると、いつも通りの呑気な様子にすっかり戻っていた。
 逆にオヤツでなんとかなる機嫌なら、怒りも深刻でもなかったのだろう。虫の居所が悪かっただけなようだ。
 現金なものでご機嫌になり俺に甘えてきてブラッシングしろと命じてくる。その様子を見て、単純な奴らで良かったと思った。

  
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